深夜に
も。
深夜
コンビニ前の喫煙所で煙草を吸っている。
心の中から外側へと身体はどんどんと冷え、十月の寒さに肌が驚いた。思わずゴシゴシと腕をさする。
「いつも感謝してます」
友人からのメッセージで携帯が光った。
昨日数年ぶりに連絡した返事が今日まで少しずつ続き、元気そうで良かったと私が言うと彼は感謝を示してきた。
「優しいですね。元から知ってましたけど。」
温かい気持ちに包まれながらすぐにそう返事をする。
急ぐ用事もないのにいちご牛乳に刺さったストローを勢いよく吸い込む。
ゴロゴロ果肉入りという謳い文句に魅力を感じて買ったけれど、普段と何一つ変わらないまっさらないちご牛乳だった。
一度ゴミを捨てに店内へ戻った後、家とは反対の道を歩き出した。
ゆっくりとただ一つの目的地を目指して歩く。
一足先に命を終えた落ち葉、誰もいないのを良いことに高速で車を飛ばす若者、犬の散歩をするスーツ姿の男性。その全てが一瞬で過ぎ去っていく。
何を考えても、何を見ても私は誰にも影響しない。私がどこへ向かい、何をするかも誰も知らない。
その瞬間が淋しくも楽である。
「私はクズですよ」
携帯の画面に映し出されたそのネガティブな文字に私は驚かなかった。
その人らしさがポタポタと溢れて、あぁ変わってないなとどこまでも嬉しくなる。
言いたい事を考えている内に暫く歩き続け、目の前に12階建てマンションが見えた時に足を止めた。
「誰が何を言おうと貴方は優しいですよ。」
変に気を遣った言葉も綺麗に磨いた言葉も何か違う気がして、素直にそう返した。一度考え始めると埒があかないからもう良い。
人と一緒にいると緊張して段々と胃が痛くなって気持ちが悪くなる。この状態になったのはいつからだろうと考え込む程に長い時間が経った。上手くいかない事が普通だと思えば心は軽くなったけれど、空高く飛んだ風船も空気が抜けていずれ地面に落ちる。
死んだら楽しいこと出来なくなるよって皆言うけど、楽しい事なんて来ようが来まいがもうどうだって良い。
マンションの階段を一段ずつ上がっていく。
屋上に鍵がかかっていない事は前から知っていた。
深夜に も。 @hinm__
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