未完全な一周、すなわち

暖春、落つ

 なぜか いやによく眠れた

 鬱屈なんて晒されて 残り香なんてとうに消えて


 なにか足りない なにか

 陽光に晒されて 夢も一緒に 全部浮いていく


 夕景 褪せたあの人 声

 耳朶をうって 思い出させた


 沈んでいく 沈んでいく


 つかんでも なにもできやしない

 ふり払われて それでおしまい


 瞼は閉じて なにかは ふわりとすり抜けて

 いつもの世界が 急に凍えた


 なにも なくなってた

 どこにいったんだ なんて

 ねえ

 なにも聞こえないよ


 あの日みたいに 夏がかすめて

 匂いだけ 残していった

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詩集「不定形の心理予告」 なごみ @Faran_Farron

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