第232話 胃痛国は万国共通
「やっぱり・・あの国か・・・・・・君のような小さな子まで・・・・」
通じた!胃痛国は万国共通の呼び名となりつつあるのか。
通じてよかったような、通じてしまって悲しいような、複雑な気持ちである。
「ああ!でも・・・・無事にたどり着けて良かった・・・!こんなに小さいのによく頑張ったね・・・・!」
男性は何か勘違いをしている気がする。いや、それよりも・・・・
「——小さくないです!私、立派な大人なんです!これでも東西南いろいろな所を旅して来たんですよ!」
東は国には着いたけれども街の中には入っていないし、南も今着いたばかりだけれども、でも、それでも、私は立派に東西南の道を旅して来たのだ。
暴れる怪獣の余波にアイギスと私は耐え抜いて来たのだ。
「え?ああ・・・うん。そっか。それは凄いね!いろんな国を回って凄いねぇ」
「あ、いえ・・・それほどでもないです」
凄い凄いと大絶賛してくれるセドネフさん。
しかし、そこまで手放しで褒められると少し気が引ける。私は自分たちの旅の軌跡を力説し、私が大人であることを証明するのを止めた。
最初の勢いを無くしてまごつく私に気づくことなく、セドネフさんが言葉を続ける。
「そんなに旅してるなら、どこかで僕の幼馴染みに会わなかったかい?タチニアと言うんだ」
「タチニアさん?」
響きはターニャさんに似ているけれども、彼女は西の国の冒険者ギルドの受付嬢だ。
セドネフさんの幼馴染みということはないだろう。
ターニャさんは西の国を心の底から誇りに思い、愛している雰囲気があった。
西の腰痛国がターニャさんの祖国なのだろう。
セドネフさんがどこの国出身かは知らないけれど、西の国で生まれ、西の国で育ったと思われるターニャさんがセドネフさんに探されているとは思えない。
だから探し人はターニャさんとは別の人だろう。
「あぁ、いや、いいんだ・・・・生き別れたのは大分前だから」
私が記憶の海から心当たりを探している内に、セドネフさんは直ぐ様発言を撤回して別の話題に移る。
そんなセドネフさんは聞いては見たものの、見つかるとは思っていないように見えた。
「それより、何か困っていることはないかい?同郷の後輩を助けたいんだ」
「同郷・・・・」
「そう。僕も胃痛国出身なんだ。君と同じように国を追い出された先輩だよ・・・・・僕は君のように自力では辿り着けなかったけれど・・・」
なんとセドネフさんは胃痛国出身だったのだ。
ならば、やはりターニャさんは違うな。そして、やっぱり、誤解されている気がする。
何故だか分からないけれど、私は端から見て探索者に見えないらしい。胃痛国でもウォルターさんに誤解された。
たしかに私は胃痛国からきたが、胃痛国出身というと語弊があるように思う。探索者は果たして胃痛国生まれと言えるのか。
「あの——」
セドネフさんの誤解を解こうと口を開いたが、伸びてきた手に閉口する。
「自力で無事に大国まで辿り着けるなんて偉いねぇ」
セドネフさんはそう言いながら、私の頭を撫でようとしてアイギスの背中を撫でた。
そういえば先程アイギスの様子を確認した時に定位置へ移動させたんだった。
意識のあるときなら撫でられることを嫌がるアイギスだが、今は気絶中なので反応がない。
若干、先程までよりも魘される声が大きくなったような気がするが、起きる様子はない。
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