第225話 12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(19)

 双葉による神域絶界の新しい使い方は、色々と応用が利く。

 だがその前に……。


「貼ってきたよ」


 オレのとなりに美海が現れた。

 足場ができた時点でオレの背中から降りた美海が、主要なヴァリアントの背中に呪符を貼って回ったのだ。

 ここ数日の訓練で、美海の手から離れたものでも、しばらくの間は不可視無気配の効果を継続されることができるようになったのだ。


「双葉!」

「オッケー!」


 双葉がポケットから取り出した呪符が、彼女の魔力に反応して燃えると同時に――


 ドガガガガン!


 ヴァリアントの背中に貼られた呪符が大爆発を起こした。

 呪符には、オレが事前に大量の爆発系魔法を仕込んでおいたのだ。


 爆破を受けたヴァリアントのほとんどが、背中から頭部にきて爆散、絶命した。

 残ったヴァリアントの多くも大ダメージを受けている。


「や、やっと役に立てたかな」


 その風景に恐れおののきながらも、美海は気丈に振る舞っているようだ。

 慣れない実戦でこれができるなら、思っていた以上に適性アリといったところか。


「警戒すべきはナンバカズと聞いていたが、他の小娘どももなかなか面倒ではないか。わしの相手が務まるほどではないがな」


 ぬらりひょんがどこからか取り出した鍔のない日本刀を引き抜いた。

 それと同時に、彼の体が陽炎のようにゆらぎ、かき消えた。


「由依!」


 オレの声に反応した由依が大きく横に飛ぶ。

 一瞬前まで由依がいた場所をぬらりひょんの刀が斬った。


「全然見えなかった!」


 飛び退いた由依がさらに距離をとる。


「下がりすぎるな! 瞬間移動だ!」


 再び消えたぬらりひょんが、由依の背後に現れた。

 バックステップ状態の由依には避けられない!


 双葉がぬらりひょんの右手を刀の持ち手ごと神域絶界で固定した。

 神域絶界で斬りとられたその部分だけが、消滅したかのように手首の断面が見えている。


「人間がなぜこうも神域絶界を使えるのだ……ぬんっ!」


 ぬらりひょんは自らの手首を斬り落とし、即座に再生させた。


 双葉が神域絶界を解除すると、そこには立方体に切り取られていたぬらりひょんの手が現れた。


 上空へと浮いたぬらりひょんが掲げた両手に黒い魔力が集中しはじめる。

 その魔力に、虚空に消えかかっているヴァリアント達の死体が吸い込まれていく。

 死体を魔力に変えて吸収しているだと?


 こいつはなかなかにヤバイやつだ。

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