第7話 はじめての決着!
ウチはヒカリ様の雄姿に震えるものを感じた。
なんて気高いんやろう、と。
ヒカリ様は、戦えない人を守るため、そしてエロマニアなんていう怪物にされた人も守るためにああして身体を張ってらっしゃるんや……
やはりヒカリ様は……ウチのお慕いするお人やで……!
さっきは、ウチは自分にノラハンターがやれるんやろうか? と不安になっとった。
でも、それは間違いや。
ウチはどういうわけか、運命に選ばれたんや。
やってやろうやないか!
そして、絶対にヒカリ様の支えになる!
こんな辛い戦いを、ヒカリ様おひとりの肩にだけ背負わせるなんて、そんなのありえへん!
ウチも半分背負うんや!
そのためなら、やってやろうやないか!!
『……顔を見たら分かるよ。覚悟、決めたんだね……?』
ウチを見て、テツコのやつがそう言うた。
なんか、優し気な表情やったわ。
それを見て、ウチはコクンと頷き……
「イハイパクト・ペルセポネー、セット!」
ヒカリ様がしたように、ウチも変身作業に取り掛かった。
ヒカリ様が1度やってみせてくれた。
ウチだって、1回見ればこれぐらい覚えられる!
コールと一緒に正座をして、目の前にイハイパクトをセットする。
当然、漢字が自分に見えるように。
ヒカリ様はそうしてはったから!
そしてヒカリ様がしていたように、おりんチャイムを1回鳴らし、自分の額に近づけながら……
「変身!」
そのコールに応えるように。
ピカッと輝きが生まれ、ウチの身体が浮かび上がる。
着ていたセーラー服が消え去って、代わりに黒いスパッツ、黒いへそ出しノースリーブ衣装が装着される。ヒカリ様の衣装同様、フリルがついとった。
そして同色の手袋とブーツも出現、装着。
最後にウチの髪の色が赤くなり、ほんの少しだけ、伸びた。
……ヒカリ様みたいな、ロングにはならんのやな。
それだけちょっと残念やったわ。
「……これが……ウチ……!」
テツコが自分の手鏡を差し出してくれたので、ウチは自分の姿を確認出来た。
浮ついとると怒られるかもしれへんけど、ちょっとだけウチはワクワクしとった。
『さあ……頑張れ!』
テツコの激励。
ウチは頷くと、飛び出した。
頭の中に、使用可能な精霊魔法の名前と、その効果が駆け巡る……
凍結の術、吹雪の術、氷封の術、氷柱槍の術……
操樹の術、樹育の術、植物無毒の術、迷イ森の術……
おお……本当に精霊魔法を使えるようになった実感があるわ!
ホンマ! すごいわ!
「武器を捨てろワーン! 武器を捨てないと、この娘にディープキスするワーン!!」
ウチが自分の力に興奮していると。
あのノライヌエンペラーがとんでもない事を言い出してきおった。
何言うとんねん!
卑劣やし、とんでもない事や!
そんな事をしたら、女の子がどんだけ傷つくと思てんねん!
「それだけじゃないぞワーン!? 身体も触りまくって、お嫁にいけなくしてやるぞワーン!!」
させるかああああああああ!!
ウチはダッシュをかけた。
すると、おお……
メッチャ走れる!
こんなに速う走れたのは生まれて初めてや!
まるでウチの身体ちゃうみたい!
『はじめてガ〇ダムに乗ったアム■の心境を味わってるわね……』
そんなウチに並走するように宙に浮いたまま追いかけてくるテツコ。
なんやねんガ〇ダムって!? まぁ、ええけど!
そのまま踏み切って、ウチはノライヌエンペラーの背中にドロップキックをかけた。
ウチに気づいておれへんかったノライヌエンペラーは「ルギャアアアアアアわーん!」なんて悲鳴をあげて吹っ飛んでいきおった。
悪は許さへん!
その意味を込めて、ウチは起き上がって来たヤツに、宣言したった。
「正義の使者・ペルセポネハンター、ここに参上や!」
……おお。
口に出すと、正義のために戦う気持ちが沸き上がってくるやん!
だからヒカリ様も変身時に名乗ったんやね!
こういうの、大事なんや!
