第136話 8章:ブラッディドリーマー(21)

◇ ◆ ◇


 ラジオパーソナリティーの案内を終え、これから三十分の休憩時間だ。

 クラスでも見に行――痛っ……!


 控え室を出たオレを激しい頭痛が襲ってきた。

 なんだ……これ……。


 視界がチカチカと明滅を繰り返す。


 オレはふらふらと、教室とは反対側へ続く廊下でへたりこんだ。


 頭が割れそうなほど痛い。

 まるで、脳内に無理矢理情報を流し込まれているようだ。

 いや『まるで』じゃない。

 映像が記憶に割り込んできた。


 これは……壁掛け時計?

 午前か午後かはわからないが、午後だとするなら今から三十分ほど後だ。


 この頭痛、覚えがある。

 異世界で魔族に偽の記憶を植え付けられた時と同じ感覚だ。


 あの時と違うのは、記憶を植え付けるのに使われている魔力が、オレ自身のものだということだ。

 どうなってる?

 この時間に何か起こるのか?

 それとも過去の出来事か……?


 もう一度映像を脳裏に思い浮かべてみる。

 掛け時計の背後に壁が写っている。

 木目だが、繊維の細かさからすると、この時計、かなり大きいぞ?

 それにこの壁の模様……体育館か!


 その時、由依からメールが届いた。


「オヒルサシイレヨウカ?」


 その場合ではなさそうだ。

 もし体育館に危険があるなら、遠ざけておきたい。


 悩んでいると、続いてもう一通メールが届く。


「フタバチャンモイッショダヨ」


 なおさら二人とも一緒に逃げて……いや、まてよ。

 この状況……オレの考えが正しいなら……。


 オレは由依に電話をかけた。


「由依! 双葉を連れて体育館前に来てくれ!」

『いいよー。メニューは何がいい? 持ち運びやすいものならなんでもいいよ』

「いや、メシはいい」

『……何かあったのね』


 由依の声音が真剣なものに変わった。


「わからないが、おこるかもしれない」

『すぐ行くわ』


 杞憂であってほしいが、オレのイヤな予感は当たるのだ。


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