第4話 煙管
「吸って」
部屋には真新しい煙管と煙草盆、刻み煙草が用意されていた。彼の人は吸わないと言うのに。部屋からは畳の香りがした。
彼の人に吸うと伝えたことは無かった。何処で知られたのだろうか。彼の人は見つめ返してくる。珊瑚は今日も美しい。
刻み煙草に手を伸ばし、丸め、詰め、火を灯し、吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
珊瑚はずっと輝いていた。
煙を燻らせる姿を彼の人は飽きもせずに見ていた。白い空気が二人の間で揺蕩う。
煙草の白い煙は白い壁を黒く染める。そうであるなら、自分の所為で彼女も黒く染まってしまうのだろうか。
それは、ほんの少しだけ、悪くない様な気がした。
最後に大きく吸い込み、彼の人の顔に吹きかけた。彼の人は顔を顰める。自分はなんだか楽しくて仕方が無かった。
煙草盆の縁で煙管が音をたてた。
カツン。
【暗転。】
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