第285話 【外伝短編】WRYYメイツ(中編)
「あら女の子! 来てくれてありがとう」
「あ、いえ……」
珍しく由依が反応に困っている。
会場のノリについていけていないのだろう。
うっかりつけたラジオネームが恥ずかしかったたというのもあるだろうが。
「それじゃあ読みますね」
「あ……」
由依の顔が赤くなるのが、後ろからでもわかる。
そうそう、ラジオでハガキが読まれるのって妙に緊張するんだよな。
「これは高校の友達の話なのですが、仲の良い男子がいます。その男子は、彼の良さをわかる一部の女子からすごくモテるのでとても心配しているみたいです。彼とは家の都合があって、一生の付き合いになります。それ自体は嬉しいそうなのですが、ちゃんと告白できない理由にもなっているようです。普通の女の子はこういう時どうするのでしょうか?」
ハガキを読み終わった冷泉さんは、あごに手を当て、「ふーむ」とうなると続けた。
「この番組に、かわいい女の子からの恋愛相談が来るなんて……。仕込みじゃありませんからね?」
冷泉さんの一言で、会場に小さく笑いがおきた。
「それにしても、一生の付き合いって重たいなあ……どういう家なんでしょうね。どうしたら良いかじゃなくて『普通の女の子は』って聞くあたり、ちょっと変わった生活をしているみたいですし。私からできるアドバイスはあまりないかもしれませんが……そうですね……。本当ならあたって砕けるのも良い想い出って言いたいところだけど、事情が複雑そうなんですね。うーん、わかりません! 私も恋愛とか苦手ですし! ごめんなさいねー!」
由依に向かって片手で拝むようにウィンク。
それだけで、ファン達の目がハートになっている。
「なんでこのハガキ選んだのー?」
客席からそんなヤジがとんだ。
冷泉さんが恋愛が苦手というキャラなのは、ファンによく知られるところだからだ。
「うるさいですよ。私だって女子っぽいトークに憧れることだってあるんです」
「アイちゃんかわいいよー」
フォローのつもりなのか、本心なのか、そんな声も飛ぶ。
「そうじゃないかって薄々思ってました」
冷泉さんの返しにまた会場が沸く。
「最後に一言付け加えるなら、後ろの彼に聞いてみるとかですかね?」
「後ろ……? え゛……っ!?」
冷泉さんの言葉を聞いて振り向いた由依は、オレを見つけると、口をぽっかりあけて固まった。
「それじゃあ次のおたより~」
そんな由依を置き去りに、公録は進むのだった。
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