第9話『天下布部』
鳴かぬなら 信長転生記
9『天下布部』
アハハハハハハハ
うっけるぅ!
それって、あんたのキャッチコピーじゃん!
てか、ヘ-キなわけ? そんな部活に入ってさ!?
アーハハハハ アハハハハ お腹よじれるウウウウウ……
天下布部に入部したと言った直後の市は腹を抱えて笑う。
ツボにはまったのだろうが、こんなに腹を抱え、大口開けて笑う市をみるのは初めてだ。
こいつのノドチンコを見るのは初めてだ。
美人の誉れ高い女だが、ノドチンコは平凡だ。
美人であることの自覚はあるんだろうが、ノドチンコの平凡さは気が付いていないだろう。
急いでスマホを出して、写真に撮る。
パシャ
「ちょ、なにとってんのよ!」
「まあ、見てみろ」
「ノ、ノドチンコのアップ(#'∀'#)!?」
「左右対称というだけの詰まらんノドチンコだ」
「あ、あたりまえでしょ! こんなの普通でいいのよ、普通で!」
「サルのノドチンコはおもしろいぞ。笑いに比例して、喉もノドチンコも振動する。振動するだけではなく、縮んだり膨らんだり、時には左右に振れて、喉の内壁を打って、えも言えん倍音になる。サルの明るさの秘密は、こういうところにも表れるんだ」
「そんなことはどーでもいいのよ! 天下布武をパクられて、なんにも言えない信長ってゆーのが、メッチャ情けないんですけど!?」
「字が違う。天下布部と書くのだ」
スマホに文字を出してやる。
「え? 武が部になってんの?」
「天下布武は天下に武を布く。この信長の武力によって天下に平和をもたらすという俺の意気込みを現すものだ。しかし、こちらのは部分の『部』だ」
「どういうこと? 言葉遊びにパロってるだけに見えるんですけど」
「部分を布くということだ」
「部分?」
「個性と云うことだ。この世界では、自分の個性を伸ばすことが一番ということを現している。信玄、謙信のいずれかは分からんが、うまいことを言う」
「そ、そーなんだ」
負けと思ったのか、興味を失ったのか、市はミシンを持ち出してリビングのテーブルに据える。
「何を始めるんだ?」
「スカート短くすんの」
「一日穿いただけだろ」
「だって、みんな短くしてんだもん」
「みんながやってるからというのは、志が低すぎないか」
「いいじゃん、元々、あたしは美脚なんだから、見せていいなら、見せなきゃ損っしょ」
「ほう……」
「な、なによ」
「いや、なんでもない」
「ふん」
ジョキジョキ
惜しげもなく、スカートの裾を切り落とすと、ガガガーーとミシンをかけ始めた
プツン
「どうした、頭の線が切れたか」
「糸が切れたのよ……よし」
ガガガ ガガガ……プツン
「また切れた!」
ガガガ ガガガ……プツン
「ま、また」
ガガガ ガガガ……プツン
「ま、また……!!」
「糸のかけ方が間違っている」
「え、そうなの?」
「ここと、こことが逆だ」
「え、違いが分からないんですけど」
「どけ、オレがやってやる」
ガガガガガガガガガガガガ
「ほら、できた。あとは、きれいに折ってまつり縫いしておけ」
「あ、ありがと」
「フン」
「フンって言わなくていいでしょ、フンて」
「市」
「なによ!?」
「おまえの美しさは脚だけではない」
「そ、そう?」
「ああ、胸の形もいいし、尻の姿もいい」
「あ、まあ、それなりにね」
「だったら、それも見えるようにしてはどうだ?」
ボキ!
こんどは、針を折ってしまった。
下手に妹をおちょくるものではない。
日付が変わるまでかかって、手縫いでまつり縫いをする羽目になってしまったぞ。
庭で熱田大神の笑う声がした。
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で打ち取られて転生してきた
熱田大神 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
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