第20話 なぜトヨタのクルマはワシのジャマをするのか?

「なぜトヨタのクルマはワシのジャマをするのか?」


 「偏見」とは間違った思い込みのことです。

  例えば後輩のコアラ先生は片付けが大キライでたまたまB型です。巣(家)の中はドン引きになるぐらいにゴミだらけです。家の中だけならまだしも、彼のトヨタの超高級車アルファードもゴミだらけで、本当は7人乗りなのですが、2人しか乗れません。しかも対角線上にしか乗れないぐらいにゴミであふれています。ここまでなら事実ですので何の問題もないのですが、ここから論理が飛躍すると「コアラ先生はB型だからゴミだらけ」ということになり、さらに「B型はゴミだらけ」という論理がねじ曲がった帰納法から発生してくる可能性があります。これを「偏見」といいワシたちが社会と接していく上で最も警戒しなければならないことだと思います。いけませんよ、「偏見」は。


 ある日のことでした。

 ワシは無理して買ったばかりのハスラーに乗って、少し離れた友達の家に遊びに行く途中でした。天気もええし、明日も明後日も休みじゃし、缶コーヒーを飲みながら太田裕美の音楽かけて、とてもいい気分でのんびり制限速度+αで走っているときでした。そしたら来んでもええのに、いかつい顔のア〇ファードとかいうミニバンがグワーッとやって来て「どけ」と言わんばかりに可愛いハスラーの後ろにピタッとつけるではありませんか。ワシは「いやじゃのう」と思いながら、ルームミラーを気にしながら、退避できる場所を探してとっとと退避しました。貧乏性のワシはおろしたてのまだ慣らしの「な」の字も終わっていないハスラーのエンジンやタイヤやミッションに無理をさせて「ちびる(摩耗する)」のがイヤじゃったんです。そしたらあのデブグルマはハザードも出さずに偉そうに抜いていきました。ワシはせっかくの気分を台無しにされて、ちょっと不愉快になりました。

 また別の日のことでした。

 ワシは側道から右折して大通りに出るため待っていました。左からくる車がやっと切れて、あと1台通り過ぎたらやっと出られるといった状況のとき、一本向こうの側道からホニョホニョっとプ〇ウスが出てきました。ワシは仕方なくまた待ちました。そうしてええタイミングで出ようと思ったら、今度はノ〇が中途半端に車間を開けて走ってきて出るタイミングを失いました。ワシは少しイラっとしました。

 またまたある日のことでした。

 ワシは久しぶりにZを出して、とてもええ気分で海岸通りの国道をゆっくり流していました。そしたらなしてか知りませんが、先の方が渋滞気味でした。この田舎で渋滞なんか百年に一度しか起きないのにおかしいのうと思っていたら、10台ぐらい前の先頭にこれまた滅多に走らない路線バスが走っているのが見えました。それなら仕方ありません。大事な公共の交通機関でお客さん乗せて安全運転しているのですから。ワシはギアを3速に落として最後尾のクルマのあとをゆっくりついていきました。と思ったら、バスのさらに前にちらっと青いクルマが見えました。この渋滞の原因はバスではなくてあの青いヤツがゆっくりゆっくり走っているせいなのでした。運転に自信がないのならどっかに寄って避ければいいのですが、たぶんルームミラーとかまったく見ていないのか、それとも気づかないのか、わざとやっているのか、ちっとも悪いと思っていないのか空気がまったく読めないのか、堂々と走っていたのは、そうその通りです。間違いなくトヨタ車でした。

 ワシが飛び出しに警戒して、狭い道を徐行して走っているときに後ろから車間距離を詰めてくるのもトヨタ車。いい気分で音楽かけて缶コーヒー飲みながら、海辺の道をのんびり流しているときに現れるのもトヨタ車。買い物に行って、やっと見つけた駐車スペースに入れようとしたときに必ず横取りするのもトヨタ車なら、買い物帰りに、急ブレーキを踏ませて買いも袋がひっくり返るのもトヨタ車。あからさまに車間を詰めてくるのもトヨタ車。ついでに上手に枠内に駐車していなくて迷惑かけても平気の平左なのもトヨタ車。仕方がないので道を譲ってもハザードも出さずに走っていくのもトヨタ車。ついでにワシのかわいい愛車にドアパンチをくらわしてくれたのも隣に下手くそ駐車していたトヨタ車だったような気がしています。

 運転が下手で、急いでいるときに限って前をトロトロ走るのもトヨタ車なら、直線だけは速いくせにコーナーでちょっと本気出したらついてこれないのもトヨタ車です。前後の確認が甘くて空気を読めなくて、平気で我が道を行くのはトヨタ車です。

 ワシは決してトヨタのクルマがキライなわけではないのですが、何度も不愉快な思いをさせられることが多いので、つい意識するようになりました。

 トヨタのクルマが悪いのか。はたまたトヨタのクルマのドライバーが悪いのか。それともワシが悪いのか。そしてワシはすごい発見をしてしまったのでした。不思議なことに

「トヨタのクルマはワシのジャマをする。」のです。いえ、正確に表現すると

「ワシの邪魔をするのはいつもトヨタ車。」なのです。

なしてでしょうか。ワシになんか恨みでもあるのでしょうか。そう考えると不思議でたまらなくなって、ちょっと考察してみました。


と偉そうに書きましたが、答えは簡単です。

「トヨタのクルマの絶対数が多い。」からです。だから遭遇する確率が高くなって、自然にそういうふうに意識するようになったのではないかと思います。間違っても「いすゞ」のクルマに対してそう思ったことは一度もありませんから。

じゃあなして

「トヨタのクルマの絶対数が多い。」のでしょうか。

簡単です。

「トヨタのクルマはたくさん売れているから。」です。


「トヨタのクルマはなぜワシのジャマをするのか?」

その答えは

「たくさん売れていて絶対数が多いから。」

というのがワシなりの結論です。

ついでにいうと

たぶん「ワシの勝手な偏見」に過ぎないということが分かりました。

終わります。そして続きます。


それでは、次回の宿題です。

「じゃあなぜ、トヨタのクルマは売れているのか。」

みなさんも考えてみてください。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る