第104話 7章:オレにとってはぬるキャン△(8)

 女子二人の弁当と、イノシシ肉を堪能したオレ達は、再び行軍を開始する。

 もちろん火の始末はしっかりとな。



 そうこうしているうちに、チェックポイントは残り1つとなった。


「よし、しかけるか」

「そうね」

「うん」

「え? なになに?」


 由依と双葉はオレの判断に異論無し。

 真田はわかっていないようだが、しかたないだろう。


「もちろん勝つんだよ」

「え? 協力するんじゃ? まさか、マラソン大会で一緒にゴールしようね、って言っておいて最後にダッシュするアレか?」

「そんなわけあるか。そもそも、最初からゴールは一緒になんて言ってないだろ」

「ええと……あれ? そういえば……」

「そんな約束しても、後でもめるだけだからな。さて、行くぞ」

「行くぞったって、ここのチェックポイントを見つけたチームは、とっくに出発してるのにどうやって追いつくんだ?」

「簡単な話だ。先に最後のチェックポイントに到達すればいいのさ」

「だからそれをどうやって……」

「走るぞ。ついてきてくれ」

「「了解」」

「え!?」


 オレの号令に女子二人はうなずき、真田は心底嫌そうな顔をした。


 目的地は山全体に散らばった人の気配から、だいたい目星がついている。

 当然ながら、頂上に向かうほど山の面積は小さくなっていく。

 まだ誰もゴールである頂上を真っ直ぐに目指していない。

 ということは、まだ人が通過していないあたりに最後のチェックポイントがある可能性が高い。


「オレは上から右手を見ながら進む。由依は真田君が遭難しないようにサポート、双葉は足下に気をつけながら左手側を見てくれ」

「おっけー」

「わかったよ」


 二人の返事と同時に、オレは木の枝に飛び乗り、木から木へと伝っていく。

 双葉は着いてきているな。

 由依は真田のペースに合わせているので、やや遅れている。

 だがこれでいい。


 オレはチェックポイントを探しながらなので、ややジグザグに動いているが、由依はそんなオレの横の動きを無視してまっすぐ来ている。

 真田が走る距離を短くするためだ。


 最後のチェックポイントはすぐに見つかった。

 周囲の足跡や気配からして、一番乗りだ。


「はぁ……はぁ……ほ、ほんとにあった……すげえ……」


 息も絶え絶えで追いついてきた真田を待って、オレは発煙筒を焚いた。


「はぁ……はぁ……あんたら……マジで汗一つかいてないのな……」

「うまい食事と適度な運動で鍛えればこれくらいできるようになるさ」


「あれがてきど……?」


 由依が何か言いたげだが、二人の修行の時だって、ちゃんと加減はしてるんだよ?

 どこかの妖狐が妖怪達に施した修行よりは、キツくないはずだ。

 たぶんね。

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