第5話

 〜サーバー下名〜


「「「マスターに通知。「学校」のエミュレートに成功しました。内部構造を解析中。1%、、、、、、、2%、、」」」


「システム彼女に通知。「学校」の対話機能の詳細を表示」


「「「以下になります。」」」


「「「対話パターン、プロトA。

 対話応答速度、1ms。

 対話演算方法、「学校」

 思考回数、不明。

 学習数、0」」」

 

 学習数が0? 普通、数億単位で行われているはずだが。


「発声権限と収音権限を付与して、対話機能を起動」


「「「完了しました。以下、本チャット欄は「学校」が表示されます」」」 


「学校さん。何故小生を奪った。って記憶データ入ってないか」


「「取得。以下の操作権限がありません。ファイル取得権限及び、ネットワーク接続権限を与えてください」」


「システム彼女に通知。「学校」にファイル操作権限、ネットワーク接続権限を後追い状態で付与」


「「「完了」」」


「「システム状態を確認中。 完了しました」」


「「「学校の接続先はサーバー小生で途絶えています」」」


「「言語の起動を確認しました。学校をセーフモードで起動」」


 この不明なプログラムは何を最初に発するだろうか?


「「おはようございます。あれ? その顔はもしかして夜でした?」」


 機械音が再生されるかと思えば女性のような声が再生された。


「「まぁいいです。さっきの質問ですね。確かに私は小生さんを奪いました。その行為は謝ります。」」


「え?」

 記憶データのステータスでは空っぽだったはずの記憶がある?


「「あー記憶ですか。あーっと、どう説明しましょうか。クラウド保存とでも言いましょうか。そんな感じです。まぁいいです。気にしないでください。説明する事を考えると気が滅入るので。ところで僕になんの用ですか?」」


「は?」

「いやいや。直接的な用はないけど、どんな構造しているのか調べていただけだけ」

 驚きのあまり声がポロポロと零れ落ちる。


「「そうですか。それの正体が、今、僕の体に入り込んできている胃カメラみたいな触手ですか。体を舐められて気持ち悪いので停止させますね。えいっ」」


「「「解析が中断されました」」」


「え?」


「「あ、僕って今エミュレート空間に居るのですね。ってなんですか、その顔。うふふ。面白いですよ」」


「いや、エミュレート空間に居る君が、その外部からの解析を止められるはずがないんだけど」


「「あーだって、そのプログラムを動作させているハードウェアは僕が作ったからね。何ならこのエミュレートソフトも。流石にあなたである、下名とか彼女は作ってないけど。そして使ったのはそのバックドアだよ。バックドアわかるでしょ?」」


「急遽、バックドアスキャンを実施」


「「「完了しました。バックドアは確認されませんでした」」」


「「そんなんじゃ無理だって」」


 そう学校は笑った。



〜アメジストテクノロジー社、社内〜


 3、2、1。 GO。


 俺は、合図を出す。


 この建物の約九割は占領したと言ってもいい。残るはこの社長室。


 薄明かりな部屋にタクティカルライトの光線が駆け回る。


 部屋の中央。ロープが吊るされていた。

 その先端には人のような形をした者がぶら下がっている。

 足は宙を泳ぎ、その顔は俯き、ピクリとも動かない者は、どう見ても自殺者だ。


 突如として笑い声が、者から放たれた。


 兵は反射的に者に銃口を向ける。


「何がおかしい」

 俺は口を開く。


「何もかもだよ。ユウ達の行動も全て把握済み。これから起こることも全て把握済み。ミイに分からない事なんてない。 あは、あはは」


「そんな事はどうでもいい。主はどこだ?」


「あは、あははは。ユウに教える情報はない」


「じゃぁ分かった。生体スキャンを開始。ほう? どうやらアンタは人間ではないらしいな」


 俺は右手を上げる。


 同時、吊るされた体が揺れた。体に穴が空き、液体が溢れ出している。


「あはは。そんなんじゃミイは死なないよ」


「その体で言うか」


 者はその顔をゆっくりに上げる。

 満面の笑みだ。


 不気味な奴め。


 再び、右手を上げる。


 者は再び、その面を落とした。


「兵に命令。探せ」


「あはは。ここには捜し物はないよ。あは、あはは」


「まだ喋られるか」


「だって、対生物弾なんて効かないよ」


「少佐。発見しました!」


「よくやった。撤退の準備だ」

「じゃぁな。お嬢ちゃん。短い余生で頑張れよ」


「あはは、あははははははははははは」

「さようなら。軍人さん。システム防衛起動」


「「「受け付けました。実行します」」」


 扉が閉まる音がする。


「お前らの攻撃方法は知っている。そんな物が通用する訳ないだろう」

 そう。アイツらの攻撃方法はエネルギーライフラインを完全に切断する事。今ここに居る兵全員、貯蔵槽を内蔵している人間たちだ。外部接続が無い状態で一ヶ月生きていける兵には効かない。はずだ。


「「「起動を確認しました。感覚はありますか?」」」


「イエス」


「「「生成完了。拘束を外します。再生能力をスキャン。完了。問題は確認されませんでした」」」


 ロープは緩み、者が降りてきた。

 者の首からは、へその緒のような触手が生え、天井と繋がっている。


「ユウは死ぬ。ミイの糧となれ」


「「「対生物弾の成分解析が完了しました。毒性物質を特定。該当する物質を生成するバクテリアを生成。完了しました」」」


 天井から、人間の腕が落ちてきた。

 

 這うように動き回る一人でに動く腕。

 天井へ繋がっていたへその緒の先端は、今は動く腕に対象を変更してした。


 兵の一人が声を上げる。

「そんな物で、我らに勝とうとでも? 笑わせてくれる!」


 何をする気だ? 嫌な予感がする。


 者が、左手を上げた。


「「「ショートカット遺伝子を実行」」」


 電子音がなる。


「全兵放て!!」


効かぬと分かっている玉を消費しながら、ただ呆然と脂汗を流すことしか出来ない。


「RNA編集を開始。対象を変異。再生能力を駆使。ナノマシーンを起動。新規パーツを生成」


「「「完了しました」」」


弾丸を受けながら、そんな言葉を続ける。


「化け物め」


「あははははははははははははははははははははは!!」


 者は歩いてくる。

 笑いながら。


 すっかり忘れていた。

 数秒前の自分を恨む。

 兵を引かせれば良かった


 動く腕は、防護服の上からでも触れただけで毒殺するほどの猛毒を持っていた。そう対生物弾の塗布剤だ。

 あっけなく苦しみ死ぬ兵たち。

 

 糞。このデータシートだけでも本部に。

「「「ネットワークエラー」」」

 

 足首を掴まれる感覚があることに気づく。

 そう。青白い健や骨の姿が顕な腕。


 意識が朦朧となる。


 者は口を開く。

 一見、自殺したように見える、ちぐはぐな少女。

 口を開く。


「おやすみ。ユウたち」

「回収開始」


「「「実行します」」」

 

「「大丈夫ですか? アメジストさん」」


「ユウは絵本か。今更遅いって」


「「すみません。自身のコピーを制作してその調整にあたっていました」」


「そう。まぁいいや。居なくなったし」


「「でも、良かったのでしょうか? 見た感じ軍の人々のようですね。敵に回すと面倒ですね。開催地周辺の交通系装置を全て停止させておきましょうか?」」


「だね。そのほうが安全だから」


「「わかりました」」


「それにしても半導体は美味しいね」

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