第227話 12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(21)
土砂や爆炎が収まると、そこには結界で爆発に耐えたぬらりひょん、ヒミコの両陣営、そしてオレの姿があった。
オレは破壊された足場を、双葉達が神域絶界から戻ってくる前に作り直しておく。
今の技がいかに高威力だったかは、ヒミコの展開した神域絶界の形に、四角く切り取られ、断面が見えていることからわかる。
神域絶界外で使えば、山が湖に変わるだろう。
「ば、ばかな……人間が耐えたのか?」
「今のが奥の手か?」
最大威力の技をいきなりぶっぱなしてきたことは評価する。
実力を読み切れない相手を、初手で殺しきるのは有効な戦術だ。
それが通じるかは別問題だがな。
「に、2撃は耐えられまい!」
ぬらりひょんは再び同じ技の準備に入った。
死体がない分、新たに多くの生きたヴァリアント達が犠牲になる。
既にぬらりひょん陣営の数は30を割っている。
それに気付いていないのか、精鋭が残っていれば良いと思っているのかは知らないが、魔力塊は先程の倍以上の魔力を集めている。
「カズ、終わった――って、地形が変わってる!? しかも2撃目!?」
姿を現した由依が、豹変した周囲の状況に驚きの声を上げた。
このタイミングで双葉の神域絶界が解けたか。
なら念のため安全策をとらせてもらう。
オレはぬらりひょんに肉薄すると、その首を狙って剣を振った。
しかし、ぬらりひょんは紙一重でその一撃を下がって避ける。
瞬間移動なしでもなかなか速い。
だが、膨大な魔力を維持しながらオレの剣を捌くのは簡単じゃないだろ?
オレの繰り出す斬撃から逃げるように、ぬらりひょんは他のヴァリアントの陰へと隠れる。
その度に、オレがヴァリアントを斬りすてることになるのだが、それもまたぬらりひょんの魔力塊に吸収されていく。
「ええい! そいつを止めろ!」
ぬらりひょんの指示でヴァリアントが次々に襲いかかってくるが、ある者はオレの刀に斬られ、またある者は由依達に倒される。
かなりの数が由依達の方にも向かっているが、由依の攻撃力、双葉の新規絶界と式神、そして美海の速度と神出鬼没さに引っかき回されていた。
訓練の成果は出ているようだ。
コンビネーションの訓練をさせた甲斐があったな。
やがて、ぬらりひょんの部下は残り一人になった。
「ば、ばかな……ザコだけではないのだぞ。そもそも人間など、低鬼にすら苦戦する連中だったはずだ……いったいなんなのだ!」
ぬらりひょんが、1撃目の5倍には膨れあがった魔力塊をなんとか維持しながら、わなわなと震えている。
「弱い人間しか見てこなかっただけだろ」
「くっ……! ヒミコよ! 力を貸せ! これを見てもまだ始末する意味はないと言うか!」
「これを見てもまだ彼に手を出せと?」
ぬらりひょんの要請に、ヒミコはあっさり首を横に降ってみせる。
追い詰められたぬらりひょんに、もはや交渉カードなど残っていない。
「ぐぐぐ……はぁっ!」
ぬらりひょんは大人でも抱えきれないほどに巨大化した魔力塊をオレに向かって放った。
剣を近くの空間に固定したオレは、その魔力塊を両手で受け止めた。
「どうだ! 逸らして爆発させれば仲間が巻き込まれるぞ!」
ぬらりひょんの言う通り、今度は爆発させるわけにはいかない。
双葉には神域絶界を展開するだけの魔力が残っていないのだ。
それを読まれている。
だが、先程の接触で、この技の魔力パターンは解析済みだ。
オレは少しずつ魔力塊を分解、魔力パターンを変換し、自分の体に取り込んでいく。
「きゅ、吸収しているだと……っ!」
吸収した魔力のうち、人間の毒になる部分だけを、背中から排出する。
それはさながら、闇の翼のようだ。
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