第233話 ほわぁい!?うんえーピーポー!!


「えーと、仲間のアイギスです。今は訳あって眠っています」


「そっか。頼れる仲間がいて良かったね」


「はい」



アイギスたちのことを頼れる仲間と呼んでもらい嬉しく思いながら返事をする。


そこでバロンに視線を向けたら、微妙な距離を開けた位置で前足を交差して伏せていた。


私の視線に気がついても尾の先を振るだけで此方に近づく意思は感じられない。


バロンは会話に参加する気も、セドネフさんに紹介される気もないようだ。



「それで、何か困っていることはないかい?」


数秒アイギスの毛皮を堪能して満足したセドネフさんは再度、私に困り事はないか聞く。


私は何かあったろうかと考えた。



「宿の場所を知りませんか?それから冒険者ギルドの場所も。南の大国に着いたばかりで何も知らないんです」


アフロになったまま治らないバロンの毛を見ながら告げる。


とりあえず宿を見つけて、あの毛を整えないと。櫛で梳いて何とかいつものさらさらストレートに戻ってほしい。


巻き毛のバロンも可愛いけれど、微妙に縮れているので手触りがいつもと違うのだ。


私はいつもの手触りが好き。それにバロンが見慣れた姿じゃないと落ち着かない。



「そうなのかい?なら、この国の歩き方を軽く説明しようか?」


「ありがとうございます!」


何にも知らないという私に少し驚いたような表情をしたセドネフさんが南の大国の概要を教えてくれるというので、笑顔でお礼を言い即座にお願いした。



まず、この国の名前は「コルポ・ディ・カローレ」と言うらしい。その意味は太陽の一撃だと言う。


格好いい!そうそう!こう言うのを待ってたんだよ!


間違っても胃痛とか腰痛とか花粉症とかふざけた名前の国名はもういらない。胃痛国の時点でお腹いっぱいだよ。


ファンタジーで格好いい国名を聞きたかったんだよ。探索者わたしたちはずっとそれを望んでたんだ。



「ちなみに、最近あちこちで見かけるようになった探索者の間では《熱中症国》だとか《熱射の国》とか呼ばれてるよ」


「・・・・・・・」



・・・・太陽の一撃って、そういう?


ほわぁい!?うんえーピーポー!!何故、国の名前を素直に国っぽく付けないのか。


何故、国の名前が何処も悩みを抱えているのか。熱中症国ってどういうことよ!?


暑いからか!?暑いから皆、熱中症になる国だとでも言うつもりか!?



「この国は娯楽と温泉の国とも呼ばれていてねぇ」


「娯楽と・・・・おん・・・・せん・・・・・・・・・・?」



私が国名の是非を運営に問うている間にセドネフさんの解説は先に進んでいる。


そのあまりにも信じがたい単語に思わず意識が引き戻された。私の視線は少し前に熱さに驚かされた噴水に固定されている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る