ワイルド・ウルフ～真・魔銃士物語～

第5話 セシル６歳(前編)

セシル＝ガイアスは６歳になった。

ある日、ガイアス家に一組の家族が訪問して来たのである。

ロベルトとマリアンヌはその家族を出迎えた。

「ようこそ。ハミルトン侯爵様。それとメルダ様」

「お久しぶりです。ガイア子爵」

その家族とは、このベルスタから北にある王国でも一二を争う都市ハミルトンの領主ダグラス＝ハミルトン侯爵一家である。

ダグラス＝ハミルトンは３０代半ばで筋肉質で中々のイケメン男性である。

正義感があり領民にも慕われる領主であった。

そして、隣にいるのはその妻のメルダ＝ガイアスで２０代半ばでマリアンヌの幼馴染で少し小太りだがマリアンヌとの関係は良好といえる。

「お久しぶりです。ダグラス様、それとメルダ。」

「マリー。本当に久しぶりだわ。隣にいるのがセシルちゃんなのね？」

「そうよ？　セシル挨拶しなさい」

「はい。母上。僕はセシル＝ガイアスと言います。ダグラス様、そしてメルダ様」

「まあ。礼儀正しいわ。私の娘よりしっかりしているわ」

『お母様。私はそこのセシルさんと一緒だよ？』

「そうだったわね？　貴方も挨拶しなさい。レイナ」

「もう.....分かりました。私はレイナ＝ハミルトンです。ロベルト様とマリアンヌ様。そして、セシル様」

「レイナ様。よろしくお願いします」

各自の挨拶が済んでマリアンヌはメルダに話をした。

「そのレイナさんのお歳はいくつなの？」

『丁度、今月で６歳になった所ですわ。それでセシル君はいくつなの？』

「６歳になったわ。」

「セシル様。私と同じ歳なんだあ？」

「そうになりますね」

そして、ダグラスがロベルト達に話をした。

「おい。ロベルトよ？　来週の領主会議に行く件に相談でもしようか？」

「そうだな。セシルよ。私達の会議している間、レイナ嬢のお相手をしれくれ」

「はい。父上」

「それなら、セシル様の部屋に行こう。連れて行って」

レイナはセシルの手を握ってセシルの部屋に行くのであった。

〇〇〇〇

セシルとレイナがセシルの部屋に行った頃、

ロベルトとダグラス、そして、マリアンヌとメルダは執務室に入って、来週の領主会議の話をしていた。

「ハミルトン侯爵様、今回の領主会議はどの様な案件になるのですか？」

ロベルトはダグラスに問いかけるとダグラスは淡々と答える。

「今回の領主会議には我がミッドガル国王であるアーノルド殿下も出席する」

「なんですって。アーノルド殿下が？」

「ああ。何でも此処までの功績で爵位があがる人物を発表するようだ。候補には３人の人物が上がっていてな......その中にお前の妻、マリアンヌさんが候補に挙がっている」

「何で私なのですか？」

「マリアンヌさんの改革が殿下の目に留まった見たいのだ。それともう一つ、爵位が下がる人物も同時に発表するみたいだ。此れは聞いた話だがガイアス子爵の名前が挙がっている見たいなのだ」

