我ら異世界転生乙女組!

生田 内視郎

我ら異世界転生乙女組!



「何、ここ」

 目が覚めると何もない真っ白な空間にいた。

 上下左右何処を見ても真っ白で、遠くを見てもひたすらにまっさらな白が広がるばかりで奥行きさえも分からない。

 

「ここは一体……」

 確か私達は修学旅行中で、バスに乗って京都に向かっているところだったはず。

 それから、対向車が突然正面衝突してきて、バスにぶつかって、橋の下に落ちて──


 待て待て待て待て、私もしかして死んだ?

え?、てことは何?ここ天国?うそうそうそ、

やだ、マジで!?

  

「ううーん」

 気がつくと、足元にさっきまで居なかったはずのクラスメイト達が倒れていた。

「あれ?アコちゃんもう京都着いたの?

 てかここどこ?眩しい……金閣寺?」

「寝起きでボケてる場合じゃないわよメイ、とにかくみんなを起こして」

 手分けして寝ぼけてる子達を起こす。

 私とメイの他には、いんちょ、ヒメ、トーコの三人だけだった。他の皆はどこ行ったんだ……。


「何これ?ドッキリ?姫ちゃんサプライズ誕生日パーティー?」

「残念ながら違うみたいよ、トーコ大丈夫?

怪我ない?」

「なんとかね」

いんちょがスマホをかざして辺りをうろつく。

「スマホも圏外なんだけど……、ホントにここどこよ?」



「やぁ君達、気分はどうだい?」

 うっ、明るい

 

 突然光る玉が目の前に現れて喋り始めたと思ったら、グニグニと姿を変えて見目麗しい外国の美少年へと変化した。


「初めまして皆さん、僕の名前はデウス」


「ちょっと、貴方誰なの!?てかここどこよ、先生は!?皆はどこ!?」

 混乱したいんちょが捲し立てる。


「まぁまぁ落ち着いて、順に説明するから。

 僕は神。とは言っても君達の住む世界とは別の世界の神様なんだけどね。

 そしてここは異世界の扉の前、といったところかな。

 君達は元の世界で追突事故に遭って全員命を落とした。普通ならそこで魂が天に召されるところだったんだけど、特別に僕がそれをここに呼び寄せたってワケ。ここまではOK?」


「は?」

「突然何言ってんのこの子」

「外国の子?でも日本語ペラペラよね?」

「ボク、ふざけるのはそのくらいにしてお父さんかお母さん呼んでくれる?」


「やれやれ、察しが悪いな。僕は異世界の神様なんだよ?そして君達はこれから神に選ばれし異世界の勇者となるんだ」

「それって」


「正解」


「まだ答え言って無いんだけど」


「僕は神だからね、君達の考えてることなんてお見通しさ。これは俗にいう異世界転生って奴さ。ついでに言うと僕が連れてきたのは君達だけで、他の子達は残念ながら間に合わなかった」


「それって皆死んじゃったってこと?」


「君達も含めてね。さて、時間がないから手短に行くが、これから君達には僕が作った世界に降りて神の試練をクリアして貰います。クリア報酬は元の世界に帰還。クエスト失敗はそのまま死を意味します。それでは」


「拒否します」

「賛成」

「賛成」

「賛成」

「賛成」


「えぇっ!?満場一致!?どうして!?人生リセマラできるんだよ、こんな機会二度とないよ!?」


「受験あるんで」


「えぇ……」


「異世界ってTikTokもインスタも韓流アイドルも無いんでしょ、地獄じゃん」

「アタシ一日一回はお風呂入んないとダメなんだよね」

「てか現代科学文明の産湯に使った今時jkにサバイバル能力求められても普通に無理ゲーっしょ」

「それな」


「なんというやる気の無さ、これが悟り世代か」

「いやかんけーし。てか神様言う割には俗世に染まってんな、うちのじじいみたいなこと言ってんぞ」

「よく考えてよ、このままだと君達皆死んじゃうんだよ」

「よく考えなくても、そんなの虫のいい話過ぎて怪しくね?」

「ギクッ」

「あっ、今ギクッって言った!!」

「ギクッなんて言う人初めて見たわ」

「これ中身おっさんだろ。何未成年のフリしてんだキモい」

「君達さっきから失礼すぎない!?

