第308話 15章:赤のフォーク(22)
「責任者どこだぁ! 出てこいやぁ!」
女性を人質にとった形でオレは部屋を出ると、ホテル中に響く大声で叫んだ。
わざとイキった迷惑客を装う。
なんだなんだと、いくつかの部屋から女性や客が顔を出してくる。
「おらぁ! どうしたぁ! 責任者ぁ! この女ぶっ殺すぞ!」
我ながらひどいチンピラっぷりである。
腕の中の女性は、恐怖でぷるぷる震えている。
悪いがもう少し我慢してもらおう。
しばらくわめいていると、廊下の向こう側からがっしりした黒服の男が二人やってきた。
スーツの膨らみから察するに、拳銃を携帯しているようだ。
おいおい、ここは日本だぞ。
あ……前に由依も持ってたな。
神器を上手く扱えるようになってからは、使うのをやめたようだが。
顔を覗かせていた女性や客達が、さっと部屋の中へと隠れた。
「こちらへいらして頂けますか?」
オレの前に立った男達は、丁寧ながらも有無を言わせぬ圧力をかけてきた。
一般人ならちびるくらいの迫力だ。
オークくらいはあるだろうか。
「怖い思いさせてごめんな」
捕まえていた女性の拘束を解くと、彼女は一目散に部屋へと逃げて行った。
オレが連れていかれたのはホテルの裏口だった。
「責任者に会わせろと言ったはずだが?」
「ガキがイキがったことを後悔するんだな。お勉強だと思いな」
オレをおっさんに見せる魔法はさっきの女性にかけたものなので、黒服達からは高校生に見えているのだ。
黒服の一人が問答無用で殴りかかってきた。
オレはその拳を掌で受け止めて見せる。
油断しきっていた黒服達だが、ここで驚いて動きを鈍らせるほど素人ではないらしい。
ニヤケ面をひっこめ、二人の足が同時にオレへと繰り出される。
蹴られたところで痛くはないが、服が汚れるのはいやだな。
黒服の蹴りを避けつつ、彼らを飛び越えるように上へと跳んだオレは、二人の首筋に手刀を入れ、気絶させた。
一人はそのまま寝かせておき、もう一人に活を入れて起こした。
「う……はっ!?」
気がついた男は、すかさず拳銃を引き抜き、オレの胸目がけて発砲した。
危機感があるのはいいことかもしれないが、容赦ないな。
オレは拳銃の弾丸をつまんで止めると、指でピンと弾いて男のほほにぶつけた。
じゅっと小さな音をたて、男のほほに小さな火傷ができる。
「は……?」
さすがの黒服もこれには驚いたようだ。
マヌケ面を晒した男の胸ぐらをつかんで立たせると、その背をビルの壁に押しつける。
「ボスのところに案内しろ」
黒服の背後にある壁に拳をめりこませた。
壁ドンならぬ、壁ドゴォである。
「あんた……ボスと同じバケモノかよ……」
黒服は足をがくがくと震わせながらその場にへたりこんだ。
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