マーアーラゴ殺人事件(に関する諸々)

鳥取の人

マーアーラゴ殺人事件(に関する諸々)

『マーアーラゴ殺人事件 』

バラク・オバマ

鳥取砂子 訳


あらすじ


大富豪トランプ氏の別荘〈マーアーラゴ〉館のパーティに集まったかつての同僚たち。しかし翌朝、館の主人は惨殺死体となって発見される。「費用はメキシコに払わせろ」という謎のメッセージを残して……。主の死を巡って不可解な陰謀論が飛び交う中、私立探偵バイデンが捜査に乗り出す。

全米で話題沸騰、〈名探偵バイデン〉シリーズ、記念すべき第1作!




帯より


『こんなミステリも読みたい!』海外部門第1位!

スターズ・アンド・クライムズ大賞受賞!




各紙から寄せられた絶賛の声


深い現代性と推理小説黄金時代の趣を併せ持った大傑作! バラク・オバマは21世紀のアガサ・クリスティと呼ぶに相応しい。

(ニューアムステルダム・タイムズ紙)


巧妙に張り巡らされた伏線、手に汗握るサスペンス、ラストの鮮やかな解決————。この小説には私たちがミステリに望むものすべてが詰まっている。

(シックス・フラッグス紙)


賢明なミステリファンは出勤前にこの本を読んではならない。

————ページを繰る手を止められなくなってしまう。

(ゲティスバーグ・トリビューン紙)




著者より(日本語訳に寄せて)


本作の日本語版刊行にあたり、まずは日本語版を出版してくださる皆さんに感謝したい。特に本作を翻訳してくださった鳥取氏にあらためて感謝申し上げる。

日本の推理小説ファンはとても洗練されていると聞いており、そのような方々に私の作品を読んでいただけることを大変嬉しく思う。

本作の探偵ジョー・バイデンと助手カマラ・ハリスが日本の読者に長く愛されることを願っている。




オバマ氏略歴


1961年生、小説家・脚本家。主な著書に『Yes, We Can』、『Change, Hope, and Promise』(いずれも未邦訳)があるほか、人気テレビドラマ『ビルとモニカとヒラリー〜世界一キケンな三角関係〜』の脚本を手掛ける。




書評


大邸宅、怪しげな容疑者たち、個性豊かな名探偵。まさに推理小説黄金時代の輝きを現代に蘇らせた傑作である。

大富豪トランプ氏に招待され、昔の仕事仲間がフロリダの別荘〈マーアーラゴ〉に集まった。しかし彼らは円満というわけではなく、かつて対立の末にトランプ氏の元を離れていった者も多かった。パーティが始まってしばらく、客たちは内心のわだかまりを隠していたが、トランプ氏のある発言がきっかけとなり騒動が持ち上がる。その翌日、なかなか起きてこないトランプ氏の様子を見に行った一同は、無惨に殺害されたトランプ氏を発見する。容疑者となった客たちの数人と知り合いだったことから、私立探偵ジョー・バイデンが事件の捜査に乗り出す。

————これが大筋である。

本作には、様々な事情を抱えた人々が登場する。早々にトランプ氏の元を離れたヘイリー。暴露本を書いたボルトン。トランプ氏と喧嘩別れしたバノン、マティス。最後まで共に仕事をしたペンス、ポンペイオ。トランプ氏に対して苦々しい思いを抱いていたライアン。一貫して批判的だったロムニー。怪しげな客たちの証言によって事件の様相が二転三転する、息もつかせぬ展開。被害者の恋人ジョンウンや友人シンゾーの不可解な言動もまた謎を深めてゆく。見事である。

そしてこの作品、重厚な本格ミステリでありながら、随所に光る快活なユーモアも楽しい。バイデンと助手ハリスの軽妙な掛け合いはつい笑ってしまう。お調子者ブリンケン警部も忘れてはならない(若かりし頃のバイデンを食い逃げで逮捕したこともある)。

ネタバレになるので真相について詳しくは述べられないが(ともかくまずは読んでほしい!)、ダイイングメッセージの意味が明かされる際の衝撃は特に凄まじい。すべてを知った上で再読すると、かなり序盤で大胆な伏線が仕掛けられていることに驚く。

とてつもなく研ぎ澄まされた名作。この小説は間違いなくミステリの歴史に残るだろう。

(因幡 一郎)《デモクラット図書 2021年6月号より》


たしかに面白いが、私個人の意見としては、過大評価されている面があるのではと思ってしまう。

魅力的な謎の提示、中盤のサスペンス、鮮やかな解決。どれも見事ではある。しかしながら、過去の名作の(あまり捻りのない)二番煎じも多く見受けられる。「弾丸(bullet)が盗まれた」を「票(ballot)が盗まれた」と聞き違える部分はクイーンから取ったものではないか。モルモン教徒の客が出されたコーヒーを飲まなかったという情報で読者を誤誘導するあたり、クリスティからの借用と思われるし、アリバイトリックはチェスタトン、ダイイングメッセージはカーの模倣であろう。ここ数年の古典オマージュ作品で言えば、『教科書倉庫ビルの謎』や『ディープ・スロートは彼女なのか?』などのほうが完成度が高い。全体の構成にも特に目新しいものは無い。

良作といえば良作だが、古典作品に現代的な色彩を添えてリニューアルしたようなもので、この作品を絶賛する風潮は行き過ぎな感がある、というのが正直な感想である。

(伯耆 二郎)《リパブリカン文芸 2021年7月号より》


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