第125話 8章:ブラッディドリーマー(10)

 宇佐野と一緒に店に行ってみると、聞いていた通り大繁盛していた。

 外まで大行列ができている。

 その半分くらいが、学園祭の準備で忙しいはずであるウチの男子生徒達だ。

 まだ定時前のはずだが、サラリーマン風の男性客もちらほら見られる。

 たまに店長が外に顔を出しては「本日はこれ以上お並び頂いても入店できません」と説明をしている。

 大衆向けレストランで出るセリフじゃない。

 期待以上の集客力だ。


「あら難波君。来たわね」


 店長がオレのことをちょいちょいと手招きした。

 オレと宇佐野は従業員通用口から店内に入る。

 店内では由依に渡辺、そしてさらに二名のクラスメイトが働いていた。


「ご注文は以上ですか?」


 渡辺が接客をしている。


「こちらもおすすめですよ」

「でも予算オーバー……」

「頼んでくれたら、わたし、とっても嬉しいです」

「でへへ……じゃあ……お願いします……」


 渡辺の笑顔にでれでれになった男性客が追加注文を決めていた。

 ちょろすぎでは。

 男性客の目は顔、胸、ふとももを行ったり来たりしている。

 まあ……気持ちはわかる。


「こちらもご一緒にいかがですか?」


 一方、由依もまた客に笑顔でオススメをしている。

 思わず見ほれるほどの笑顔なのだが、言いようのない『圧』を感じる。


「じゃ、じゃあお願いします。つ、ついでにこれも……」


 仕事をさぼっている営業という雰囲気のサラリーマンが、勧められてもいないメニューまで注文している。

 親しみやすさで釣る渡辺とは対照的だ。


「おかげでご覧の通り大盛況! 来客数だけじゃなくて、客単価も凄いのよ!」


 そんな様子を見る店長さんはウッキウキである。


「よかったです。上の人とお話しさせて頂くことは可能ですか?」

「大丈夫! むしろ本社から問い合わせが来てね。そんな面白い高校生がいるなら会ってみたいって。

 さっそく明日、社長が来るらしいの。時間作れる?」

「何がなんでも来ますよ」

「オッケー。じゃあ明日ね」


 こうも上手くいくとは思わなかったが、勝負は明日だ。

 ここまで来て、似た制服を使うことすら許さないと言われてしまえば、計画は一気に破綻することになる。


 気合を入れてかかるとしよう。


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