第6話 シャーロット、もう君を逃がさないよ!

翌日、エミリーとその家族、魔術師は奴隷商に連れて行かれた。奴隷商もまさかタダで手に入るとは思っていなかったようで、喜んで引き取りに来た。




そうそう、心優しいシャーロットには、エミリーは隣国の修道院に入ることになったと伝えておいた。


「良かったわ、極刑は免れたのね。ありがとう、リアム様」


そう言って嬉しそうに僕に抱き着いてきた。本当にシャーロットは可愛い!もう二度と離さない。僕は前の生で14年もの間、シャーロットと離れ離れになっていたのだ。




あの時の絶望と虚しさは、今でも心に焼き付いている。そのせいか、1秒だってシャーロットと離れたくないのだ。正直シャーロットが居れば、他の奴がどうなろうと知ったこっちゃない。王太子の座も特に興味はないが、シャーロットを繋ぎ止めておくのに必要な為、仕方なく王太子をしている。






さてと、次はもう1つの作戦を決行する番だ。僕は父上とウィルソン公爵を呼び出した。エミリーの処罰について報告する為だ。




「父上、ウィルソン公爵、エミリー・コックス及びその家族の処罰について説明いたします。彼らは、隣国の奴隷商に引き渡しました」




「何だって!隣国の奴隷商だと!」


父上が驚きのあまり声をあげた。さすがの公爵も、目を丸くしている。




「あの女は、シャーロットから全てを奪い取り、絶望を味合わせたいと言っていました。だから、あの女に絶望を味合わせてやったのです。奴隷商への引き渡しも、無事済みました」




「リアム、お前ってやつは…」




「何か不満でもありましたか?」


僕の問いに黙り込んでしまった父上。代わりに口を開いたのは、ウィルソン公爵だ。




「いや…リアム殿下は間違っていない。確かにエミリー・コックスのやろうとしたことは、残忍でとても容認できることではない。奴隷商に引き渡したと言うのは、いささかやりすぎな気もするが。まあ、もう引き渡してしまったものは仕方がないだろう」




ウィルソン公爵はどうやら僕のやった事に納得してくれたようだ。さてと、本題に入るとするか。




「父上、ウィルソン公爵。今回の事でわかったかと思いますが、シャーロットはあの様な愚かな者達に、今後も命を狙われる事が無いとは言い切れません。それで、今後はより安全な王宮でシャーロットを生活させたいと考えております」




もうシャーロットを公爵家に帰すつもりなんてない。王宮でずっと僕と一緒に暮らすんだ!




「お言葉ですが殿下。さすがに王宮で暮らさなくても、我が公爵家でも十分シャーロットを守ることが出来ます」




やはり反撃して来たな。ウィルソン公爵にとって、シャーロットは亡き夫人の大切な忘れ形見と聞いている。そう簡単には、手放してくれないよな。




「ウィルソン公爵、そうは言っても、今回のエミリー・コックスの件。公爵は全く情報を得ることが出来なかったのでしょう?あの女は、シャーロットを苦しめるのが目的とも言っていた。もし僕への魅了魔法が上手くいったら、次はあなたが魅了魔法に掛けられていたのでは?」




前回の生では公爵は魅了魔法に掛かり、シャーロットを随分と傷つけた。それなのに、シャーロットにあっさり許してもらっていたな。




「それはそうかもしれませんが…」




「エミリー・コックスの悪事に気づけなかったあなたに、どうやってシャーロットを守れるというのですか?大丈夫ですよ公爵。一緒に住めなくても、シャーロットは王宮に居るんです。いつでも会えますから」




僕はウィルソン公爵に向かってにっこり微笑む。まあ、会ったことも無い令嬢の悪事なんて、どう頑張っても気づける訳がないんだけれどね。でも責任感の強いウィルソン公爵だ。無意味に責任を感じるはず!




「確かに殿下のおっしゃる通り、私はあの女の悪事に気づけなかった。わかりました。シャーロットは王宮に住まわせる事にします。ただし、絶対にシャーロットを守ってやってください!それだけは約束して頂けますか?」




「もちろんですよ。命に代えてもシャーロットは僕が守ります」




僕の言葉に、ウィルソン公爵は力なく笑った。最愛の娘と離れて暮らすのだから、きっと寂しいのだろう。まあ、僕には知ったこっちゃないけれどね。




そして翌日、シャーロットが王宮へとやって来た。本当はその日のうちに王宮に招き入れたかったんだが、公爵がどうしてもというので、そこは受け入れてあげた。




「リアム様、父から話は聞きました。今日からよろしくお願いします」


少し寂しそうな顔をしているシャーロットを、僕はそっと抱きしめた。




「大丈夫だよシャーロット。ウィルソン公爵や令息に会いたくなったらいつでも会っていいんだし。それに、王宮内では極力僕が一緒に居るから。きっと寂しくないよ」


僕の言葉を聞き、少し安心した様な顔をしたシャーロット。




僕は早速シャーロットの部屋を案内する。もちろん、僕の部屋の隣だ。ちょっと改良してもらい、僕の部屋とシャーロットの部屋は廊下に出なくても直接行けるようになっている。そして、シャーロットの部屋には、外からカギも掛けられるように施錠も設置した。




