第102話 7章:オレにとってはぬるキャン△(6)

 発煙筒が焚かれた場所には、チェックポイントがあった。

 最初に『作戦』を説明したチームのメンバーも、8人ほどその場に来ている。


 由依と双葉は、チェックポイントに置かれた機械で、地図の裏に書かれた枠にスタンプを押した。

 タイムカードのように、時刻も自動で記載されるものだ。


「さすがお兄ちゃんの作戦だね。こんなに早く一つ目を見つけちゃうなんて」

「まあな。コーチはあえて勘違いするような説明をしていたが、他のチームと協力しちゃいけないなんて一言も言わなかったからな」


 言葉の裏を読むと、協力しろと言っているようなものだった


「気付いたの、お兄ちゃんと白鳥さんだけだったね」

「みんな優等生だけあって、言われたことを素直にこなす連中だったからな。

 発煙筒がチームに1本ではなく2本配られたこと、チェックポイントのヒントが極端に少ないこと、勝利の報酬が分け合うことのできる食料であること。

 このあたりを考えれば、発煙筒を連絡手段に使えと言っているようなものだからな」


 評価という点ではおそらく、これに気づき、他のメンバーをまとめられるかどうかがポイントだろう。

 正直オレは、このキャンプでどんな評価をうけようがどうでもいいのだが、由依や双葉が勝ちたいと望むなら叶えてやりたい。


 共闘を選択してくれた他チームとの約束は、チェックポイントを見つけたら発煙筒を焚くことだけ。

 他のチームを待つ必要はなく、最終的に誰がトップをとっても、賞品は山分けだ。

 作戦を聞いていない連中もいずれ気付くだろうが、それはそれでよしとすることにした。


「ありがとう白鳥さん。おかげで助かったぜ。きっとうちのチームだけじゃ見つけられなかった」「そうそう、まさかこの課題にそんな裏があったなんてね」


 他のチームから由依に賞賛の声がかけられる。


「この作戦を考えたの、私じゃなくてカズなんだ。だからお礼なら彼にね」


 由依の一言に、その場にいた連中は一様に驚いた。


「へえ……難波君だっけ? ありがとな」「白鳥さんと噂になる人ってのは違うなあ」


 インネンをつけられるかとも思ったが、素直に褒められてしまった。

 できた連中だ。

 なんともむずがゆいな……。


「でしょ?」

「なんたってうちのお兄ちゃんだからね」


 由依と双葉は実に嬉しそうに微笑んだ。

 もしかしてこの課題に勝ちたかったのって、オレを周囲に認めさせるため……というのは考えすぎだろうか。


「さぁ、次行ってみましょう!」

「「「おおー!」」」


 由依の合図で、チームは再び山へと散会した。

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