第262話 花より団子な女


『・・・・・・・猫以外に用はない』


「まって!まってよ!た、助けてあげようよ!」



情けは人の為ならずっていうし、きっと竜宮城に連れて行ってくれるよ。


私はバロンの説得を試みたが、上手くいかない。


バロンは猫以外のものを助ける必要性がどこにあるのか分からないって顔をしている。


これでわんこを虐めている牛?たちがこちらに向かってきたのならバロンも反撃したかもしれないのに、牛たちはわんこに夢中なようだ。


こちらには目もくれない。もふもふ具合で言えば私達だって負けてないのに、わんこしか視界に入れる気がないようだ。


彼らは蛇の胴体を持ち上げて牛の足で二足歩行をし、牛の手(前足?)で槍と盾を持っている。


その槍で地面に伏せたわんこを突く様子はどこからどう見ても虐めだ。どうにかバロンを説得しなければ。



『・・・・・・・・』


「いや、あの・・・・あの牛を倒して・・・・犬を助ければ・・・・・・牛を・・・牛を・・・・・・・・・・牛肉・・・そうだ牛肉食べたい!お願い、バロン!牛肉のために牛を倒して!?」



いや、あの牛はどう見ても牛肉を落としそうにないし、毒を持っていそうだけれども。


だって、南に向かう途中で倒した蛇牛も牛肉くれなかったし。肉は肉でもステーキではなく、ひき肉だったし。謎肉混合の。


あの牛は蛇牛よりも蛇の割合が多い。あれが牛肉を落とすわけがない。


そんなことは分かっている。でもバロンを説得する言葉が他に思い浮かばなかったのだ。


私は駄目元でお願いしてみた。



『・・・・・・・・・はぁ』


するとバロンはため息を吐いて牛?たちに向かって行った。


え?それで納得するんだ?


いや、見事目的は達成されたけれども・・・・私って、牛要素がほとんどなく、もうほぼ足の生えた蛇状態の、尾が毒蠍になっている牛を見て牛肉食べたいとか本気で言い出しそうって思われてるの?


私はバロンに、あのどう見ても毒を持ってそうな牛?をみて食欲が刺激される女だと思われてるの?ねぇ、そうなの?



「ルイーゼ・・・・・・」


南の地の暑さを嫌って耐熱加工の施されたローブに付いた頭巾(フード)の中に籠りっきりだったアイギスが顔だけ出してなんとも言えない眼差しで私を見てくる。


あの、アイギスちゃん、まさか貴方も私のことを食欲魔人とか、花より団子な女だとか思ってないよね?


違うのよ、これはわんこを助けるための方便で・・・・・・。



私の方便は上手く作用し、バロンはわんこを虐める牛たちを倒してくれている。


わんこが助けられて嬉しい。嬉しいはずなのに何故だかすっきりしない。納得できない。


違うの!違うんだよ?私、食いしん坊キャラなんかじゃないんだよ!?



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