母
バブみ道日丿宮組
お題:混沌の母 制限時間:15分
母
私には母親が二人いる。父親という存在は物心がつく前からいなかったと教えられてる。調べてみると、確かにそのとおりだった。
けれど、産みの親はどちらも違った。
私というのはいわば行方不明になった人間。というのも突然居間に存在してたというのだから信じがたい。赤ん坊が鍵のかかった家に忍び込むとはおかしな話だ。
でも、子供が作れない母たちは私を祝福してくれた。
今日まで育ててくれた恩はある。その期待に答えるために学業を頑張って、他もできるだけ挑戦してた。ところどころで怪我をして心配もされた。ちょっと嬉しかった。
ただ血液検査をしてから二人の様子は変わった。
医者のいる診察室に親子で入ると、私は特殊であると言われた。なんでもDNAが人間のものではなく、海洋生物に近いとのことだ。魚と同じDNAなのかとおかしく笑いそうになった私は、医者の次の言葉で絶句する。
『今後大量の血液を必要になった場合、助かる見込みを持てない』と。
帰りのタクシーの中、重い空気だけが流れた。二人が凄く考えてるのだけはわかった。医者の出した提案は受け付けられないし、最悪私が捨てられることも考えた。
それからしばらく何事もなく過ごして、ある時私は母に呼ばれた。
医者の提案に乗ると、二人は笑ってた。
私のために、私の血を受け入れて適応する血を作る存在になってくれると声をあげた。
私はどんな表情をすればいいのかわからなかった。私と同じ人間でないものに本当にしていいのか。それで死んでしまったら私はどうすればいいのか。
いろんな考えが頭に浮かんだ。
そんな私を母たちは抱きしめてくれた。
大丈夫、絶対に1人にしないから。
私は泣きながら頷くしかなかった。
そうして母は母になった。
母 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます