第三十一話 王城での一泊

 俺達は現在王城で晩食を頂いている。


 「美味しい」

 「そうかそうか、それは良かった」


 フレンディア国王アンデート・フレンディアは満足そうな表情でそう言った。

 高価な布の服に身を包み、下はこれまた高い材質の布の黒いズボンを着用している。豪華な金銀のアクセサリーも身に着けている。顎鬚が良く似合う大人である。

 防御力は高くなさそうだが。

 まあ王様なら戦闘はしないのかな?


 「美味しいです。この魚料理が特に」

 「美味しいな。流石王族が食べる高級料理だ」

 

 アイリスとラファも提供された食事に満足している。

 アーノルド家にいた頃もこんな美味しい料理は食べたことない。

 舌が肥えてしまいそうだな。


 「盾を渡す前に紹介したい人がいる」

 「俺達に紹介ですか?」

 「ああ自慢の娘だ」


 そう言って「入れ」と国王が言うと、一人のピンク色の綺麗なロングヘア―の少女が綺麗な佇まいで静かに入ってくる。


 「初めまして。私フレンディア国王の娘、オルカ・フレンディアと申します。この度は我が国を救ってくださりありがとうございます」

 

 俺の横にオルカが座る。

 綺麗な白いドレスに身を包んでいる。

 高価そうなアクセサリーを首からぶら下げている。

 効果が気になるな。


 「レイン様、この度は本当に助かりました。感謝しています」

 「いや、礼を言われる程の事は」

 「いえ、この国の救世主、謂わばメシアです」

 「大袈裟だ」


 オルカが俺の両手を握り、丁寧に何度も礼を重ねて言う。

 アイリスが少しばかりオルカに殺気立てていた。

 一体何故だろうか?


 「寝室に案内いたします」

 「ありがとう」


 俺達は食事の後寝室へと案内された。

 そして何故か二手に分かれる。


 「ここって姫様の寝室じゃ」

 「少しお話があります。いいですか?」


 上目づかいで見てくるオルカ。

 容姿端麗である彼女のお願いを断ることは出来なかった。

 

 「国王はお認めに」

 「はい。了承を頂いております」

 「ならいいが」


 国王の許可なしに勝手に姫様の寝室に入ったとなれば死刑もありうる。

 前もって聞いておくのがベターである。


 「ではアイリス様、ラファ様。少しばかりレイン様をお借りします。おやすみなさいませ」

 「は、はい。おやすみなさい」 

 「お休みだ。寝室にある本は読んでいいか?」

 「好きなだけ読んでくれて構いません」

 

 ラファはご機嫌な様子で用意された寝室へと入っていく。

 アイリスは少しばかり不機嫌な様子を見せながらも渋々ラファに続いて入っていく。

 そして俺はオルカと二人きりである。


 「それで俺に何の用だ? 礼ならもう要らないぞ」

 「はい。実は私は箱入り娘なのです。父に溺愛される余り外に出してもらえず」

 「そうなのか。不満なのか?」

 「はい。私もスキルを授かった身。冒険者として本当は生きていきたいんです」

 「そうか」


 王族や貴族の子供も例外なく十五歳になれば固有スキルを女神から授かる。

 そこで選択する。

 冒険者になるか、それとも家を継ぐかを。

 中には商人など冒険者以外の役職を目指す者もいる。


 「やっぱり王族なら嫁がされたりするのか? 許嫁とか」

 「はい。私は現在アルスベルグ王国の王子と婚約しています。そして後に宮殿に入り、嫁入り修行をするのです」

 「大変だな。自由が無いのか」

 「はい。ですからお願いがあります。どうか私にこれまでのレイン様の冒険のお話をお聞かせくださいませんか。せめて話だけでも聞きたいのです」

 

 やはり冒険者になるのは難しいようだ。

 せめて話だけでも聞かせよう。


 「少し長くなるぞ」

 「はい」


 俺はこの日オルカに自身の冒険譚を聞かせた。

 凄くオルカは喜んでいた。


 「何とエターナルと言うダンジョンが」

 「ああ。まだ誰も攻略していないダンジョンだ。今回の巨竜もエターナルから来ている」

 「何と不思議なお話。もっと聞かせてください」

 「ああいいぜ」


 俺は朝まで熱くオルカに語った。

 オルカは凄い驚きの表情をしていた。


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