「私ですか？　ハミルトン侯爵様」

「ああ。お前はここ数年、妻のマリアンヌに仕事をさせて自分はのんびりと楽な暮らしをしているのではないか？」

「違います！　私が妻に指示したのです！」

「そうだと良いのだが？」

「どういう意味ですか？」

「ガイアス子爵.....まあいいか。でも気を付けろよ？」

「はい.....それよりもレイナ様との私の息子の婚約話はどうなっています？」

「セシル君の事かね？」

「違います。私と第二夫人との間に出来た子供、アルベルトですよ？」

実は、ガイアスは幼馴染であった商人の娘ヘンリエッタと結婚して既に子供を２人いるのであった。

１人はアルベルトで歳は１０歳でガイアス自身で剣を教えてる。

もう一人はアンリエッタで歳はセシルより３つ年上の９歳で魔法特性がある。

二人供、ロベルトの別宅にてロベルトと一緒に暮らしていた。

ロベルトはガイアス家の家督をアルベルトにしようと考えていたのであった。

「それは考えている最中だ。今週の領主会議が終わったら結論を出そう。今回の領主会議にはガイアス子爵とマリアンヌが王都に来るように指示が出ている」

「分かりました.......」

ロベルトは黙り込んでいた。

「そろそろレイナを迎えに行かないとな。私はこれで失礼をする」

ハミルトン伯爵は執務室から出て行った。

○○〇

執務室での会談している間、セシルとレイナの２人はセシルの部屋で色々な話をしていた。

レイナの話は主にレイナが住んでいる街について話なのだが、この屋敷から出られないセシルには一番必要なこの国での情報であった為、レイナに質問攻めをしていたのであった。

「本当に....セシル君って私の街の話ばっかり聞くのね？」

「すいません。新鮮な話だったのでつい聞いてしまいました....」

「実は、此処だけの話、私、此処の男性と結婚するって聞かされたわ」

「そうなのですか？」

「ええ。でも貴方じゃなくて、もう一人の男性.....あの子嫌い！」

レイナはアルベルトの事が嫌いであった。

その事にセシルは初めて知った.......自分には兄と姉がいるって事に。

(母さんは、兄と姉と言われる人達に俺を会わせる事はしないと思っていたが.....。なるほど父上の思惑が分かった気がする。)

そして、レイナはセシルに話すのであった。

「私ね。今お父様に剣術を教えてもらっているの。来年から王都にある騎士学校に行くの。理由は結婚したくないから。政略結婚は嫌だもん。私は好きな人と結婚をしたいだけ」

「そうでしたか。ならば僕はレイナ様を応援しますよ？」

「本当？」

「はい」

「ありがとう！　セシル君！」

レイナはセシルに抱き着いた。

(おいおい.....。)

照れるセシルであった。

すると、ハミルトン侯爵がセシルの部屋に入って来て

「レイナ。もう時間だから帰るぞ」

「はあい。またねセシル君」

「はい。」

ハミルトン侯爵とレイナはセシルの部屋から出ていったのであった。

ガイアス家を出たハミルトン侯爵とレイナは馬車の中で話していた。

「レイナ。セシル君はどうかな？」

「うん。話すと優しい人だよ。あのナルシストとは違うわ」

「そうか。なら此処だけの話をするから聞いてくれないか？」

「なあに？」

「来週の領主会議でガイアス家は分離する。第一夫人のマリアンヌを侯爵の位にされてセシルがその跡継ぎになる。そこでレイナはそのセシル君との結婚を考えている。どうかな？」

「私はセシル君の奥さんになるわ。その為にお父様、騎士学校に入って良い？」

「ああ。良いよ。その方がレイナの為になるからな？」

「わあい」

レイナの笑顔を見てハミルトン侯爵は思った。

(あの無能な子爵の息子の嫁にはさせない。絶対に食い止める！　そして、マリアンヌの子である我が親友の子をレイナの夫にしないとな！)

ハミルトン伯爵は心にそう誓ったのだった。

○○〇

ハミルトン侯爵との会談が終わった夜、ロベルトは別宅で第二夫人のヘンリエッタとの会話をしていた。

『そうするのよ？　貴方』

「行くしかないだろう。俺の爵位を何とかしないとな...。」

『なら、良い方法があるわ』

「その良い方法とは？」

『あのマリアンヌを殺すのよ？　私に惚れていた男達に犯されて殺されるの』

「ばれたら、俺達は.....」

『だからバレないようにすれば良いのよ？　来週の領主会議が始まる前の日にあの女の宿を襲撃するのよ？　強盗と見せかけて殺してね....』

「お前は本当に恐ろしい奴だな？　あのセシルはどうしようか？」

『あの女が殺した後、あの子の周りにいる人を全て取り払って一人で森に向かわせるのよ？』

「その森って？　あの森なのか？」

『ええ。９歳までは此処に住まわせて９歳の洗礼に仕掛けをして無能として別宅としてあの森に引っ越しさせるのよ？　そうすればあの子は野垂れ死にするから』

「それでハミルトン侯爵の一人娘を嫁にされるのだな？」

『その通り』

「分かった。その計画を進めてくれ」

『分かったわ』

そうしてロベルトとヘンリエッタは抱き合ってベットに入るのであった。