3章 ウチ来る?
第15話 弱点の克服のために……要相談!
★★★(ヤツフサ2世)
俺……ヤツフサ2世は生まれてからずっと上に立つ存在だったワン。
何故なら、ノライヌロードとして生まれたから……だワン。
通常なら、俺の上に立つノライヌは存在しない。
ノライヌロードは全てのノライヌの上に立つ存在……。
ノラウシすら支配下に置ける俺こそが、ノライヌの最上位種……
ずっと、そう思って来たワン。
けれど、それは間違いだったワン。
俺の息子として生まれて来た3匹……ノライヌエンペラー。
俺は、彼らが生まれて来た瞬間、真の王が誕生したと悟り、その事実を直ちに受け入れたワン。
ノライヌの王の地位を、彼ら3匹に譲り渡したのだワン。
それぐらい、絶対的なものを感じたのだ……ワン。
茶色の毛並みで、禿げた中年男の顔を持つノライヌエンペラー「ゲーハー」
白い毛並みで、口髭の男の顔を持つノライヌエンペラー「ヒゲ」
黒い毛並みで、ぶよぶよの肥満体の男の顔を持つノライヌエンペラー「キモデブ」
偉大なる3匹の我らの統率者……!
現在根城にしている鍾乳洞の奥。
まるで玉座のようになっている高台に、3匹の我らの王たちは座しているワン。
座して……
彼らは今、話し合いをしていたのだワン。
「僕ならもっと上手くやるなどと、デカイことを言った割にはざまあ無いなワン」
ゲーハー様の言葉。
ヒゲ様に向けて、挑発的な響きの混じった言い方だったワン。
だが、ヒゲ様は
「……言い訳はしないワン」
ヒゲ様は、まず自分の失敗についての言い訳は全くしなかったワン。
これが、上に立つノライヌエンペラーの在り方ワンか……!
「正直、ノラハンターという奴らを甘く見ていたのは認めるワン。まさか、あそこまでやる奴らだとは思わなかったワン。所詮はJCだろうと……」
素直に油断を認めたヒゲ様に、ゲーハー様は意外そうな顔をしたワン。
「……素直に認めるのかワン……? 理屈っぽいお前なら、言い訳をしまくると踏んでいたワンが……」
「目的を見失うなワン。言い訳してもノラハンターは攻略できないワン。言い訳すればするほど、僕らの悲願が達成される日が遠のくだけだワン」
……な、なんと……!
俺は感涙に咽び泣いたワン。
己がちっぽけなプライドを守るために、自分たちの使命から外れてしまう……
それを何より恐れると。
そう仰られているワン……我らが王よ……!
「それは……そうワンね。俺も反省するワン。……戦ってみて、どうだったワンか?」
ゲーハー様は玉座に座り直し、ヒゲ様に意見を求められたワン。
情報の共有が大事ワン、と言いながら。
「ひとつ、重要な事が分かったワン」
それに応えてのヒゲ様の言葉。
2匹はそれを神妙な面持ちで聞いたワン。
「……奴らの浄化技は、エロマニアに乳首が無ければ発動しないワン」
「……それは……どういう……?」
いきなり言われても飲み込めない。
そんなゲーハー様の気持ちを汲み、ヒゲ様は事細かに、自分の戦いで何があったのかを説明したワン。
「……なるほどな……ワン」
「つまり、奴らの浄化技は乳首の無い者には使う事が出来ないという欠陥が……!」
「そうだワン。だがしかし、今回のラチカンキンエロマニアも、真っ当な乳首は存在しなかったが、奴らはその場所を探り当て、浄化技を決めて来たんだワン……」
つまり、言う程事は簡単ではないということワン。
ヒゲ様はそう自分の話を締めくくったワン。
「……ブヒヒワン」
ここで。
今まで聞く側に回るのみで、一言も発しなかったキモデブ様が口を開かれたワン。
キモデブ様は、ヒゲ様に笑いを含んだ視線を向け。
「そういう事なら、うってつけのエロマニアがあるワン。どうワン?……ここはオデに任せてみないかワン?」
オデは今まで出番が無くて退屈だったワン。
退屈を解消しつつ、ノラハンターも攻略してみせてやるワン。
キモデブ様は太った腹を揺らしながら、ブヒヒ、ブヒヒと笑ったワン。
絶対の自信……。
それを感じてしまったワン。
ゲーハー様、ヒゲ様……?
おふた方の意向は如何に……ワン?
