第101話 7章:オレにとってはぬるキャン△(5)
◇ ◆ ◇
「――という感じで行こうと思うのだけどどうかしら?」
まだ出発前だった十六人を集め、作戦を説明した。
説明役はビジュアルや知名度を考え、由依の担当だ。
ちなみに、渡辺&鬼まつりペアは既に出発した後なので、ここにはいない。
「たしかに、一理ある」「その発想はなかったな」「さすが白鳥さんだ」
ここに招集されるだけあって、理解力は高いのが揃っている。
「もちろん、先に行った人達を仲間に引き込んでもかまわないわ。それじゃあ、がんばりましょう!」
由依の号令で、各チームは山の奥へと散らばっていった。
「さて、私達も行きましょうか」
そう言ってポニテにした由依は、上着はジャージ、下はミニスカ黒タイツ、そして薄いピンクのスニーカーである。
腰の下まで伸びたジャージの裾がスカートを押さえているが、ふとした拍子に中が見えそうではらはらする。
真田の視線がちらちらと由依の太ももに注がれているのもしかたないだろう。
たしかに、戦闘スタイルという意味でも、動きやすい格好なのは間違いないが。
ちなみに他の三人は上下学校指定のジャージである。
「疲れたら言えよ」
ここぞとばかりに双葉にかっこつける真田君である。
「大丈夫だよ。疲れたらお兄ちゃんにおんぶしてもらうから」
「いや……そこはオレが……もごもご……」
いいぞ真田君。そこで押しきれないのは、オレ的にポイント高い。
そのまま足踏みをしていたまえ。
キミにうちの妹はまだ早い。
そんなやりとりをしつつ、オレ達は険しい山道へと踏み行った。
「ちょ……ちょっと待ってくれ……」
十数分で最初に音を上げたのは、真田だった。
「だらしないなあ。部活で鍛えてるんでしょ?
そういう双葉は息一つきらしていない。
「はぁ……はぁ……こんな山道を全力疾走って、あんたらどういう体力してるんだよ」
オレと由依はもちろん、多少なりとも体内魔力を操れる双葉もまた、体の扱いが上手くなっている。
結果として、体力の消耗も極端に少なくてすむようになるのだ。
ちなみに真田君がついてこられるよう、かなりペースを落として走っているつもりだ。
「まあ、序盤はそれほど急ぐ必要もないからな。のんびり行こうか」
「そうね。よっと……」
由依は頷くと、手近にある高い木の枝を蹴りながら、ひょいひょいとそのてっぺんまで登って行った。
スカートの中を見せる暇すら与えない速さだ。
「身軽すぎないか!?」
真田が驚いて見上げるが、由依はスカートの中がみえないよう、しっかり押さえている。
忍者のように片足で木のてっぺんに立つ由依は、周囲を見回した後に、十メートルほどの高さを飛び降りた。
「ほんとに身軽すぎないか!? 足は大丈夫なんですか!?」
「心配してくれるの? ありがとう」
由依の外向き笑顔に、真田は顔を真っ赤にしてうつむいた。
わかるぞ。この頃って、年上の綺麗なお姉さんにクラクラくるんだよな。
そんな真田の様子をみた双葉がなんの反応も示さないあたり、脈はなさそうだ。
だが、兄として経過観察は怠らないようしなければな。
「カズ、あっちで発煙筒か焚かれていたわ」
オレ達は由依が指さした方へと歩き出した。
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