夏の合宿編・第三話 三島の心配事

合宿二日目。


宿のお手伝いは朝早くから。


部屋の空気を入れ替え、庭や表の掃き掃除から始まる。


「おお、おはよう吉川早いな!」

「おはよう…君こそ早いな」


朝早くからばったり鉢合わせする部長と吉川会長なのであった。

ちなみに僕と清司は部長に叩き起こされた…僕は朝が弱いんだ…ぐー。

「モノローグで寝るな…俺だって眠い…」


女性陣は既に厨房の手伝いをしているようだ。すごいな…。


僕たちもせっかく来たのだ、頑張ってお手伝いしなくちゃねー…


「…眠すぎて、モノローグへ突っ込むなってツッコミすら来ないよ…」


何故か落ち込んでる清司は放っておいて。

鉢合わせした二人である。


朝から言い争いに発展するか?と思いきや特にそんな様子はなく。

…これは、当初心配していた、仲間割れしてゴタゴタになる…と言った事態にはならないかな?

うん、遠い田舎にまで来て喧嘩は良くないよね。


「おはよっすー正兄ぃ!都会でだらけて早起き出来なくなった…って事は無さそうだなあ!」


昨日の悪ガキ…もとい、明君である。

何か企んでる事山の如しでしょー、すんごいニヤニヤしてる。


あー、思わぬ所に伏兵がいたなあ…

これから一週間。

不安だ…。


「明?ああ、生意気な奴だろう?」


うん、それは昨日の様子を見てわかる。


本日の買い出しメンバーは新藤先輩、僕、椎名さんだ。

他の男連中は部屋の掃除に動いている。

清司には

「まぁた、お前だけ…しかも新藤さんと椎名さんの二人とだとぅ!?ぐぬぬ…」

…と、散々恨み節を聞かされて出てきたのである。

やーい悔しいだろー、でもこの人選僕じゃあないからな。


そんな買い出しの帰り際に明君の話題になった。

「んー、叱ってやれる人がお杵さんだけだしなあ…いや、お杵さんも充分厳しく接してはいるんだがな」


「明君のご両親はご一緒に暮らしているんじゃないんですか?」


「明の両親は海外を飛び回っていてな、なかなか日本に帰ってこないんだ。だからお杵さんが親代りみたいなもんだなぁ…」


「それは…、明君寂しいでしょうね…」

「お陰であんな感じでいたずら小僧になったというわけさ。困ったもんだよ」

「でも新藤先輩の言うことは素直に聞いてるような…懐いている?って言ったらいいのかな」

「どうかな?…ああ、一度叱った事があったな…大泣きされたから…トラウマにでもなったかな」


…ガチで怒ったのであれば…、さぞ恐ろしかったであろう。

いや実際、新藤先輩が怒った所は見た事無いが…怖そう。


「まぁ、悪い奴じゃあないんだ。仲良くしてやってよ」


新藤先輩にそう言われたらねぇ。

昨日の問題発言は水に流してやらなくも無い。


「あー、やっと帰ってきたー!なあ三島!今から昼飯まで自由時間だってさ。明君が村を案内してくれるんだと」

「おう!任せてよ静兄ぃ!俺が丁寧に案内してやっからよぅ!」


…いつのまにか清司と明君が仲良くなってた。

…通じるものがあったのだろうか?


「なんだぁ?健兄ぃはあの沙織姐ぇがいないと寂しい…!とかか?」

ああ?なんだって?

「モノローグで返すな三島。そして顔が怖い」


さて、村を案内してくれるなら、吉川会長も連れて行きゃあいいのに明君は何故か僕と清司しか連れ出さなかった。

…吉川会長、今何してんだろ?


「やけにこっちきてから吉川会長の心配してんのな、お前」

いや、するだろう。

ヒーロー部の中で一人だけ事故で放り込まれたというか、一度自分が潰そうとした部活の合宿に強制参加させられてんだぞー

いくら部長と新藤先輩が幼馴染だからって…気まずいだろー。


「いや、まあ、そう考えると、そーだなぁハハハハ。」

考えてなかったろ。


「なあなあ、静兄ぃに健兄ぃ!聞きたいことがあんだけどよぅ!」

ほらきた!それが狙いだろ完全に。


「昌兄ぃって、やっぱり亜紀姐ぇを狙っているよな?」

ま せ て や が る な あ明君よー

「いたいいたいなんなんだよいきなりー!!!」

「ああ、おいっだからモノローグだけで怒るなってば三島!」


「やっぱりそうなんだな!…正兄ぃはあてにならないし…俺が全力で邪魔してやる…いひひひ…」

…やっぱりそうなんだな、の後がイマイチ聞き取れなかったけど。

まあ、嫌な予感しかしないよね。


昼ごはんの後…。


「昌兄ぃ!こっちきてよぅ!手伝ってー!!!」

「…いや、何を手伝えばいいんだ?…というか、昌兄ぃって…」

「いいからー!こっちこっちー!」


…お手洗いから戻ったら、部屋には部長と清司しか残っていなかった。

「あれ?他のみんなは?」

「新藤と椎名は厨房を手伝っているぞー、あれ?吉川と明はどこに行ったんだ?」

「えー?さっき明君に呼ばれて会長どっか行っちゃいましたよ?」

なんで止めるか、様子見るかしなかったんだ清司!

「いや、だって普通に出て行ったぜ?心配するようなことかあ?」

…まあ、そうかもしれないけどさ…。

「心配し過ぎなんだって三島はー」

「そうだ、三島に清司。三時から祭りの手伝いにいくぞ!男どもはもっぱらこっちの手伝いで呼ばれたようなものだからなあ!俺は先に行ってるから明と吉川が戻ってきたらそう伝えてくれ!」


部長はガハハ!と笑いながら豪快に去っていった。


「じゃあ、待ってようか」

「うん、…そうだね」

「…そんなに心配かー?…でもまあ、お前の心配だったり勘だったりは当たるからなあ」

「なんかねー、明君のいたずらが炸裂しそうだなーって」

「ああ~…なるほどねー、俺まで嫌な予感してきたあー」



案の定である。


「あれ?三島に清司!…明と吉川はどうした?」

「それが…帰ってこなくて…」

「まったく、どこに行ったんだ!あいつらは!」


二人が帰って来なかったので先に合流しているものと信じてきてみたが…期待は外れた。


「ねえ、小河部長、明君と吉川会長を探しに行きませんか?」

「そうだなぁ…明がついているから迷子…って事にはなってないだろうが、暗くなってくると心配だな」


「おーい、小河君!悪いがあそこからテントを持ってきてくれないか?」

「わかった!…しかし手伝いがな…どうしたものか…」


「じゃあ、この辺に詳しい小河部長とあと僕とで探しに行きましょう!清司に残ってもらって!」

「なあ!?」

「そうだな、すぐに見つけられたら人手も増えるし!清司、すまんがここは頼んだぞ!

おじさん!この清司君がテント持っていくから待っててくれ!俺は知り合いが迷子になってるようだから連れてくる!…それまで頼んだぞ!清司!」


「また俺だけ留守番ーー!!?」


すまない、清司。

さて…二人はどこに行ったのか…

吉川会長はいろんな意味で無事だろうか…。


僕と小河部長は明君、会長探しに神社を後にした。


続く→







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