そして意識が現実に戻った・・・。



死神が持つ大きな鎌が振り落とされるその時


「思い出したわ・・・」




死神が鎌を振るのを止め私を見つめる。




「思い出したんだ」





「ええ。さぁ約束を果たしましょうか」




「お姉ちゃんなんで抵抗しないの?前世の自分のせいでお姉ちゃんが死んじゃうのよ?」



なぜ死神はこんなに悲しい顔をしているのかしら?




今にも泣き出しそうな顔で私に問いかける。





「思い出したと言ったでしょう?アリシアだった時私は、死神のあなたに助けられた。その後の人生はとても幸せだったの。だから、それだけでじゅうぶんなの。もう死ぬ覚悟はできてるわ」





「もうなんでお姉ちゃんはそうなのよ・・・生まれ変わっても本質は変わらないのね・・・」





「本質?」






「うん。お姉ちゃんはやっぱりアリシアの生まれ変わりだって言うことよ」




「ふふっそうなのかも知れないわね」





「アリス・・・自分が今から死ぬってこと本当に理解してる?」





「ええ当たり前でしょう。さぁ早く・・・なるべく一瞬で逝けるようにお願いしたいわ」




「・・・やーめた!!」





「は?なにを?」





「だからアリスの魂を奪うことを止めるって言ってるの!」




「なんで?願いを叶えるには代償がいるのでしょう?代償のために願いを叶えてくれたんじゃないの?」





「うん。それが当たり前だけどアリスとアリシアは別・・・なんでか分からないけど私にはアリスの命を奪えないと思う・・・」





「なぜ?あなたは死神でしょう?」





「うん・・・。だから困ってるの。私はアリスに生きててほしいと思ってしまった・・・死神失格よ」





「代償がないと、あなたはどうなるの?」




「心配しないでアリス。死ぬことは無いからって言うか、死神だからもう死んでるけど・・・消滅させられるまでのことにはならないから大丈夫よ。死神の私を心配するなんてアリスくらいよ・・・」





「心配して当然よ。あなたの本当の名前教えてくれる?」




「死神に名前を聞く人間も初めてよ・・・。私の名前はキャサリー。9歳の時に事故にあって死んだから、この姿なの」




「キャサリーね。良い名前だわ。キャサリーにとてもよく似合ってる」




「アリスありがとう」と煌めく笑顔でキャサリーが言った。





「でも本当にいいの?私生きてて・・・」





「いいのよ。私がそう決めたの!今の生も幸せになってよアリス」





「キャサリー・・・ありがとう」




覚悟は決めたつもりだったけど実は怖かった。

死ぬのに怖いって思わない人はいないよね?


死ななくて良いのだと思うと涙がいっぱい溢れてきた・・・。





「ほらアリス泣かないの・・・。実は私、もうすぐ試練が終わるんだ」





「試練って?」





「死神の試験を全部クリアしたら、また人間として生まれることができるの」




「そうなの?キャサリーよかったね♪」





「で、生まれるところも私が決めていいんだって・・・だから私アリスの子供として生まれてくるから待っててね♪」





「え?キャサリー私の子供になってくれるの?」





「嫌じゃないの?私死神なのに?」






「嫌なわけないじゃないの!それにあなたは死神じゃなくてキャサリーでしょ」




そう言うとキャサリーは本当の子供のように泣き始めた・・・。





「ありがとうアリス・・・。今度は私のママになって・・・名前はアンジェラでお願いね!じゃあ次会うときは家族だから、よろしくねママ・・・」




そう言って最高の笑顔で私に手を振り、キャサリーは消えて行った・・・。




キャサリー・・・いえアンジェラあなたを待っているわね。





そして3年後・・・。




「すごく可愛い女の子だよ。アリス俺の子供を生んでくれてありがとう」と私の最愛の夫が子供を抱きながら私に言った。



「ええ。本当に可愛いわ。私の宝物よ」



1年前に彼と結婚をし、今日新しい命が生まれた・・・。




そして私は生まれたその子をアンジェラと名付けた・・・。





「アンジェラおかえりなさい。やっと会えたわね。ママよ♪一緒に幸せになりましょうねアンジェラ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たった一つの少女の探しもの 桜川椿 @SAKURAGAWA_TSUBAKI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