第313話 15章:赤のフォーク(27)

「ん……もっと……奥……」


 オレがスカートの中で手を這わせるたび、由依は背をのけぞらせ、ついにはベッドへと倒れ込んだ。


 急いで魔力を中和しないと、本当におかしくなってしまう。

 ついでにオレの理性も危ない。

 中身がおっさんのオレが由依といたしてよいものかという倫理的なアレソレはともかく、少なくともこの状態の由依に手を出すのは絶対にダメだ。

 耐えろ、オレ。


 オレは手から微量の魔力を由依の太ももに送り込み、オオゲツヒメの魔力を探っていく。


「んん……なかぁ……ああっ!」


 由依が喘ぎ、悶える。


 オオゲツヒメの魔力はかなり広範囲へと根を張っている。

 黒タイツに空けられた小さな穴に指を潜り込ませ、由依の太ももの付け根に直接触れる。

 指先にシルクの柔らかい布が当たった。

 これってパ――


「んんん――っ!」


 由依はシーツを噛み締め、押し寄せる快感に体を何度も痙攣させる。


 ここから、オオゲツヒメの魔力をたどり、全て中和する。


「ちょっと刺激がいくぞ」


 そう言ってオレは、由依の体内に魔力を注ぎ込んだ。


「んああっ! だめえ……らめえぇえぇええっ!」


 オレの手をがっちりにぎった由依は、体を大きくのけぞらせ、自分の胸や脚をおさえ、よだれをたらし、やがてぐったりとベッドに横たわった。


 気絶した由依の口元をそっと拭ってやる。


「ん……」


 すると由依は小さく甘い吐息を漏らし、穏やかな寝息を立て始めた。


 とりあえずこれで一安心だ。

 実にオレの理性も危なかったが、こんな状態の由依を襲うわけには断じていかない。


 ひとまずこれで、果樹園の地下にあった畜産場の元は断った。

 他にも似たような施設はあるかもしれないが、あれだけ大規模な研究所が必要となれば、そうそういくつも作れないだろう。

 研究者とのパイプ作りにも苦心するはずだ。

 ヴァリアントにそういった交渉ごとの得意な奴が多いとは思えない。

 念のため、白鳥家に調べてもらうつもりではいるが。


 そんなことを考えていると、眠ったままの由依が、そっとオレの指先を握ってきた。

 こいつはどうしたものか……。


 そっと頭を撫でると、由依はむにゃむにゃと微笑んだ。

 起こすのは忍びないな。


 オレは部屋に人払いの結界を張り、双葉に帰りが遅くなると連絡しておく。

 そして、床に座るとベッドに背を預けた。




「んん……あれ……?」


 一夜明けて、オレの体内時計では午前5時12分。

 由依が目を覚ました。


「調子はどうだ?」

「カズ……? なんで私の部屋に……あれ? ここは……?」


 寝ぼけ眼でゆっくり周囲を見回した由依の顔が、みるみる紅くなっていく。


「もしかして……夢じゃなかった?」


 オレがゆっくり頷くと、由依は無言で神器を発動。

 コンクリートの壁を蹴破って外へと飛び出した。


 この壁……オレが直すんだよな……?

 無機物の修復魔法はすごく難しいだが。

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