「ペルセポネハンターだと……?」
「オマエらの企みもここまでや!」
言ってウチは、凍結の術を使用した。
触ったものを、生物以外全て凍結させる術。
凍結させるのは……エロマニアが噴射した白い粘液!
ウチは女の子の足を拘束していた白い粘液に触れ、術の発動をイメージする。
ホンマは呪文を使わんといかんのやけど、ノラハンターはそれを省略できるみたいや!
ホンマ、すごいわ!
みるみる粘液が凍結し、脆くなる。
それをウチは、思い切り素手で殴りつけた。
すると。
バキーン!
粉々になった。
解放される女の子。
「はよ、逃げ!」
「あ……ありがとう! ペルセポネハンターさん!」
軽く頭を下げて、一目散。
体操着姿の女の子は、逃げて行った。
これで1人!
同様の手段で、ウチはエロマニアに拘束されている女の子を次々と解放する。
ヒカリ様が心置きなく戦えるように。
そして最後の1人を解放したとき。
ウチはヒカリ様に呼び掛けた。
「人質全員解放しましたー! もう何も心配ありませーん!」
そう報告したとき。
ヒカリ様は目で「ありがとう」って言ってくれはった。
嬉しかったわ。
ヒカリ様の役に立てた……!
エロマニアはあちこち打ち据えられて、かなりダメージを受けとる。
タイミングとして……
『見てなさい。ヒカリが浄化技を出すから……』
スッ、と。
ウチの隣にテツコが来て、そう言う。
浄化技……どんなんなんやろ……。
『あの子の奥義よ』
……奥義!?
ヒカリ様は空中で静止して、長く伸ばしたおりんスティックを片手にじっくり気を練るように佇んでいはった。
その視線は、ダメージを受けてグロッキーになってるエロマニア……
エ……エロマニアァァァァァァァッ!!
そしてエロマニアは、状況に耐えきれなくなったんやろか。
火ィがついたみたいにヒカリ様に突進していった。
ドスドスドスと、エロマニアの重い足音。突進。
それを正面から見据えているヒカリ様。
そのふたつが近づいて……
重なろうとする、その、瞬間やった。
ヒカリ様の如意棒モードになったおりんスティックが閃き。エロマニアを打ち据えたんや。
速過ぎて全く見えへんかった。
気が付いたら、打ち据えたエロマニアの背後に、ヒカリ様が背を向けておりんステック如意棒モードを突き出した姿勢で停止してはった。
『……
異能って!
ヒカリ様、異能まで使えるんか!?
魔法以外のもうひとつの人間の特殊な力『異能』まで!?
どんだけすごいお人やねん!
驚くウチ。
そんなウチが見ている前で。
エロマニアアアアア……
『喰らったエロマニアは浄化される。絶対に』
したり顔のテツコの言葉通りに、エロマニアが輝きながら、浄化されていく。
打たれたエロマニアが……輝きながら……すっぽんぽんの男子に戻っていった。
見ると、ヒカリ様にブサイクな事を言いに来たアイツやったわ。
アンタやったんか。
まぁ、助かって良かったな。
すっぽんぽんで、校庭でうつ伏せに倒れているその男子に向けてウチは心で言った。
そんなうちらを見て。
「……クッ、ノラハンターめ! 覚えていろワン!」
エロマニアが浄化されたのを見て、ノライヌエンペラーはそう言い残して茂みに飛び込み、おらんようになった。
それを見て、思う。
……勝てた。
って、逃してしもた!
どう見てもアイツが元凶やのに!
しまった! どないしょ!?
慌てたウチが、ヒカリ様に目を向けると。
ヒカリ様は、浄化技を繰り出した姿勢でこちらに目を向け。
スーッと近づいて来はった。
……お……怒られる!?
それを心配したんやけど。
「ありがとう! 助かった!」
ウチの手をとって、そう言うてくれはったんや。
……敵を逃がしてしまったのに。
「スミマセン。エンペラーを逃がしてしまいました」
「そんなのはまた捕まえればいいのよ! それより……」
ヒカリ様は、本当に嬉しそうで……
ウチは、そんな笑顔のヒカリ様を見ると胸がどんどんいっぱいになる気がしたんや。
「ナイスサポートだったよ! これからも一緒に頑張ろう!?」
……こんな事を言われたら……
ヒカリ様にこんな事を言われたら……
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
これ以外、言えへんよなぁ……!
~1章(了)~
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