第17話 王都壊滅(前編)

レイナがハミルトンを出て一週間経過した頃、ロベルト=ガイアス侯爵は今王都にある自宅で妻のヘンリエッタと娘のアンリエッタと食事をしている最中であった。


『貴方。アンジェとメルビン国王との結婚は何時になりますのかしら?』


「後3日後にアルベルトとレイナ嬢の結婚がある。それが終わってメルビン国王が正式に即位した後でアンジェとの結婚式をする予定だ」


『私、遂に王妃になるのですね?』


「そうだとも、アンジェ」


『おめでとう、アンジェ。私にも洋服とか宝石を下さいね?』


『分かっていますわお母様。私は他国の服と宝石が欲しいので国王からおねだりをすしますので』


「あまり、国王からおねだりをして欲しくないのだが。」


『それなら、国民からもっと税率を上げたら良いのではありませんか? このミッドガル国民は私達の資金源なのですから』


「あのなあ......まあ良いか。まだ上げようと考えているので問題ないだろう」


このバカ家族はそう言いながら楽しく食事をしていた。

この家族と言うよりこの国の貴族はハミルトン以外は腐っている。

国民を自分達の奴隷のように次々と重い税を課して、払いきれない国民はロベルトの息が掛かっている商人からお金を借りていた。

その商人も借りた国民に対して普通では考えられない利息を付けてお金を貸し、返済できなくなると借金奴隷として働くように仕向ける。

返されない国民の中には若い女性がいた場合は貴族達の性奴隷として身体を指し出していたのであった。

するとヘンリエッタは一つの水晶を取り出して


『これ、いつ見ても綺麗だわ』


「ヘンリ。その水晶は?」


『最近、私達の間に流行っている水晶ですわ。幸運を呼ぶ水晶ですって』


『お母様。その水晶。国王様の所にもありましたわ。何でも商人が国王即位のお祝いに献上したと言っていましたわ』


『そうだったのですね』

ヘンリエッタが水晶に触ろうとした時、水晶が輝いて消えてしまった。


『なんですの? 水晶が消えたわ』


『お母様。献上した商人から聞いた所では『水晶が消えるとその場所に幸運が呼びんで来る』って言っていましたわ』


『そうだったのですね。それじゃあ、私達は永遠に幸運の女神の加護があるって事ですわ。おほほほほ』


『そうですよ。お母様』


「私は城に行ってくる。後は頼むぞ?」


『分かりました。ロベルト』


『いってらっしゃい。お父様』


ロベルトは城に向って行った。

城に到着したロベルトは城の中が騒いでいるのを見て護衛騎士に話を聞いた。


「おい。どうしたのか?」


『これはガイアス侯爵様。実は.....王都に魔物が出たと報告が来ていましてどうしたら良いか騎士団長に指示をいただこうと思っている所です』


「なんだと。数はどれぐらいなのか?」


『まだ。詳しい内容は分かりません』


「直ぐに調査だ。そして、報告は謁見室だ。私は国王に話をしてくる」


『分かりました』

ロベルトは国王が謁見室にいると聞き、すぐに謁見室に向った。

謁見室にはメルビン国王と騎士団長が対策の話をしていた。


「国王陛下!」


『おお。ガイアス侯爵。待っていたぞ。』


「聞くところによると魔物が王都に出た報告を受けましたが?」


『さっき、騎士団長に指示をして、王国騎士団1000名を派遣した所だ』


「そうでありましたか? それで騎士団長。魔物の数はどれ位いたのか?」


『およそ1000体ぐらいと言う報告が出ています』


「それなら、城にいる近衛騎士団は城の警備を厳重に。残りの騎士団すべて王都周辺の警備だ」


『分かりました。近衛騎士団約1000名は城の警備と残りの騎士団約5000名は王都の警備に行かせます』

騎士団長は謁見室を出た。


『ガイアス侯爵。大丈夫であろうな?』


「我が騎士団は最強でありますぞ? しかし、国王。ベルン王国がシルベスタを支配下にさせた見たいですぞ? どうされますか?」


『当初のガイアス侯爵の言う通りにベルンとの同盟を結ぼうと考えておる。残りの国を我がミッドガルとベルンで支配したら、その後はベルンを倒して私がこの連邦の正式な王になって見せる!』


「すばらしいです」


『そうだろ。あははははは!』

メルビン国王が笑っていると謁見室に騎士が慌てて入ってきた。


『国王! ご報告です!』


『なんじゃあ。言ってみろ』


『はい。ミッドガル王国全域の主要都市から魔物討伐の依頼が来ています』


『ほっとけ。領主らに任せろ』


『それが....魔物の数が多くて兵士の数が少ないと言われています.....』


『それで、魔物の数は?』


『各都市に襲っている魔物の数は.....約3万ほどです.....』


『いけるだろう。その程度なら』


『違います。街一つに対して約3万です。』


『なんだと!』


『それと王都に出ている魔物の数がわかりました....数は約10万』

報告した騎士からの話を聞いたメルビン国王とロベルトは青ざめていた。


「約10万だと?」


『今、総出で対処している最中です』


「王都にいる冒険者全員に通達しろ! 魔物討伐依頼だ! 魔物1体を倒したら金貨1枚の報酬をやるって冒険者ギルドに指示をだぜ!」


『了解しました』

報告して来た騎士は謁見室を出た。


『おい。ガイアス侯爵。我が国ではそんな資金は.....』


「ありますぞ。国民に税率を上げたら問題ありません」


『それなら良いのだが』


すると、ロベルトが持っていた通信魔道具から、息子のアルベルトから連絡が入って来た。


『父上!』


「どうした? アルベルト」


『父上! ベレスタがオーガの大群に襲われています! その数約3万! お願いがあります! ベレスタに応援をお願いします!』


「アルベルト! それぐらい、お前の私兵で何とかしろ! こっちはオーガ約10万が王都に入って来て王国騎士団5000名が今戦っている最中だ!」

そう言ってロベルトは通信を切ったのであった。


『どうした。ガイアス侯爵』


「息子から応援依頼ですが、ここの防衛しないと行けないので自分でなんとかしろって言った所です」


『そう言う事か......大丈夫だろうな?』


「大丈夫ですぞ?」


ロベルトが答えると何処からともなく声が聴こえて来た。


『何処か大丈夫だって? 笑わせるじゃないか?』


「何者か!」


『まあ。待て。直ぐに出てやる』


二人の前に3人の人物が出て来た。


「お前は何者?」


中央にいる人物がメルビンとロベルトに答える。


『初めまして。メルビン国王と宰相のガイアス侯爵。私はベルン王国の国王ドライセンと申します』


「貴方がベルン王国の国王でございましたか? 今、私達は魔物に襲撃されている最中で忙しいのですいません」


『いいえ。気にしていません。魔物の襲撃は私の指示でしていますので』


「「!」」


『驚くも無理もありません。私は本日、此処に来ましたのは』


「早く言って見て欲しいのですが?」


『貴方達のミッドガル王国は本日、私達ベルンによって壊滅されていただきます』


ドライセンは笑いながらロベルトとメルビンに答えたのであった。


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