 僕神だよ!?」

「うち無神教だから」

「アレでしょ、どうせ手違いで殺してしまったとかなんとかでしょ。異世界導入って大体八割それだから」

「ギクッ」

「ヒメちゃん詳しいね」

「伊達にオタサーの姫やって無いからね。

 そんなことより、やるならやるでなんかチート能力よこしなさいよ。それが誠意ってもんでしょ」

「神相手にゆすりとか今時のjk怖いな」

「はい!私ガン○ムがいい!ガン○ム乗りたいです!」

「アウトー!!!アウトアウトアウト!著作権とかそういう怖いのやめて!大体、世界観違い過ぎるし!これ剣と魔法のファンタジーだし」

「えー、じゃあスタ○ドとかかめは○波も駄目ってこと?夢無いなぁ」

「そ、その辺は魔法極めれば似たようなこと出来るようにはなるから……」

「じゃあ私魔法使いでいいや。魔法使いやります」

「ちょっと待って芽依さん、魔法使いって呪文覚えなきゃならないし、馬鹿じゃなれないんじゃないの?」

「めっちゃディスってきた!?」

「ごめんなさい、言い方が悪かったわ。でもやっぱりこういうのは誰がやるか慎重に決めないと」

「でもアコちゃんもヒメちゃんも私より馬鹿だよ」

「あ゛あんっ!?」

「てめ今なんつった?」

「元ヤン二人が怖いよぉ」

「お、落ち着いて二人とも。そうだ塔子さん、貴方魔法使いやってみる気ない!?」

「確かに二人よかは成績マシだけど、アタシ陸上部だしやるなら忍者とかアサシンがいいなぁ」

「聞きました奥さん、くの一ですって」

「あらいやらしい、その無駄にデカい乳揺らしながら敵を悩殺ってこと?」

「きっと必殺技はデカ乳往復ビンタとか下品なのに決まってるわ。ま〜いやらしっいやらしか〜

……って痛い痛い痛い痛い!!アームロックやめて頭割れるっ!!」

「わー浮いてる、生卵片手で割る動画みたい」

「物騒なこと言ってないで止めて!」

「分かった私がやるわ、取り敢えず皆それでいいでしょ」


「てか何?これ冒険モノなの?私乙女ゲーの悪役令嬢の方が良いんだけど」

「あー似合いそう」

「でもヒメ、根が悪だからフラグ回避できないじゃん」

「ぷークスクス」

「メイ殺す」

「どうして私だけっ!?」

「ヒメはアレでいいじゃん、鑑定士。男見る目ないの鍛えられるよ」

「ちょっとっ!?どういうことよソレ」


「私はどう?何か出来そうなのあるかな〜」

「メイは無いな」

「無いね」

「無い」

「……無いわね」

「何でよっ!?何かあるでしょっ!?友達なんだから私の長所を活かした職業くらい見つけてよ!」

「メイの長所ってなんだ?」

「無い」

「強いて言うなら無いのが長所」

「無いモノねだりは良くないぞ」

「ふざけんなしっ!もうキレたしっ!はい私僧侶やるんでっ!これで皆ピンチになっても回復魔法かけてやらんしっ!」

「芽依さんの場合は逆に失敗して死にそうね」

「なるべく回復魔法には頼らない方向で行こう」


「後は私か、プロポーションいいし踊り子とか」

「アマゾネス」

「アマゾネス」

「アマゾネス」

「アマゾネス」

「よーしメイ、覚悟はいいな?」

「だからなんで私だけなのっ!?」

「大体アマゾネスなんて職業ねぇよ」

「狂戦士ならあるでしょ」

「なんで一々物騒な枕言葉付けるんだよ、普通に戦士でいいだろよ」

「だって戦士だと盾役も含むし。アコ敵陣のど真ん中で釘バット持って暴れ回る方が性に合ってるでしょ」

「あんたの中で私の位置付けどうなってんのよ、

はぁー、まぁいいや」


「あのう、話し合い決まったのならそろそろ出発して欲しいんですけど……」

「あーそうだそうだ、職業なんてどうでもいいんだ。それよりチート能力よこしなさいよ」

「えと、言語能力とか……」

「そんなのデフォでしょ、もっと何かあるでしょ、ステータスMAXとか、無限収納アイテムボックスとか」

「何言ってんの、人間社会なんか最終的に金が全てよ。金を無限に出す能力ちょーだい」

「でも偽造通貨で捕まるんじゃない?」

「ちょっとずつ使えばバレないバレない」

「あの」

「転生して即絞首刑とか私嫌よ。それより何に置いても先ずは衣食住が優先よね。キャンピングカーとかは?」

「無免許で捕まるよ」

「異世界に免許制度なんてある訳ないでしょ」

「アコ運転出来たよね?」

「免許無いけどな」

「さらっと罪告白しないで!?」

「ちょっと」

「でもガソリン尽きたら終わりじゃん」

「ソーラーカーとかでいいんじゃない?」

「いや太陽電池でキャンピングカーは無理でしょ」

「待っていいこと考えた!ドラ○もんの四次元ポケッ○あれば全部解決じゃない!?」

「それだ」

「いいじゃん」

「それ採用」

「なんだ〜今日冴えてんじゃんメイ」

「エヘヘ、まぁね〜、という訳で神様、ドラ○もんの四次元ポケッ○下さい」


「……ぇよ」ボソッ

「え?」

「んな都合の良いモンあるわきゃねぇだろちんちくりんのクソガキ共!!!人が下手に出てりゃつけ上がりやがってあ゛あ゛ッッッ!!!著作権ヤバいのやめろって言ってんじゃねーか!ドラ○もんだぁ!?のび太みたいな頭ゆるい思考しやがって!!人の話も聞かずにどいつもこいつもぺちゃくちゃぺちゃくちゃ……うっさいんじゃあぁぁ!!!!!」


「うわキレた」

「神の癖に沸点低いな」


「さっさと行けぇ!」

ガコンッ!


「わっ」

「きゃあっ」

「おぉうっ」

「床が抜けるとかドリフかよ」

「ねぇみんな下!下見て」


床が抜けて落ちて行く先に、宇宙と空の間、大気圏層から眺める地球のような荘厳な景色が広がった。


「コレが異世界?」

「わぁ」

「凄い」

「キレー」

「へぇ」


「……私達、異世界でも上手くやっていけるかな」

「何急に?もうホームシック?」

「だってさ〜」

「大丈夫よ、こっちには伝説のレディース初代総長もついてるし異世界なんて楽勝楽勝」

「あんま期待されても困るんだけど、ま、何とかなるでしょ」

「そーそー、私達五人が居ればどんな逆境もどんとこいってね」

「よし総長、ビビってる舎弟の為にも一発かましてやって」

「ヨォシお前らぁ!異世界だろうが何だろうがアタシらナメてる奴はブッコロでいくんでぇ!!

夜露死苦ゥッ!!!」


「「「夜露死苦ゥッ!!!」」」


 そうだ、私達が揃えば怖いことなんて何もない。


 だって、私達五人は人類最強絶対無敵のjkメンバーなんだから──




「ところでこれ、このまま落ちてって大丈夫なのかしら?」

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