第224話 12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(18)
「これほど繊細な魔力操作を人間が行うだと……? それでいて、甘さも容赦もない。ナンバカズ、貴様はやはり危険だ」
ぬらりひょんの全身から魔力があふれ出す。
彼が片手を上げると、ヴァリアント達に緊張が走った。
「殺せ」
ぬらりひょんがオレに向かって手を下ろすと同時に、150を超えるヴァリアント達が一斉に襲いかかってきた。
その大半は、今のオレなら一撃で仕留められる。
だが事前の打ち合わせ通り、ここは由依達に任せることにした。
彼女達が強くなれば、それだけ自分の身を守れるようになる。
万の訓練よりも一の実戦。
もちろん、訓練をしておくほど実戦での伸びしろも増えるが、実戦なくして大きな成長はのぞめない。
もちろん、ピンチになったら助けるつもりである。
襲い来るヴァリアント達に先陣を切ったのは由依だ。
ヴァリアントの大群に向かって、真っ直ぐ走っていく。
既に神器(グングニル)は発動済みだ。
「小娘一人で何ができる!」
先頭にいるテングのような姿をしたヴァリアントが、由依に飛びかかる。
「スパイラルランス!」
ヴァリアントが由依に手をかけるより早く、由依は体を錐のように回転させながら、空中をスライディングタックルのように滑った。
さながらつま先を先端とした回転する槍のようだ。
「ぐばぁ!?」
ヴァリアントの腹部から胸部にかけてに、巨大なドリルに貫かれたように、でかい穴があいた。
それでも由依は止まらない。
20体を超えるヴァリアントを貫き、あるいはその回転に巻き込み、屠っていく。
だがそんな由依の前に、かなり魔力の大きなヴァリアントが立ちはだかった。
「人間の小娘がなかなかやるじゃない」
琵琶を手にし、着物をはだけさせた女性の格好をしたヴァリアントは、由依の足首を掴み、その回転を無理やり止めた。
回転と魔力による摩擦で白い手がボロボロになるのも構わず、片手で由依を持ち上げると、野武士のようなヴァリアントが構える刀へと放り投げる。
由依は空中で体勢を立て直すと、刀の腹を蹴って折り、着地と同時に野武士の顎を蹴り上げた。
蹴り上げた勢いのまま空中へ離脱した由依だが、ここはもとから空中なのだ。
既に別のヴァリアントに上をとられていた。
由依に向かって、弥生時代のような服装の男が、巨大な斧を振り下ろす。
「由依さん!」
その『斧を中心にして』双葉が拳サイズの神域絶界を展開した。
絶界がとらえたのは斧の一部。
しかし、その一部をがっちりと空間に固定されたため、斧が振り下ろされることはない。
その隙を逃さず、由依がヴァリアントの首を刎ねた。
そのままいったんこちらへ戻ってくる。
「ほぅ……。神域絶界を遠隔で展開できるとな」
ヒミコが興味深そうに双葉を見た。
これが双葉の新たな武器だ。
自分を含めずに神域絶界を展開させるのはかなり苦労した。
なんせオレが使えない技だから、教え方が難しかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます