第312話 15章:赤のフォーク(26)
「カ……ズ……ああっ……」
魔力を由依の体内に流した時の症状に似ている。
まさか――
オレは床に寝かせた由依の体を魔力的にサーチしていく。
あった!
太ももの内側、付け根あたりに由依とは異なる小さな魔力反応がある。
「すまん由依、めくるぞ」
スカートをめくると、そこには小さな蛭のような物体が付いていた。
「バレマシタカ」
機械音声のような甲高い声を出したそれが発するのは、オオゲツヒメの魔力だ。
由依が攻撃した時に欠片を忍ばせたのか。
オレが肉片に手を伸ばすと、それは「キキキ」と甲高い笑い声を上げた。
「ムリニトラナイホウガイイ。マリョクカイロガ、ズタズタ二ナリマス」
たしかにこの肉片、由依の太ももに根をはりはじめている。
無理やり引っこ抜けば、最悪片脚が二度と動かなくなる可能性すらある。
「由依から離れて、オレの手に来い」
オレはゆっくり誘うように、指先から魔力を垂れ流す。
「アア……オイシソウ……。ドーパミンドバドバノニクヨリ、オイシソウナ……マリョク……」
本来なら危険だとわかりそうなものだが、たいした思考力も残っていないのだろう。
肉片は由依の太ももからぬるりとオレの手に移動した。
黒タイツを貫通して太ももに突き刺さっていた細い触手もつられてズルズル抜けてくる。
念の為由依の太ももをサーチするが、肉片を残すようなマネはしていないようだ。
肉片は爪の間からオレの指へと潜り込んで来る。
オレは指の内側から魔法で炎を出し、自分の手ごと肉片を焼く。
「ギャッ――」
それが、オオゲツヒメの断末魔の叫び声となった。
オレは炭になった指を魔法で治療しながら、逆の手でそっと由依の頬に触れてみる。
「ひうっ……」
とろんとした目でこちらを見る由依が、オレの指をそっとその口に含んだ。
舌のわずかなザラつきがオレの指を刺激する。
「ちゅぱ……体が……熱いの……はぁ……おかしく……ちゅぱちゅぱ……なりそう……」
オレの指をしゃぶりながら、由依は体をくねらせる。
とりあえずいつまでもここに寝かせておくわけにもいかない。
魔法で由依の体を浮かせ、近くの空き部屋のベッドへとゆっくり座らせた。
とりあえずとなりに座ってみるが……なんというか、フェロモンがやばい。
由依の目を見ているだけで、サキュバスに魅入られた時よりも脳がくらくらする。
「もうだめなの……ねえカズ……お願い……」
由依がオレの手を取り、スカートの中へと導いていく。
黒タイツは汗でしっとりと濡れている。
汗だよな?
汗だ。
間違いない。
うん、間違いない。
オオゲツヒメが由依の太ももから魔力を送り込んだのだろう。
快楽に酔わせることで由依の魔力を引き出し、それを使って再生、そのまま喰おうとしたのだ。
このままにしておけば、由依の脳が自身の暴走する魔力で焼き切れかねない。
オレは導かれるまま、その手を由依のスカート奥へと進ませた。
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