第228話 12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(22)
「ありえん……あれほどの魔力を……ありええええん!」
叫んだぬらりひょんは、みるみる巨大化していく。
その過程で、オレの作った足場も破壊された。
オレは落下を始めた由依と美海に浮遊魔法をかけておく。
「このままひねり潰してくれる!」
百メートルを超える巨人になったなぬらりひょんの拳がオレに襲いかかる。
オレはその巨大な拳を片手で止めた。
「ば、ばかな……いくらなんでも強すぎる……」
ビルをも砕くその一撃には、かなりの自信があったのだろう。
魔力もたっぷりこもっていた。
「はぁっ!」
オレは高速振動させた魔力を、ぬらりひょんの拳に叩き込んだ。
ぬらりひょんの腕は、拳から肩にかけて、引きちぎれるようにひしゃげながら、粉々に砕けていく。
「ぐあぁぁっ! これほど強いなど……ぐぬおお!」
巨体をのけぞらせながら、赤く光る目でオレを見下ろすぬらりひょんは、腕を再生させながら周囲を見回す。
既にぬらりひょん側のヴァリアントは、道着にハカマ姿のおかっぱ美少女一人となっている。
歳は13くらいだろうか。
切れ長のツリ目が放つ、鋭い視線が印象的だ。
「何をしておる! ヤツを倒せ!」
ぬらりひょんの命令に、オカッパ美少女は一瞥をくれると、ヒミコの方へと移動していく。
「ヒミコではない! ナンバカズを殺すのだ!」
美少女はその声を無視し、ヒミコの前にひざまずいた。
「ご苦労であった、ウカよ」
「はっ……」
ヒミコにウカと呼ばれた少女は短く返事をすると、頭を垂れた。
ウカ……もしかしてウカノミタマか?
たしか、神話上ではスサノオの娘である。
立ち上がったウカはちらりとこちら……いや、双葉を見ると、ヒミコの数歩後ろへと立った。
この世界に顕現したスサノオの生物学的に娘である双葉、そして神話の時代に娘だったが生物学的にはおそらく無関係であろうウカ。
二人は姉妹ということになるのだろうか?
どう感じるのか、考えるのかは二人が決めることかもしれない。
双葉にそのことをオレから告げるつもりはないが。
気付かずにいられるなら、それが一番良い気がするのだ。
「内通者……そうか、ヒミコ貴様! わざとナンバカズの情報を流したな!」
ぬらりひょんはその様子を見て、巨体をわなわな震わせ、叫んだ。
空気を震わせる大音量が全身を貫く。
「妾はナンバカズに手を出すなと命令したはずじゃ」
ヒミコはしれっと答える。
「ぬかせ! わしらがナンバカズに手を出すよう、ウカを使って仕向けたであろう!」
「その程度で裏切るような者はいらぬということじゃ」
「ぐ……ぬぬぬ……おのれえええええ! ヒィィミコォォォォォッ!」
ぬらりひょんは拳に魔力をこめ、ヒミコに向かって繰り出した。
何重にも展開されている結界を、その拳がけたたましい音をたてながら砕き、ヒミコの眼前に迫る。
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