10話 神に好かれた相棒
____俺はシグがいなくなってしまったことにものすごくショックを受けていた。
俺、シグがいないとこんなに寂しい気持ちになるのか。
そういえば、この世界に来てからというもの、俺に初めて寄り添ってくれたのはシグだった……
俺はクラス内でもずっと孤独だったから、友達と呼べる友達がいなかった。だが、異世界に転生してからシグと出会った。
せっかく仲良くなれたのに神隠し……?シグともう会えないなんて、そんなの……
俺…………
涙がじんわりと滲み、視界が潤んでくる。
心が重くなってきた。
「レイ様、そんなに落ち込まないでください。魔王城の神隠しとはいえ、最長1週間で戻ってきますから」
「この神隠しってのは、魔王城の地下に住み着くトロールがやってる、選ばれた者だけが参加出来る歓迎会的なもんだから……安心しなよ。ま、ちょっくら過激な歓迎会ってとこだ」
と、アルバさんと青髪のヘッドホンをつけた人が俺を慰めながら言った。
え、1週間で戻ってくるの?
「なんだぁ……もうシグ、一生帰ってこないのかと思った……ひっく……」
安心したのか、感情が溢れてしまった。俺は若干涙目になりながらアルバさんの服の裾を掴む。
あれ、俺なんでこんなに涙腺が緩いんだ……?10歳だからか……?
俺は疑問を抱きながらも、恐る恐るアルバさんに泣きついてみた。
こんな風に誰かに甘えるのは、ものすごく久しぶりだ。
「っ、だ、大丈夫ですよ!シグ様が帰ってくるまで、私たちが責任を持って側にいますから。」
「待って、可愛い……可愛すぎます……私に養わせてください!!」
アルバさんは慌てふためきながら、しばらく考え込む仕草を見せた。そして、シグっぽい紫のドラゴン型ぬいぐるみを魔法で作って、俺にくれた。
その後、俺の頭を撫でるか撫でないか迷っているようで、アルバさんの手が右往左往していた。実は彼、不器用な人なのかもしれない。
「アルバさん、ありがとう」
「はい……」
俺がお礼を言うと、目を泳がせるアルバさん。仮面の隙間から頬が赤いのが見える。
「えー!?レイ様に対してすっごいデレデレやん!あははっ、こんな顔のアルバはレアやなぁ」
「う、うるさいですよ!!」
アルバさんはカグラさんのことをビシビシと数回パンチしている。
が、カグラさんはそれをひょいとかわすだけだ。
この2人、仲がいいなあ…
俺も早くシグと再会したい。
シグもどきのぬいぐるみをぎゅ、と抱き抱えてみると、シグのふわふわな毛並みが再現されていて余計に俺の涙を誘った。
ラルムさんに関しては、魔界の通貨っぽい札束を山盛り持ってきた。
そして、「養います!!!」の一言。
もちろんさすがに申し訳ないので、札束を貰うのは断った。
一体どこから札束を……!?
というか、ここにいる人達はどうやってお金を稼いでるんだ……?
なんて考えていると、
「レイ様……一応……これ、しんどい時に飲め。体力が回復するし、心のモヤモヤした気持ちも楽になる」
ヘッドホンをつけていて、青髪、青と黄色のオッドアイにパーカーを着たラフな格好の人が話しかけてくれた。
そして、そっと瓶を俺に手渡す。
……なにやら凄そうなものを貰った。瓶に入った液体……液体の色は、虹色だ。
「ま、いわゆる上級ポーションってやつだ」
上級ポーション!?ゲームでよく聞くやつだ。実物は虹色なんだなぁ、綺麗だ。俺は瓶をじっと眺めながらお礼を言った。
「ありがとう!あなたの、お名前は?」
「俺はパトリック。大体はリッキーって呼ばれてる。好きな呼び方でいいよ、レイ様」
「リッキー!よろしくね!」
「あぁ。」
微笑んだリッキーは、魔王城のソファに腰掛けると、ゆっくりと寝息を立て始めた。
寝るのはや!!
俺がびっくりして目をぱちくりしていると、
「ってことで、レイ様。
シグ様が戻ってくるまで、ワイと一緒に修行しに行こうや!きっと楽しいで〜!いざゆかん!スライムの森!」
カグラさんが俺の手を握り、キラキラと目を輝かせてこちらを見ている。
修行が好きなのかな、カグラさん。
「いや、先にお部屋にご案内するのが先でしょう」
そんなカグラさんを止めたのはアルバさんだった。ケロちゃんと戦って疲れてらっしゃるんですよ!今日はダメです、と彼は言う。
たしかに、たくさんの出来事がありすぎて……ものすごく疲れている。
「レイ様!ならば私と一緒にお風呂に入りませんか!?」
そんな2人を押しのけて、お風呂セットを持参してきたラルムさん。
いやいやいやいや、ダメだろそれは。中身は健全な男子高校生なんです。鼻血出してぶっ倒れるのでやめてください。
……あーこの空間、キャラが濃すぎる……
俺、空気になりたい。
転生したらレベル1の魔王でした。〜世界を破滅に導く相棒のドラゴンと一緒に異世界征服〜 ふかひれ @fukajiro1357
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