1%

門前払 勝無

第1話

「1%」


 全ての人に非難される人ってのも珍しいだろー。


 何もかもが上手く行かないことにはもう慣れたよ。


 知り合った人には最終的に否定されて、相手から居なくなったり俺から消えたりしてきた。


 なぜ生きてるのか?

 それは、全ての人が俺を否定しても愛する人が一人だけ俺を肯定してくれるんじゃ無いかって、今にも消えそうな期待があるから生きることに執着してるんだよ。


 94年のワールドカップ決勝のバッジョを知ってるかい…あのドラマの後にバッジョの奥さんが言った言葉が中坊だった俺の心をグサリと刺したんだよ。

 あの時にバッジョは最高に幸せ者だな、むちゃくちゃ羨ましかったから俺もあんな事を言ってくれる愛する人に出逢いたいんだよ。


 あの女…かと思った。

 この女…かと思った。

 その女…かと思った。


 かと思ったけど全員違ったよ。


 もう時が経ちすぎて99%諦めてるよ。


 雨の降りしきる中ー。

「私は!貴男じゃなきゃダメなの!!」

エリの名言。


 薄暗いバーカウンター。

「もしかして私が探してたのは貴男かもしれない…」

香奈子の名言。


 駅の改札口ー。

「こんなに愛してるのに!」

紀子の名言。


 山手通りを歩きながらー。

「何があっても怖くない!何があっても離れないからね」

花子の名言。


 朝陽の射し込む俺の部屋でー。

「貴男が望むことは私が望むことなの…貴男の好きにして」

幸子の名言。


 今だから笑い話だよ。

 だいたい金が無くなると居なくなったよ。

 夢や希望を持つことは良いことだけどな、諦めるって事も大事な決断なんだよ。


 普通が解らないが普通の男と感性が違って、それなりに整った外見をしてるから異性に興味を持たれるんだろうなと思ってる。今はおっさんになったから出逢いなんて無いけどな…。


 他人との付き合いは適度で良いんだよ。

 なぁなぁで当たり障り無い会話をしてれば良い。


 陰を20%ー陽を80%にしているとストレスも少しは軽減されるかもな、俺は陰と陽を50%づつ出してる。駆け引きとか嫌いだし意味は無いと思ってる。仕事なんかでも小さいこととか面倒なことを隠蔽工作使用とする奴等を否定すると上司や周りから「真面目すぎる」「真っ当にやってたら売上が上がらない」等と言われる。その時に俺は会社を辞める。

 腹を割って本音で付き合おうとすると、警戒してコソコソとする奴がいると俺から消える。思ったことを口に出すと「それは言い過ぎ」「言わなくて良いこと」「そういう事を言わなければ良い人なのに勿体ない」と言われる。


 良い人になりたいとも思わない。

 お金持ちになりたいとも思わない。


 自分を肯定してくれて、俺もその人を肯定していける愛する人と過ごしたいだけー。

 客が笑顔になる仕事をしたいだけ、金は生活できるくらいでいい。


 しかし、世の中ではこの考えは間違っていて省かれるのである。


 俺の抱いた1%の微かな希望は無くなった。

 生きる意味も無くなったのであるー。


 自殺はしない。


 希望が無くなると少しスッキリとする。自分を縛っていた何かが弾けるような感じだ。

 こうやって空想の理解者を鏡に映して本音で話していても何も否定してこなくて、君はずっと俺の話を聞いてくる。


 俺のこれからの生き方は、現実の生活の中では無口に極力他人との接触を避けて、部屋の中だけで本音で生きるサバイバル生活になる。ゾンビ映画みたいな生活だ。物資を探しに行って家で安堵するーそれの繰り返しである。

 1%の希望は無くなって100%俺の夢は潰えたが、新たなサバイバル生活が始まった。

 このサバイバル生活で死ぬまで生きる。


 昔からゾンビに囲まれていたんだと気付いて、深く納得できている。


おわり

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