第6話

 〜ルーム2〜

 

 「あーあ殺しちゃったね。お兄さん、どう? 気分は」


 返り血を浴びた顔を拭い答えようと口を動かす。

 しかし、出てきたのは言葉にならない汚い悲鳴だった。


「まぁいいや」


「「問。者は殺して良かったのか?」」


 え?

 

「「問。者は殺してよかったのか?」」

「「命乞いを無視して良かったのだろうか? 不平等な裁判で良かったのだろうか? 何を考えて何を思って殺したのか? 殺す感触はどうだったのだろうか? いざ目の前で死んだらどうだったのか?」」


 俺は、俺は間違った選択はしていないとお、思って、い、いる。


「「処刑を傍観者として見れますか?」」


 手にあの柔い感覚が走る。


「あなたの選択。お兄さんは殺していいと言った。何も考えないで、普通と言って。裁判を

やり直すとも言わなかった。ましてや殺さないと言った選択もしなかった」

「コロイシテイイトイッタ」


 冷徹な声がする。


「人権がなくても、一概に殺していいとは言えない。じゃぁ犬は? 猫は? 殺して良いの? お兄さん分かるよね。ダメだって。じゃぁなんで者は簡単に殺せたの? 人の為に死ぬはずだった命が逆に人の命を奪ったから? そうだよね。基本、者は人の為に死ぬ。でも命の価値は、最低でも人権のない犬猫と同等。いや、それ以上。憎いんだよね。下の者が上の人を殺したから。だから殺して良いと思ったんだよね」


 違う。俺は普通に考えてそう言った。


「ほら、そうやって、自分の考えが不都合になると、その責任を周りに押し付ける。自分は悪くないです。普通がそう言ったんですーって。でも、発したのは自分だよね? その事実は揺るぎようがない。その責任からは逃げられない。じゃぁ認めちゃったら良いじゃん。自分が殺しましたって。楽になるよ? だって現実逃避とか正当化しなくて良いんだから。自分の考えが間違ってましたって。そう認めちゃいなよ。楽になるよ?」


 違う。違うんだ


「何が? 何が違うの? 何も違くない」


 確かに俺の意見で殺したわけじゃない。でも殺人鬼は殺して良かったと思うんだ。でも、体が違うと言ってくる。


「あれ? 忘れちゃった? あの者は正当防衛で殺してしまったと」


 え?


「記憶を捻じ曲げてまで自分を正当化させたいの? 楽になろうよ。自分が悪かったって」


 え?ーーーー、うん。


「「問。あの者を殺して良かったのでしょうか?」」


「命の価値って?」


 お金では表す事が出来ないもの。


「それを自分は」


 殺しました。


「問に答えます」


 問に答えます。


「自分の考えが間違っていました」


 自分の考えが間違っていました。


「自分は尊い命を消してしまいました」


 自分は尊い命を消してしまいました。


「殺してはいけなかった」


 殺してはいけなかった。


「「回答を保存しました」」


「者だけど私と罪を償おうね。お兄さん」


 うん。

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