入部編・第4話 有栖演出劇
いやっほうー!みんな元気?
生徒会副会長、こう見えても高校三年生、有栖玲だよ☆
なんだかあんまりお話進行してくれない主人公君に変わって、今回は私、有栖が進行役を務めちゃうよ~
とりあえず、前回までのあらすじ~~
三島健と清司静雄は狭い廊下で突っ立ってたところ、慌ただしくやってきた林優希がぶつかってさあ大変。
怪我はなく、一方的に怒鳴られちゃった二人だったが、林ちゃんは著者名の書いてない不思議な本を落として行っちゃったの。
放っておくのもなー、と二人は林ちゃんを追いかけようとするが、時すでに遅し。バタバタと慌ただしくいなくなった林ちゃんを見つけることができなかったんだって。
困った二人はヒーロー部に相談へ行くけど小河部長はすでに依頼が入っていた為、新藤ちゃんだけとりあえず林ちゃん探しに参加する事に。
さてこの本、実は図書委員で林ちゃんの友人の椎名沙織ちゃんの物なんだけど、林ちゃんは彼女から本について調べてもらって…たのか林ちゃんが調べたいって強引に調べたのかはさておき、その為に本を預かっていたんだ。
調べた成果は本を椎名ちゃんにあげた人物が「黒い帽子をかぶった男の子」ってことだけで、とりあえず本だけ返そうとしたら…ここでやっと本を落とした事に気づく。
慌ててぶつかった場所に戻った林ちゃんは、三島君と清司君が本を盗んだと決めつけちゃって走って彼らを探しに行こうとしたところで、たまたま通りかかったバスケットボールをたくさん抱えた小河部長に衝突。ポーンと跳ね返ってビターンと廊下に突っ伏しちゃった…というわけだけど、ついてこれてるー?
「いや、まったく」
第4話 「有栖演出劇」
生徒会室。
文化祭だか体育祭だかの会議資料の束を机の上に積み上げて眺めていた吉川会長は、副会長の突拍子も無い前回のあらすじに大混乱。
「そもそも、お前はそのバスケットボール部の部長から会議資料回収に行くとかで出たんじゃなかったのか?なぜここでチェス盤広げてあらすじ解説している…」
「だって、他にやる人いなかったんだもーん」
「その林さんは大丈夫なのか?」
「…会長?なーんで気づかないのかなー、私がこんなめんどくさーいあらすじ解説なんか普段だったらしないってわかってるでしょ~これはチャンスなのですよ」
「チャンス?何の?」
「もー、しょうがないから説明してあげちゃいますよー、これはヒーロー部を潰すチャンスだって行ってるんですー」
「何だと!?」
有栖玲のヒーロー部廃部大作戦☆…まあ、有栖自身はヒーロー部のお二人とも面白くて好きだから潰したりしたく無いけど、会長がどうしても…って言うから~
「早く教えてくれ」
あいあいー、これは会長にも頑張ってもらわないといけないですからねー、よーく聞いてくださいなー。
現在、事故とはいえ、小河部長と林ちゃんがぶつかって、林ちゃんは保険室ですがまだ意識が戻ってません、今救急車を呼んで病院に~って状態です。
「そんなに大事になっているのか?!」
それで、事故が起こった状態ですけど、目撃者は当事者二人を除くと私、有栖のみ。
と言うわけで、先生に呼び出されるまで待機中なう!なのですよ。
今から事情説明に小河部長と私も病院へ行くわけです。ここまで整理できてます?
「ああ、…まさか」
そのまさかですよ。利用するのはもしこの責任を小河部長だけに押しつける事が出来れば…ヒーロー部は活動停止処分…この大事な5月の間活動停止になっちゃうなんて…そんな部に新入生が入部しようだなんて思わないはず。
林ちゃんが目を覚まして、彼女自身が先生に弁解しない限り、ヒーロー部に難癖つけて活動停止に追いやることが可能ってわけです。
どうです?いい考えじゃないですか?
「確かに、周りから見ても不審には思われない…上手くやればな」
「そう言うことです、まあ、有栖にお任せくださいな☆」
☆
さて、なんだか久しぶりに出た気がするが、主人公である。
本の落し主探し…ってやってきたけど、この学校の図書館は、何と言うか…別の施設みたいだ。
本はもちろん、パソコンに、DVDやBlu-rayプレイヤー、と言うかシアタールームまである…何これネットカフェ?
