第23話 勇者カズヤ=ミコシバ
カレディア王国の都市の一つ、アンデルセンにある一番大きな宿の一室で若い男性が何人かの女性と情事をしていた。
すると、何者かが男性がいる部屋の扉を叩いた。
「カズヤ様。そろそろ時間です」
『分かった。少し待っていてくれ。シモーヌ』
そう言うと部屋から女性の声が大きくなって聞こえた。
シモーヌの隣に立っていた男性が大声で叫んた。
「本当に.....このエロ勇者。いい加減にしろ!」
『分かったから。後1時間で終わったら降りるから』
「全く.....。大事な用があるからな!」
シモーヌと男性はその場を後にした。
そして、1時間後カズヤは食堂に来たのであった。
「おい。その女遊びはするなよ? 此処は別の国だからな?」
「そうよ。此処はバランとの友好国なのよ? 仲が悪くなったらカレディア産の食物がバランに入らなくなるのよ!」
『分かったって。だから、娼婦を雇っているのじゃないか?』
「本当にマジで気を付けろよ?」
『分かった。それで魔物調査の内容とは?』
食堂に集まっているメンバーは、バラン帝国認定の勇者率いるパーティ『紅蓮の剣』である。
リーダーは勇者であるカズヤ事、御子柴和哉 20歳 レベル50。
隣にいる大柄な男性は、グリッド=ホールデン 30歳 戦士レベル80。
カズヤの向いの席にすわっているのが、アイリス=メイソン 25歳 魔導士レベル80。
「お待たせしました」
「ごくろうさん。アレックスとヒルダ。どうでした? ギルドの方は?」
アイリスが二人に尋ねると
「ギルドの方からは後2組の冒険者達を手配した所です。明日には到着するかと思います」
そう答えたのが、アレックス=ギルバート 19歳 剣士レベル80。
「その冒険者の名前は一つが「天使の羽」と言う女性4人組のパーティでもう一つはシリウスと言う探索専門の冒険者ですわ」
冒険者の名前を言った女性がヒルダ=ロバーツ 22歳 神官レベル80。
この5人がバラン帝国の勇者パーティである。
カズヤ以外は全てレベル80で全員、バラン帝国の騎士団に所属している。
『ほお。女性4人パーティだって? 俺のハーレムの仲間にしようかな?』
「カズヤ様。それは無理ですよ?」
『なんでだ? 俺より弱いのだろう?』
「違います。この「天使の羽」はカレディアで三本の指に入るAランクのパーティで全員レベル80以上あります。つまり.....カズマ様より強いです!」
「そうはっきり言うな。ヒルダ。」
「まあ。このバカには良い薬になるからな?」
『さっきからバカとか言いやがって! 俺はバラン帝国の国王に召喚されたんだ。俺には魔王とか倒す能力とこの聖剣『ビクトリア』がある』
「それで、全員確認するぞ。この依頼はカレディア王国から依頼を受けて我がバラン帝国の最強であるパーティが行く事になって今に至る。今アンデルセンのギルドから言われた冒険者と組んでリオン森林の魔物が大量発生を調べる依頼で少数なら我々で討伐しろと言われている」
「それで、シリウスと言う探索専門の冒険者が魔物探知して私達が倒す訳ね?」
「その通りだ」
『それで、そのシリウスの冒険者ランクは?』
「Cランクよ?」
『マジか? そいつ真っ先に死ぬぞ?』
「そのシリウスを援護するのも依頼内容に入っている」
『それで、俺のハニー達との対面は?』
「3日後、ギルドマスターの部屋で集合する事になっている」
『それじゃあ。俺は部屋に戻るわ。部屋に女性達が待っているからな』
カズヤはそう言って食堂を後にした。
この場に残った4人は、
「ここでは、あのバカに聞こえるから場所をかえよう」
「そうですね」
「じゃあ。行きましょう」
「ギルドとこの宿の中間に酒場にて。その酒場は個室があるから大丈夫だろう」
「「「「分かった」」」」
4人は酒場へと向かって行った。
御子柴和哉は、半年前にバラン帝国の国王から異世界召喚された「地球人」である。
召喚前の職業はフリーターでマッチングアプリを使って女性との情事が趣味で、しかもめんどくさいと言ってこれっと言う戦いの経験がなかった。
バラン帝国の国王はそんな彼を召喚した事に失敗したと感じ、カレディア王国からの魔物討伐に参加させる事にしたのである。
和哉には国王の王女との結婚をダシにして、和哉に依頼を受けさせたのであった。
国王から和哉のパーティに先ほどの4人が無理やり参加させていたのだ。
そして、酒場にある個室の中で4人は相談をしていた。
「みんな。どう思う? この依頼おかしいのでないか?」