「そうだ、シャーロット。これに魔力を込めてくれるかい?」




僕はあるリングをシャーロットに渡す。




「これは何ですか?」




「これはシャーロットを守る大切なものだよ。出来るだけたくさんの魔力を込めてね」




シャーロットはリングを握りしめ、思いっきり魔力を込める。よし、これで完成だ!魔力を込めたリングを、シャーロットの腕に付けた。




「リアム様、これは一体何なのですか?見たところ、魔力無力化リングによく似ていますが」




「シャーロット、正解だよ。これは魔力無力化リングだ。シャーロットが僕に内緒で勝手に魔力を使って外に出ないようにする為のリングだよ。黙って出て行って、何らかのトラブルにでも巻き込まれたら大変だからね。これもシャーロットを守る為なんだ。我慢してくれ」




本当はシャーロットが僕から離れて行かない為のリングなんだけれどね。シャーロットはとにかく魔力量が多い。だから、ゾマー帝国の魔術師が作ったリングは壊される可能性がある。




実際前回の生では、魔術師の作ったリングをシャーロットは粉々にしている。そこで考えたのが、シャーロットの魔力を含んだリングを作ることだ。基本的に魔力無力化リングを打ち砕くには、リングに込めた人以上の魔力が必要になる。




だから本人が作ったリングは、本人には打ち砕くことが出来ない。これでシャーロットは僕から逃げられなくなった。そしてこのリング、今シャーロットがどこに居るのかも、わかるようにもなっている。ちなみにこのリングは、僕以外は外せない。




「ねえ、リアム様。どうして窓が開かないの?それにこの部屋、外側からカギが掛けられるようになっているみたいだけれど…」




「それもシャーロットを守る為だよ。大丈夫だよ。学院にも行かせてあげるし、僕と一緒ならどこにだって連れて行ってあげる。だから心配しないで」




そう、シャーロットは基本的に僕と一緒でないと、この部屋から出すつもりはない。




「なんだか不便ね。でも、私を守る為ってお父様も言っていたし、少しの不便は我慢しなくちゃね」




そう言って笑ったシャーロット。この日からシャーロットの王宮での生活はスタートした。もちろん、朝は一緒に朝食を食べて学院へ向かう。もちろん、ひと時もシャーロットから僕は離れないし、離れてはいけないと言い聞かせてある。




もしシャーロットが僕との約束を破った場合は、厳しい罰も与えている。少し可哀そうだが、躾は大切だからね。




そして王宮に帰ってきたら、王妃教育と食事以外を自室で過ごすシャーロット。もちろん、部屋から出る時は僕のエスコート付きだ。最初は不満を漏らしていたシャーロットだったが、徐々に慣れてきたのかそれなりに楽しそうに過ごしている。




もちろん、シャーロットが自室にいる時は、基本的に僕もシャーロットの部屋で過ごす。本当は一緒に寝たいのだが、さすがに結婚するまではとシャーロットが言うので、そこは我慢している。




でも、実はこっそりシャーロットの部屋に忍び込んで、抱きしめて寝ている。1秒だってシャーロットと離れたくない。そしてついにこの前、抱きしめて寝ている事がシャーロットにバレて怒られた。でもバレたおかげで、シャーロットと一緒に寝ることになったから結果オーライってところかな。






貴族学院を卒業するまでまだ3年近くあるが、卒業すればシャーロットは晴れて僕の正式なお嫁さんになる。そうなれば、シャーロットを極力誰の目にも触れさせずに過ごさせよう。シャーロットは僕だけのものだ!




そうそう、今シャーロットに自分の分身を作らせる訓練をさせている。いつかシャーロットにそっくりでしっかり話せる分身が出来たら、公務はそいつにさせようと考えてる。




シャーロット、僕をこんな風にしてしまったのは君だよ。だからこれからも責任を持って、僕に捕まっていてね。もう絶対に離さないからね。



おしまい






~あとがき~

何だかんだでシャーロットもリアム殿下との半監禁生活を楽しんでいる様です。卒業し正式に結婚したら、本格的な監禁生活がスタートしそうな予感がします…


これでIFストーリー完結です。


お付き合い頂き、ありがとうございましたm(__)m

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