夏の合宿編・第二話 初日。
さて。
桜ヶ丘高校ヒーロー部with吉川会長一行は小河部長のお祖母様が経営されているという宿へついた。
田舎にある昔ながらの宿…と行った感じ。
そもそも、なぜヒーロー部一行がお邪魔することになったのか。
小河部長のお祖母様が経営されてるこの宿。
従業員が数名お盆で田舎に帰る。いつもなら日程をずらしてシフトを組んでいたのだが、どうやら今回はどうしても日程が被ってしまったらしく、人手不足となったようだ。
「ついたついたー!」
「すごいな…やっぱり都会とは全然空気が違う…」
「素敵ですねー!」
「おーい、一年組ー!置いてくぞー」
旅館に着くと、早速お祖母様に挨拶かと思ったが、買い出しか何かで出かけているようで待つことに。
…それまで、各自、自由行動…となった。
第二話、初日。
「じゃあ、私はちょっと出かけてくる」
新藤先輩は一人でスタスタと出かけて行ってしまった。
「おやー?新藤ちゃんは?」
「あ、先生。新藤先輩なら外に出られましたよ」
「あちゃー、早いなぁ出かけちゃったかー…ちょっとお買い物頼みたかったんだけどなぁ」
「私、行きましょうか?」
「あ、お願いできる?このメモに書いたから、よろしくね椎名ちゃん…あ、三島君?あと吉川君、一緒についていって荷物持ってあげて」
「はい、わかりましたー」
「あ、はい…では三島君と、椎名さん…だよね?行こうか」
…清司は小河部長と荷物運びを手伝っていたので三人で買い物へ出かけることになった。
なかなか無い組み合わせである。
吉川会長は少し考えた様子を見せ、口を開いた。
「その…三島君に椎名さん…ヒーロー部立ち上げの時は…すまなかったな」
吉川会長はどうやら、春の一件をずっと気にしていたようだ。
最初は頭でっかちでお堅い人かと思っていたが、今日までの様子からその印象は無くなった。
むしろ、個人的には新藤さんとの事を応援しているレベルだし。
「気にしてないし、もう終わった事だし、こうしてヒーロー部は活動してるわけなので」
「そうですよ吉川会長。むしろ今回の合宿は巻き込まれてしまって災難だったんじゃ…」
ほっと安堵したような表情を見せ「ありがとう」と吉川会長は言った。
…吉川会長は意外と話好きだったようで。
なんだか買い物の時もいろんな話が出た、最初は気まずいんじゃ…とか思ってたけど、そんなことはなく。うん、楽しい。
買い物を済ませて、帰ろうとしたら誰かに呼び止められた。
「三島に椎名に…吉川か、珍しい組み合わせだな」
新藤先輩だった。
☆
新藤先輩はこれから近くの神社に用があるようで、そこにお祖母様がいるからついでに挨拶しよう。
という事で、ついていく事になった。
新藤先輩は宿について早々に誰かに呼び出されたのだという。
「で、相手は誰なんですか?」
「…怪盗bright」
「は?」
「…お前たちのお祖母様は預かった、返して欲しくば神社に来い…怪盗bright。」
メールの文面を淡々と読みあげる新藤先輩なのであった。
「ちょ…それ大丈夫なんですか?」
「そ、そうだ 、小河には伝えたのか?…そもそも君は一人で行くつもりだったのか? 何かあったらどうするんだ」
「大丈夫だ、誰かは検討がついてる」
神社へ続く長い階段を登る。
いくら検討がついていると言っても…と心配気な椎名さんと吉川会長。
僕は何となく、新藤先輩が何にも動じて無いので身内の犯行では…と探偵のように推理するのだった。誰にも言わないけど。
人がたくさんいる感じがする…神社で何かやってるのかな。
「ああ、神社で今週末に祭りがあるんだ。お祖母様は祭りの実行役員でもあるからな」
へぇ~そうなんだ。
……ん?
今、新藤先輩 …僕のモノローグに返答した!?
☆
「お杵(きね)さん」
「あら?亜紀ちゃん!?もう着いたの?」
髪は白髪だが、綺麗に纏めて簪で留めている。着物姿のお祖母ちゃんだ。
どうやらこの方が小河先輩と新藤先輩のお祖母様、お杵さんというらしい。
「紹介するよ、あと先生と正ともう一人は宿についてから挨拶するとして、先にこの三人から。幼馴染の吉川と、同じ部活の後輩で三島と椎名」
「はじめまして、一週間お世話になります。吉川昌之です」
「後輩の椎名沙織です」
「同じく後輩の三島健です」
「まあまあ、手伝いに来てくれてありがとう。この時期は祭りもあるから忙しくてねぇ、いつもは亜紀ちゃんと正と明(あきら)に手伝ってもらっているんだけど今回は三人でも足りなくてね…、ああ、私のことはお杵さん、と呼んでねぇ」
かわいいお祖母様だなぁ。
みんなに好かれそうなニコニコしておっとりした人だ。
ところで明さん?はまだお会いしてないような。
「あーー!!!ばっちゃん!隠れとけって言ったろー!もう亜紀姐脅かすんだか…」
らねぇー…つって続くんだろうけど口開けたまま固まっちゃいましたよ…大丈夫?少年。
「出たな怪盗bright、成敗してくれる」
すっごい棒読み感で新藤さんは明君を猫のようにつまみ上げるのだった。
☆
宿に戻り、改めて自己紹介をしあっている中、明君も同席していた。
「明、あんたも挨拶しなさい」
お杵さんに言われ、待ってましたとばかりに立ち上がった。
「俺のー名前はー小河明っていいますぅ。正兄がいつもお世話につっても?だいたい亜紀姐がやってると思うけど?」
まあ、間違ってないな。
「こら、明!みんな手伝いに来てくれたんだぞ、もっと丁寧に挨拶しないか!」
「声がでけーな正兄はぁ!まぁぶっちゃけ?この中に…女の人もいるけど…亜紀姐を狙っている奴がいたら?
俺がバンっつってやるから?覚えとけー!」
ちょっと半分くらい意味わかんない。
「とんだわんぱく坊主だなぁ…」
おお、清司。久しぶり。
「何が、久しぶり。だよまったく。いいよなーお前は。新藤先輩と椎名さんと仲良くお出かけしてきたんだろうーチクショウ」
吉川会長もいたぞ。
「とくに?そこの煩そうな兄ちゃんと?そこの身長高い兄ちゃんがあやしいなー!?
そこの大人しそうな兄ちゃんはそっちの姉ちゃんのこと好きそうだから?俺は応援するぜー」
部長を除く、言い当てられた男子一同は一気に顔を赤くしてしまった。
あーあーあー。
「あはははは!一本取られたわねー君達」
哀川先生は腹を抱えて笑ってる…こちらは笑い事じゃないんだけどな。
そんなこんなで。
なんだか不安な合宿1日目を終えるのだった。
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