「そうよねえ....私達全員が問題ばかりおかしているメンバーばかりだわ」
「確か....グリッドは騎士団長を半殺しにして、アイリスは人体実験をして、アレックスは帝国唯一のホモで、まともなのは私だけじゃないの?」
「何言っている? お前は教会バラン支部の司教の愛人だろうが? それで教会から追い出されかけていると聞いたぞ? メルダ」
この4人はバラン帝国で色々と問題がある人ばかりだったので、国王はそんな4人と勇者を他国に追い払ったのである。
「それでどうする?」
アイリスはグリッドに今後の事について聞いた。
「取り合えず。今言った冒険者達を一緒にリオン森林に向い、魔物が多かったらある程度倒しながら勇者と冒険達を残して逃げるで良いか?」
「「「「賛成!」」」」
「その後は、これは内緒の話だが、帝国にいるある人の伝手でベルハイト帝国に行ける段取りをしたのだ」
「あの鎖国の国?」
「ああ。あそこは今は実力がある人物が欲しいとある人が言っていてな、その人から何とかベルハイトに入国出来るのか聞いたら、魔法国で一旦名前を変えて冒険者登録した後、指名依頼でベルハイトに行く計画だ」
「それは中々良い考えね?」
「だろう?」
「それじゃあ、その計画を実行するぞ」
「「「了解!」」」
こうして4人は酒を飲んだのであった。
〇〇〇〇
その頃、バラン帝国の王座には国王でるブルータス=ラインハルトが隣にいる男性と話をしていた。
「それで、勇者パーティの方はこれで良いのか? 「神速剣」のスレンダー殿」
『問題ない。多分あのリオン森林には『魔物使い』ゲドンがいるはずだ。ゲドンとあの勇者達をぶつけて様子を見た方が良い』
「そうであったか。あのゲドンがドライセンの配下なら、ミッドガル王国が魔物大量襲撃によってほぼ壊滅状態なのは分かっていたのでな」
『後、俺が聞いた話だと旧オリベスク王国の『天使』と旧レイモンド王国の『若様』がミッドガル王国壊滅前に旧ミッドベルトから脱出したと報告を受けている。場所は魔法国だと言われている。旧シルベスタ王国の『大賢者』と旧ミッドガル王国の『剣王』はドライセンの配下になった。これは間違いない。俺もその場で会ったのでな?』
「なんだと! ミッドベルト連邦の「四天王」が二つに分かれただと。そして、あのドライセンはカレディアを落とそうとしているのか?」
『それは間違いない。あそこを支配下にするとこの世界の半分の食料はあいつらの物になるからな? ラインハルト国王もカレディアを我が者にしようとしているのではないか?』
「ああ。今は同盟を結んでいるが、ドライセンがカレディアに攻め込まれてはたまらん。だから、「エデン」と言う組織を出たお主からこうして助言を聞いている」
『それより魔法国と教国の方はどうなっている?』
「魔法国はもう一組の勇者をメインにドライセンとの戦いの準備をしている最中で、教国からは、『教団聖騎士団』を魔法国に派遣すると言っているみたいだ。我が国とドライセンが同盟を結ぶかも知れないと考えているらしい」
『「エデン」が裏で情報操作している見たいだな。はっきり言って「エデン」の「七つの大罪」と「死天王」には俺は瞬殺させるからな....。だから、あいつらに対抗できる人材を探しているのだ』
「そうであったか。カレディア国王は慎重でしかも戦略に特化している男だ。カレディアを落とされるとなるとこの世界は『エデン』に支配される可能性がある。其処でスレンダー殿にお願いがある」
『言って見ろ、国王』
「魔法国と教国を我が帝国との同盟を結びたいのだ。カレディアを支配下した後に。その為に両方の国に情報を集めて欲しいのだ」
『分かった。それではこれで失礼する』
スレンダーは謁見室を出たのであった。
ブルータスは心の中で呟いた。
(あの男を利用してカレディア、魔法国、教国を我が支配下にしてからドライセンを倒し、そして私が全世界の王になるのだ! あははははは!)
(あの国王は欲だけは一番だな.....俺が生き残る為にはこいつを利用して戦争を起こすのが一番と考えた。だから、もしも「エデン」が生き残ったら俺の功績で地位をもらえるはずだ。あははははは)
謁見室を出たスレンダーは心の中で笑っていた。
だがスレンダーは知らなかった......あの男がカレディアを救うとは思ってもいなかったのである。
~作者より~
次回の更新は金曜日の予定です。
お楽しみ下さい。
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