「こんにちは、何かお探しですか?本をお探しでしたらそちらのパソコンで検索できますよ」
メガネの大人しそうな女子に声をかけられた。おお、ザ・図書委員って感じの子だな。
「あー、なんて言うか、本を探しに来たんじゃなくて…」
「映画を見に来られたんですか?」
「あ、それは今日初めて知ったんで、毎日見に来たいなと思うんだけどそうじゃなくて」
「?」
大人しそうな図書委員はとりあえず、図書館の利用方法を説明してくれた。
「借りるときは、このカードを機械に読み取ってから、本のバーコードをかざしてください、これで借りる手続きは完了です。この手続きをしないで持ち出そうとすると入り口でブザーがなっちゃうんで気をつけてくださいね」
「すごい設備ですね…明日から通うかも…」
「本当ですか?ぜひ利用してください、…試験的にこう設備を整えて運営してるそうで、利用者が居ないとせっかくできたのに無くなっちゃうかもしれないから…」
「そうなんだ…、じゃあ宣伝しなくちゃ…」
なんとなく、話しやすい子だったからそのまま会話が続いて行った。僕自身、本は好きなので今まで読んだ本の話とか、気になる本…と、か…。
「あ」
「どうしました?」
あぶない、うっかり忘れるところだった。
「あー、実はね…」
僕は彼女、椎名沙織さんに今日起こった出来事を話した。
「多分、同じ一年生なんだけど、ぶつかってすぐ走って行っちゃったから名前もわかんなくて…で、この本を…」
椎名さんは本を見てクスクスと笑い始めた。え、何かおかしい事したかな…
「その本、実は私の本なんです」
「え?」
「ぶつかった子は、林優希ちゃんって言って、私の幼馴染なんです。推理小説好きが高じてちょっとでも不思議な事があると調べたがるようになって…、この本は私も不思議だったので優希ちゃんに調べてもらっていたんですよ。ぶつかって落としたかもってさっき慌てて出て行っちゃったんだけど…」
見つかったよ、と連絡しますね。と言って、椎名さんはスマホで林さんに電話をかけた。
「…取らないですね…、三島さんも優希ちゃんが戻ってくるまで少し待っててもらえますか?私が持ち主だって確かな証拠がないまま本を渡すのは気がひけるでしょ?」
「いや、疑ってはないんだけど、その林ちゃんの方がなんだかはっきりさせないと怖そうだから、待っておくよ」
…気、強そうだったし。
「林ちゃんがくるまで、この本が不思議だってお話でもしましょうか?」
ニコっと笑いかけられて、ちょっとドキっとした。ちょっとだけ。
「そう、その本、著者名が無いし、後半白いページだし…」
「実はこの本、不思議な方から頂いた本なんです」
☆
私が中学生に上がったばかりの頃、田舎にいる親戚のお家に遊びに行った時のお話です。
お散歩していると、田舎街にはちょっとだけ不釣り合いな西洋風のお店を見つけたんです。
「移動古書店…リベラール?」
お店にはそう書いていました。
本が好きな私としては、半分ウキウキしながら、もう半分は怖い店主さんが出て来たりして…とドキドキしながら店に入ってみたんです。
店内は本の香りとちょこっと甘い匂い、読書の邪魔にならない程度にジャズ調の曲やクラッシックの曲がかかっている。素敵な空間でした。
「おお~…いらっしゃいませ、ようこそリベラールへ」
「ひっ…!?」
突然、頭上から声をかけられ、見上げると、黒いハットに西洋の童話に出てくるお金持ちのお坊ちゃんが着てるような服の男の子が高い脚立の上で分厚い本をいくつか抱えて立っていた。
脚立はグラグラ揺れてて今にもたおれそう…。
「あの、大丈夫…ですか?」
「あああははー、割と大丈夫…じゃないな…脚立を抑えてくれると助かるー」
「は、はい!」
男の子がようやく本を片付けて降りてきた。
「いやー、ありがとう。さっききたお客さんがあれも調べろー、これも調べろーってうるさくてね…一気に本を出して帰っちゃったもんだから片付けが大変だったよ…。」
男の子は埃を払うと丁寧にお辞儀をした。
「あらためて、ようこそリベラールへ僕はこの移動古書店の管理人さ」
☆
「男の子が古書店の管理人!?お伽話みたいだね…」
「私もびっくりでした。最初はお孫さんが手伝っているのかと思った。…私が本好きだって知ると、手伝ってくれたお礼にと男の子はこの本をくれたんです。「気が向いた時に読むといい、また会う日があれば、感想を聞かせてくれると嬉しいな」って」
「その古書店はまだあるの?」
「翌日にはもうなかったの「移動古書店」って、本当に移動してるんだって…その時はぼんやりそう思ったんだけど、移動するには店が丸ごとなくなってて…親戚や近くを通りかかった人に聞いても「そんな店は知らない」の一点張り。だんだん私が嘘つきか、夢を見てるんだって言われ始めたから、あんまり話さないようにしてきたんだけど」
彼女が嘘をついてるようには見えなかった。でも不思議なお話で僕は特に感想を言えなかったが
「その管理人さんにまた会えるといいね」
「はい!」
ニコっと照れ臭そうに笑う彼女。かわいry…いやいや。何か忘れてはないだろうか!?
「ああ、あの、電話!遅いですね…」
「本当ですね…いつもは数分で折り返してくるのに」
それも凄いけど。
「三島ぁああああああ!!!」
廊下は走らないー、清司がバタバタ慌ただしく駆け込んできた。
「どうしたの清司、あ、そうだ本の主。見つかったよ。こちら同じ一年の椎名さんー」
「こっちはぶつかった女の子を見つけたんだけど、大変なんだ!!林さんが病院に…っ!」
「はあ!?」
「優希ちゃんが…病院…!?」
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