第266話 【外伝短編】早乙女さんはメイド様(前編)

【前書き】

13章までお読み頂き、ありがとうございます。

今日の更新はちょっと箸休めの短編です。

カズが白鳥家で生活するようになって、少したった頃の出来事です。


前・中・後編のあと、14章が始まりますのでお楽しみに!


【本文】

 白鳥家のメイド達は、日曜であっても働いている。

 住人は生活しているのだから当然ではある。

 メイド達は住人の世話だけでなく、広い屋敷の清掃や補修など、毎日どこかしらで働いている。


「大変ですね」


 庭を散歩していたオレは、テラスの掃除をしていたメイドの早乙女さんに声をかけてみた。


「仕事ですから」


 ショートボブの黒髪を揺らし、切れ長の目でこちらをみた早乙女さんは、丁寧に一礼すると掃除に戻った。


「お休みはないんですか?」

「4日に1回、交代でお休みを頂いています」

「早乙女さんが休んでいるのを見たことがないのですが……」

「私は住み込みですから。他にやることもありませんし」


 まだ二十代中盤に見えるのだが、そんなことがあるのだろうか?

 まだ遊びたい年頃のはずだ。


 お世話になっているし、なんとかしたいな。

 あまり邪魔をするのも悪いし、余計なお節介かとも思うのだが……。


 オレはその場をいったん立ち去り、由依の元へと向かった。


◇ ◆ ◇


「お父様の許可はとれたわ。早乙女が喜んでくれるとよいのだけど……」


 由依がオレの『頼み事』を鉄岩に伝え、やって来た。

 集合場所は、敷地内にある洋館の一つである。

 『頼み事』はオレが行ってもよかったのだが、内容の筋として由依にお願いした方が良いと判断したのだ。

 由依も早乙女さんには感謝しているらしく、オレの提案に二つ返事でのってくれた。


 ちなみに由依は、わざわざメイド服に着替えてきている。

 まずは形から、ということらしい。

 めちゃくちゃ似合っている。


「ありがとう。少なくとも由依が、早乙女さんは嫌がらないと思えるなら、試す価値はあるんじゃないかな」

「そうね。じゃあお願い」

「よし、じゃあ始めるぞ」

「うん……」


 オレは打ち合わせ通りに由依の前へと跪き、恥ずかしがりながらもたくしあげられたスカートからすらりと延びた由依の太腿にそっと触れる。

 そして、ゆっくりと魔力を流し込んでいく。


「んっ……これ……久しぶり……」


 オレの魔力干渉によって、由依の全身に快感が駆け巡る。

 その快感に由依が身をよじるたび、スカートと胸が揺れた。

 オレはさらに魔力を高めていく。


「んんっ……これ……だめえっ……」


 けっしてえっちなことをするために、ここで待ち合わせたわけではない。

 オレは由依の黒タイツ(神器)の持つ自己修復と浄化能力を司る魔力回路を探っていく。


「ちょっとカズ……あぁっ……これ……体の……ん……中までまさぐられてるみたいで……ああぁっ!」


 由依が汗ばみながら体を痙攣させ、身もだえる。


 立っていられなくなったのか、オレの肩に手を乗せた。

 同時にその大きな胸がオレの頭に乗ってくる。

 しゅ、集中力が……。


 目的の魔力回路を見つけたオレは、その影響範囲を一時的に拡張。

 洋館全体に行き渡らせる。


「い……や……ああぁ……んふぅ……らめえええええ!」


 腰を抜かした由依はその胸にオレの頭をぎゅっと抱きかかえた。

 やわらかい……苦しい……。


 胸を通して、由依の荒い息づかいが聞こえてくる。


「はぁ……はぁ……終わった……?」


 ずるずるとオレによりかかってくる由依が、頬を紅潮させ、とろんとした目で囁いてくる。

 それだけでオレの背筋に電撃が走ったかのように、ぞくぞくする。


「終わったぞ」


 オレは自身も立ち上がりながら、由依に肩を貸す。


 周囲を見回すと、洋館はぴかぴかに綺麗な状態になっていた。


「お二人ともこんなところで何を――これはいったい……?」


 そこへ、メイドの早乙女さんがやってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る