第264話 わんこも可愛い
砂漠でオアシスを見つけたように鬼気迫る様子で水を飲むわんこを見ながら考える。
熱中症なら塩分も取らせた方が良いのかな?人間の場合は塩と水をとらせるけれど、汗をかかないわんこには必要ないだろうか。
うむ、やめておこう。塩分の取りすぎは危険だし。
それよりも、水を飲めそうにないもう一方の頭をどうしようか。
虐められていた黒いわんこには近づいてみると顔が二つあった。
伏せていたし、片方は力なく項垂れていたので、牛?たちの影になって見えなかったようだ。
しかし、双頭の犬か。三つある犬ならどこかの神話に出てくるのを知っているけれど、二つの犬もいただろうか。なんて考えを巡らせる余裕はあまりない。
何故なら水を飲ませられていないわんこの頭が元気ないからだ。
一応、話しかけるとほんの少しだけ耳が動いたり、目が開いたりするので意識はあると思うが動くだけの気力はないようだ。
水を飲んでいる方の顔とは身体で繋がっているため、片方に水を飲ませればもう片方も元気になるのではないかと期待したが、そう上手くはいかないようだった。
水魔法の新技をわんこに使えば身体の体温も下げられるかもしれないが、あれは味方にしか使えない。
水魔法で水をかけても相手の体温は奪えないが、やらないよりはましだろうか。
とりあえず心臓を避けてわんこの身体に水をかけ、手団扇で風を送ってみる。
水魔法のレベル上げをしていて良かった。以前の洋杯程度の水量ではわんこに水をかけるのも一苦労だった気がする。
目の前のわんこは思っていたよりも大分大きい。顔だけでも中型犬の胴体にも勝る大きさだが、その顔二つ分に見合う大きさの身体はもっと大きい。
大型犬の中でも特にビッグなセントバーナードやコモンドールよりも更にでかい。
彼らの二倍、三倍の大きさをほこる巨大な犬に洋杯一杯の水で挑むのは無理があっただろう。
特訓後の今はバケツ一杯分くらいはあるのでまだましである。
それでも一回の水かけでは足りずに何度も水魔法を使用することになったが。
しかし、頑張った甲斐あって、力なく項垂れていた方のわんこも少し元気を取り戻したようだ。
どんなに呼びかけても薄目しか開けなかった目が、ぱちりと開いた。
すかさず、少しだけ顔を浮かせたわんこの前に水魔法で出した水を差し出せば勢いよく飲み干した。
なんとか二匹(いや、身体はつながっているから一匹か?)とも熱中症から回復させられたようだ。
「クゥ~~ン・・・」
この際だからと医術もかけてやれば、地面に伏せていた身体を持ち上げたわんこが甘えた声ですり寄ってきた。
可愛い。猫派だけど、でも、やっぱり、わんこも可愛い。
猫とは異なる硬めの毛も、これはこれで乙なものだ。
愛情表現で己に絡みついてくる猫のしなやかな尻尾も素晴らしいが、全力で感情を表現して振り回される犬の尻尾も好きだ。
これで斜め下から感じられる圧力がなければ全力でわんこを撫でまわしただろう。
しかし、そんなことをしたら先程から無言でこちらを見つめているバロンが怖いので控えめにわんこの頭をなでて離れた。
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