第22話
稲妻さんの命令で、彼らは有無を言わさず穴倉と対決する事になった。場所はしばらく歩いた先にある廃工場……周り田んぼしかない! こんな人気のない場所で何かあったら誰も助けに来てくれなさそう。
花火はしぶしぶ現在の彼氏に電話をしていたが、煽れと言われたからか、昔の男どもと年下のイケメンが自分を取り合って、穴倉なんか屁でもないと誘ってきた事になっていた。なに調子こいてんだ、夜羽は関係ないでしょ!
「アホほどキレてたから、たぶん五分で着くよ。ヤバいからあんたら、逃げた方がよくない?」
スマホを弄りながらケタケタ笑っているが、呑気なものだ。そんなヤバい相手なら、付き合ってる自分も無事じゃ済まないだろうに。
「花火ぃぃぃ、ここかぁ!!」
本当に五分ちょうど経った頃に、比較的綺麗な制服の男子が青筋を立てて廃工場に乗り込んできた。隠れて出歯亀している私たちは、見つからないように場所を移動する。言われた通り一人で来たのは、律儀なのか自信があるのか。
「おいてめぇら、俺の女に手ぇ出しといて、覚悟はできてんだろうな!?」
「花火は俺の女……いや、龍さんから託されたのは俺だ。舐めてんじゃねえぞ」
「うっせーよ、おめえら。アタシは物じゃないっての」
正論を吐く花火だが、適当にあしらってフラフラしてるからややこしい事になるんじゃない……あと夜羽の肩を抱き寄せるんじゃないわよ。夜羽も固まってないで振り払いなさい!
「あ、あああの木前田先輩、離してください……」
「なに、照れてんの? かわいーね、お姉さんといい事しない?」
「おいコラ花火、彼氏の前で堂々と浮気してんじゃねえよ!!」
「は? 後輩と遊んでるだけじゃん。束縛とかマジうざいんだけど」
後ろから
「おい、お前ら! 今日呼んだのはそういうゴタゴタに片を付けるためなんだよ。花火も、これからこいつらにタイマンやらせるから、勝った方のもんになればいいだろが」
「はあ? オッサンがしゃしゃり出てくんじゃねえよ」
「そうしてぇとこだがな。一年坊主、お前もせっかく茂久市六の頭潰してトップになったんだから、いつまでも絡まれんのはうぜえだろ。ここらでもう一度、思い知らせてやったらどうだ? それとも、実はマグレだってバレんの怖ぇのか?」
稲妻さんの挑発に、穴倉は面白そうにニヤリとした。一年だけあって、ごっつい稲妻さんとの身長差がすごいけど、全然ビビッた様子はない。
「上等だコラ……こいつシメたらオッサン、あんたもボコってやるからな」
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