第263話 入ってます


バロンは何事もなく、牛?たちを退治してくれました。


勢い余ってわんこも倒しそうになっていたけれども、なんとかわんこも無事です。生きてます。わんこの救出には成功しました。


けれども、わんこの命と引き換えに何か大切なものを無くした気がしてならないルイーゼです。団子よりも花を愛でる心を持った、花も綻ぶ乙女、ルイーゼです。



『・・・・・それで牛肉は手に入ったのか?』


「ウン。ハイッテタヨ。・・・・アリガトウ、バロン」



ポーチの中には何が起こったのか脳が理解を拒絶しているが牛肉が増えている。


しかも、念願の固まり肉である。アイテム名は「幽谷牛の固まり肉」。ステーキだよ。牛肉のステーキが手に入ってしまったよ。


あいにくとお肉の造詣に深いわけではないので部位については分からない。


しかし、このお肉が食べられるか食べられないかはだれが見ても分かる。


おそらくこのお肉は食べられないだろう。だって、とても毒々しい色をしているもの。これはお肉がして良い色ではない。


牛?の尾についていた毒蠍と同じ紫がかった黒色だけならまだしも、毒蛇のようなまだら模様までついてきたら、もうこれは毒入りで間違いないだろう。


識別しなくても分かる。毒入ってます!



「えーと、それで・・・ワンちゃんは大丈夫?」


まぁ、本来の目的は牛肉を手に入れることではなく、牛?に虐められていたわんこを助けることなので、たとえ手に入れたお肉が毒入りでも問題ないさ。


はじめから食べられるお肉が手に入らないことは分かっていたさ。


私は気を取り直してわんこに話しかけてみた。わんこは私の声に反応することなく、地面に伏せている。


わんこはバロンが周囲の牛?を倒して近づいてきた時にも無反応だった。


生きてはいると思う。はぁはぁと忙しない呼吸音が聞こえるし、肩も大きく上下に揺れている。


外気に投げ出された舌からはだらだらと涎が出ている。舌を出していない方の顔はぐったりと目を閉じていて見るからに元気がなさそうだ。



これは、もしや、熱中症だろうか。


現在周囲は霧に覆われているが、南の地の暑さは変わらず健在である。


むしろ、周囲の霧が暑さによって温められて蒸し風呂状態になっており、非常に不快感を与えてきている。これでは熱中症にもなるだろう。


特に犬猫は汗をかかないし、毛皮があるため熱中症になりやすいと聞いた記憶もある。



「・・・・飲む?」


とりあえず舌を出している方の顔の前にお椀型にした手を差しだし、水魔法で出した水を入れてみる。


魔法で出した水がはたして飲食可能か不安はあるけれども、ほかにわんこに飲ませられそうな飲み物を持っていなかったので仕方ない。


醸ジュースもミルクティーも犬に飲ませて良いものだろうか。ホットチョコは確実に駄目だろう。というか、熱中症に熱い飲み物はいけない。


その点、水魔法の水は適度に冷たいので丁度良いと思う。



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