第11話 ドッキリドキドキあまぁいお誘い
そんな感じで特別寮にまで招かれて、ドッキリを受けたんだ。
「……少し驚かしすぎてしまいましたか?」
「いや別にそんなことないですよ? ちょっと、ちょおっとビックリはしましたけれど……」
「ふふ……そうですか」
扉の奥で会長はとニコニコしていた。会長にとっては、ドッキリ大成功……って所なんでしょう……ドッキリ仕掛けた相手が尻もちまでついてくれたら、私だって多分ニッコリニコニコすることだろうから。
「……よっこらしょ」
「なんかおばあさんみたいな掛け声ですね」
「流石に傷つきますよ?」
制服でついた砂埃を、パンパン、っと払って払いながら、私は立ちあがる。
その様子を、まだニコニコ笑って見つめてくる会長は、制服姿だった。
「さて……では、中へどうぞ。自室へご案内しますわ」
そう誘われるままに、靴を脱いで中へと入る私。
玄関の隙間からも十分に見えていたけれど、寮内の装飾はすごいものだった。
「わぁっ……綺麗」
そんな感想が口から出てしまうような大き目のシャンデリアに、高そうな絵画と花瓶。白い大理石の床と装飾のつけられた階段。どこを見ても、お高めのホテルみたい……って感想しか出て来ないのは……私のラクジュアリー的体験の量が少なすぎるからかな。
高いホテルって言ったって……旅行先のチェーン店な感じのホテルだしなぁ。
「なんか、すっごく豪華ですね……とても寮とは思えません……」
「ちょっとばかり派手で……体を休めるにはには少々向かないのですけれどね」
そう苦笑しながら、会長は寮の奥へと歩いていく。私はもちろんその背と、綺麗な金髪を追いかけて―――私達以外に、誰もいないということに気が付いた。
「この寮、今は他に使っている方はいないんですか?」
「はい、残念なことにそうなんですのよ……こんな寮、私一人では広すぎて、使い切れていないんです」
「……確かに、広すぎですね」
そう、何となく当り障りない返事をすると―――
「―――あっ、そうですわ!」
ニコッ、とそこで良いことを思いついたような顔で、私を見つめてくる会長。
学園よりはリラックスしているのか、その笑みは少し子供っぽかったけれど―――その次に言われた事にド肝を抜かれた。
「―――宮水さんがここにお引越しなさればいいのですわ!」
「えっ……?!」
「そうですわよね。どうして今まで気づかなかったのでしょうっ! 部屋も余り切っていますし……三上さんや宮水さんもお誘いして、この寮を『生徒会寮』に変えてしまえばいいのですわよね。一年生二人も、もちろん招待しましょう。そうすれば、朝食も夕食も誰かと一緒に食べられますし、暇つぶしにも事欠かないでしょう」
「え、あっ、ちょっと??」
「我ながらいい案ですわね……すぐに提案書を作って明日にでも監査会に提出を―――」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
マズイ、と思った。
するするするすると会長の口から出てくる案を止めないと……本当に、この寮に引っ越すことになってしまうと思った。
いや別にそれが嫌って話じゃないんだけど……いや、なんかこうさ、あるじゃん……憧れと寝食共にする……は過言かもしれないけどさ……! ちょっと遠慮したくなるじゃん、うん。
「?? 何か問題でも?」
「いや、その問題って言うより……その、心の準備があるじゃないですか」
「あら、私と一緒に暮らすことに―――心の準備が必要なのですか?」
「えっ、ええっ!?」
っ!? な、何言ってるんですかっ!? 会長!?
「確かに、誰かと一緒に暮らすようになるのは……最初はそれこそ、いろいろ苦労があるかもしれませんが……ほんのちょおっとだけ我慢すれば、わ、た、く、しと、朝も昼も夜も一緒にいられますわよ」
「そっ、そうかもしれませんけどっ! いや昼は学校があると思いますけど!?」
そう言っている間にも、隣を歩いていた会長が……ぐっ、と近づいてくる。
片足を、トッと横にずらして、腰を落として―――こんなことを言ってくる。
「……嫌、ですか」
「うっ」
―――上目づかいで、そんな風に誘ってくる。
「……私、宮水さんが来てくださるととっても……とぉっても嬉しいのですが……やっぱり嫌ですか?」
ち、近い。何かいい匂いするし、近いんだけど……近いんだけど!?
「い、嫌じゃないですけどちょっと急が過ぎると言いますか―――ッ!?」
会長は、私より身長が高い。
だから隣を歩いていれば、会長と目を合わせるには私が見上げなきゃいけない。
なのに―――今は、会長が私を見上げている。
だから、いつもよりその美貌が幼く思えて……うわっかわいいっ……ヤバいってこれ……!
「……嫌でないのなら構いませんわよね」
「か、構いますよ……っ!」
―――ズルい。
こ、このままじゃ何を言われても―――受け入れて飲み込んでうなずいてしまいそう。
―――ダメだ。
……こ、断らないと……一線を引かないと……なんか、ダメな気がする―――ッ!
「だ、だめっ、ですよ……!」
「!!」
「わ、私達は生誕祭までの短い関係で……その、一か月間だけ、ここに引っ越してくるというのもいろいろと面倒事の方が大きくなると思うんですよねっ―――いろいろとっ! いろいろあるじゃないですかっ! ねっ! 会長!」
……そう返事をしたところで、会長が『むぅっ』と唇をゆがめた。
「えぇーいい案だと思ったのですが……残念ですわ」
そう言って、会長は寮の奥に、二階に続く階段の方に歩いていく。
「……ちょっと余談が過ぎましたわね。さぁ、行きましょう。私の部屋へと案内しますわ」
―――あっ……危なかったぁぁぁ……っ……!!
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