ゲーハー様は……
「経験は大事だワン。……それに……上手く行けばヨシ」
ヒゲ様は……
「まあ、お前なりのやり方で攻略して見せてくれ。上手く行くならそれに越したことは無いワン」
おふた方は……異議が無いようだったワン……。
★★★(テスカ)
「爪先! 顎! 脇ーッ!」
今日も、ヒカリさんの自主稽古にウチは立ち会っていた。
ブルマの体操着姿でヒカリさんの稽古する姿は凛々しい。
凛々しいんやけど……。
ひとつ、気になってる事がある。
稽古が一段落したとき。
ウチは手拭いを持って行きながら、話を切り出した。
「あの、ヒカリさん」
「どーしたのテスカさん、神妙な顔で」
……1カ月ちょっと前までヒカリ様と読んでたヒカリさんと、こうして名前で呼び合う間柄になれた。
嬉しい。
……と、本題はそこやない。
ウチは声を潜めて、話を続けたんや。
「
そう。
現在ヒカリさんが変身するイザナミハンターのみが使用できる浄化技「
この技の弱点、敵のノライヌエンペラーたちに露呈してしもたんや。この前。
使用するときに、両爪先、顎、両脇、そして両乳首を同時に打って、突かないと浄化が発動しないっていう、致命的な弱点を。
だから、早急に改善しやなあかんのよ。
「弱点を克服しないとマズイ思います」
「……それは……そうよね」
ヒカリさん、渋い顔。
そんなことは分かってるけど、どうしたものか……
ヒカリさんはそう思てはるに違いないわ。
でも、慣れ親しんだヒカリさんには改善のアイディアが出ないんかもしれへん。
当たり前にやってきたことやから、今更改善しろと言われても……みたいな。
当たり前ってことが、改善の枷になるんやね。
だったら……
ここはウチの出番かもしれへんな。
ウチは言った。
「そもそも、何で、両爪先、顎、両脇、そして両乳首なんですか?」
まずはそこを考えなあかんよね。
そこに解決の糸口があるに違いないから。
そしたら……
「それは、母に杖術の稽古をつけてもらうときに、そこを打つ事を教えてもらったからよ」
ヒカリさん、淀みなく即答しはった。
お母上に言われたことやから、疑問が無いんやろうね。
「ノラハンターになる運命をテツコに伝えられたとき、浄化技を編み出さなきゃならないって言われて、自然にそうなったの」
……なるほど。
お母上の教えがあって、お母上の教えで習得した杖術を浄化技に組み込むと決めた以上、そうなるのは必然だったと。
そういう
……多分やけど、浄化技って、他人からのそういう想いの繋がりみたいなものが必要で。
自分個人で勝手に考えた内容では、効果を発揮しないんとちゃうかな?
なんか、浄化技について話すときのヒカリさん、お母上への想いが顔に出てた気がするんよね。
「……あの」
だから、一応確認したわ。
浄化技って、そこに絆が存在して無いと成り立たないんですか?
って。
そしたら。
『良く分かったわね。その通りよ』
突然、ニュッとテツコのやつがヒカリ様の体内から出てきおった。
驚いてしもたわ。
人間はキツイ、
自称・妖精やけど、外面完全に人間やもん。
そんなんがいきなり人の体内からニュッと顔を出すなんて。
ウチはまだ若いからなんとかなってるけど、ウチが高齢者やったら心臓の心配をせんといかへんわ!
『浄化の力の根源は、嬉しい、とか、幸せ、愛されてる、っていう想いなの。そういう相手から伝わった何かを組み込むこと。それが浄化技を成り立たせる基本なのね』
テツコはそんなウチの事は無視して、スポンと全身を抜き出して、ふよふよしながら浄化技について語りよった。
……まぁ、色々言いたい事はあるけど。分かったわ。
とすると、選択肢は2つやね。
ウチが、新しく浄化技を編み出すか、ヒカリさんの浄化技を改良するか……。
ウチの事はウチがやればいいから、前者はとりあえず放置でええよな。
寝る前にでも考えておけばいいんや。
やっぱ2つ目やな……。
「お母上から、他に何か無いんですか?」
ウチは問いかける。
すると、ヒカリさんは腕を組んでう~ん、と唸って。
考え込んで。
そして。
「……テスカさん、明日時間ある?」
ポツリ、とそう言いはった。
基本ぼっちのウチに、何を言いはるんですか?
誕生日でも無いのに、予定なんて勉強以外あれへんですよ。
そう、伝えたら
ヒカリさん、ちょっと複雑な表情をしたけど
こう言いはったんや。
ビックリした。
ビックリしたけど……嬉しくて、ワクワクしたわ。
「ちょっとウチに来ない? ……泊まり込みで」
お泊り会や!
ウチにとっては、都市伝説みたいな、お泊り会や!
これは行くしかあらへんがな!
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