第23話

 結論から言えば、勝負は穴倉の勝ちだった。

 まとめてかかってこいという挑発に乗った虻さんたちが三方向から飛びかかる。赤井君、火山君に至っては角材持ってるんだけど、そこまでするか……?


 が、穴倉はジャンプして躱した流れで角材を踏み台に赤井・火山コンビを蹴り飛ばし、殴りかかってきた虻さんの方へ、のびた二人を放り投げ、怯んだ隙にボディーブローを食らわせていた。

 よ、よく分かんないけど速い……え、もしかしてこれ、夜羽も戦う流れなの? 無茶よ逃げて!


「へえ、やるじゃねーか。こいつらもここまで思い知らされちゃ、文句もねぇだろうよ」

「次はオッサン、てめぇがやるか?」

「いや、社会人が子供に手ぇ出す訳にはいかねえしな。俺はただの見届け人だよ。その代わり……」

「ふぇっ!?」


 稲妻さんはぶるぶる震えていた夜羽の首根っこを掴まえると、穴倉の前にひょいと押し出した。速攻でパンチを繰り出されるのを泣きながら避ける夜羽。


「ふええええん、怖いよぉ! 暴力反対~」

「おい、てめぇ助っ人だろうが。避けてんじゃねえ!!」

「無茶だよ、死んじゃうよ~」


 グスグス言いながらも攻撃は全て躱している……サングラスなしでも何気にすごかったのね、夜羽は。稲妻さんは舌打ちして立ち上がる。


「おい角笛。早いとこグラサンでも何でもかけて、そこのガキに目に物見せてやれ。そのためにわざわざここまで来たんだろうが」

「そ、そんなぁ~僕はただ、話し合いに……あべッ!!」

「俺らの話し合いっつったら、拳使うのは知ってんだろうが。それでも二代目か?」


 稲妻さんの方を振り向いた瞬間、頬に一発食らってしまう。穴倉はすかさず馬乗りになり、ボコボコにし始めた。思わず飛び出しそうになる私を、炎谷ぬくたにさんが押さえ付ける。


「ちょっとぉ、顔はやめてよね。せっかくイケメンなのにぃ」

「ああ? てめぇが色目使ってっからだろうが。原形留めねぇくらいブサイクにしてやっからよ」


 花火が横から口を挟んでくるので、穴倉の拳が止まる――その一瞬。


 突如、下から伸びた手が穴倉の胸倉を掴み、顎に強烈な頭突きが食らわせられた。


「ぐへっ!!」


 バランスを崩した穴倉の体から抜け出すと、夜羽は胸倉を掴んだまま、ドボッと重い音をさせて腹のあたりに膝を入れる。


「あひ……っ」


 情けない悲鳴を上げ、倒れた穴倉は股の間に手を挟んで悶絶している。夜羽は鼻を啜りながら立ち上がり、血の混じった唾を吐くと、ずれたサングラスをかけ直した。


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