第265話 カツアゲ
『我らはお主を助けた・・・して、お主は何を差し出す?』
病み上がりのわんこをカツアゲするはやめてあげて下さい、バロンさん。
バロンさんが「もちろん、お前の落とすアイテム以上のモンはよこすんだよなぁ?ああん?」と言わんばかりの顔でわんこを見ている。
のんきな顔で尻尾を振っている場合じゃないよ、ワンちゃん!逃げて!
いや、逃げたら駄目だ。逃げたらバロンに追い回される。猫は逃げる獲物を追うのだ。
そうだ!その場でジャンプして何も持ってないアピールをするんだ。ちゃりんなんて音がしたら危ないからね。気を付けるんだぞ。
「・・・・キュワン?」
わんこは腹を見せて上目遣いでバロンを見た!
『・・・・・・』
しかし、効果はいま一つのようだ。完全猫派な猫至上主義者であるバロンには効いていない!
「クゥ~~ン」
わんこは背中を地面に擦り付けて、その場でゴロゴロと転がって見せた!
くっ可愛い!でかい図体して凶悪な可愛さだ!
『・・・・・・で?』
しかし、バロンには効かない!強い!猫強すぎる!わんこの激かわ攻撃を受けても一切動揺しないとは!
さぁ、黒犬選手どうする?判定員バロンさんはそろそろ我慢の限界なようだ。もう後がない。
そろそろ本気で落としにかからなければ猫パンチ一発(相手は死ぬ)くらい飛んできそうだぞ。
ここで黒犬選手に動きが・・・・!
ん?あっ、そう言えばわんこの識別してないや。
見た目から勝手に黒犬認定していたけれども実を言うと狼かもしれない。黒狼選手かも。
識別によると種族名は「アロウィヤー」。え、アロウって、arrow?矢?矢なの?生き物ですらないの?
えーと、気を取り直して黒矢選手はもふもふの胸毛とふにふにのお腹のアッピールを諦めて、立ち上がった。
実にキレのある良い動きだ。今もなお、振られ続ける尻尾が素晴らしい。捕まえたい、あの尻尾。
黒矢選手は尻尾を振りながらどこかへ向かうようだ。
ぴたりと頬をくっつけて前を向いた二つの顔と顔に比べたら狭い肩幅、その後姿はまさしく矢印。
進行方向はこちらですと言わんばかりの矢印っぷりだ。私たちがついてこないと見るとその場で立ち止まり、尻尾をふりふりと動かすところも矢印っぽい。
『・・・・・・・』
バロンはそんな矢印の尻尾を凝視している。
あの顔は尾の先くらいなら嚙み千切っても問題ないかなって顔だ。
「あの、たぶん、どこかに案内してくれようとしているんだと・・・・・」
『何処に?』
えーと、どこだろ?竜宮城かな?いや、矢印は亀ではないから竜宮城には連れてけないか。
場所は分からないけれど、おそらく黒矢は助けられたお礼としてどこかへ案内してくれようとしているのだろう。
黒矢の尻尾に飛びかかりそうなバロンへもう少しだけ様子を見るように説得を試みる。
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