第226話 今日から私は蝉になる
意識をお空の彼方に飛ばしている私と意識がお空の彼方に旅立っているアイギスだが、戦闘中に危機感がなさすぎるように見えるだろう。
ゴ〇ラとギ〇ラの戦いが行われている横で呑気に見学している場合かと思うだろう。
余波で死なないように防御をしないのかと不思議がられても仕方ない状況だ。
しかし、今回に限っては問題ない。磯巾着は炎も吐くし、空を飛んで上空から攻撃もしてくる。
遠距離攻撃の手段も持っており、戦闘を見学中の私たちも普通に考えれば十分危険なのだが、今回は大丈夫なのだ。
隣を見上げる。そこには青々とした葉を茂らせた樹木が植わっていた。
磯巾着はこの木には攻撃しないようで、木の背後にいれば炎のブレスが飛んでくることも、翼で強風を起こして攻撃してくることもない。
磯巾着ってエコだったんだね。自然保護に対する意識が高いわぁ。私たちも見習わないといけない気がするよ。特にバロン。
先程バロンは磯巾着へ攻撃する際に、巻き込み事故を発生させている。
無残にも折れた木の枝に磯巾着が怒り心頭と言った様子で震えている。
花が咲く前に蕾のまま、地面に散った薄桃色の花弁がなんとも同情を誘う。
バロンさん、これは謝っといた方が良んでない?
バロンは剪定した蛇頭の生き残りを突いて遊んでいる。
震えているのが面白いって?そんなことしてる場合じゃないでしょ。磯巾着の震え方を見なよ。今にも爆発しそうだよ。
「ん?」
磯巾着の微振動が止まった。萎れていた頭も上を向き、縮んでいた翼も広げられる。
その場で羽ばたきを繰り返すことで強風を起こし、バロンを吹き飛ばす作戦だろうか。
未だに気絶するアイギスを抱きしめて、一部が寂しくなった木の幹へはりつく。磯巾着が木には攻撃しないとは言え、
少しでも木からはみ出ていたら針に糸を通すような緻密な制度で狙ってくるので油断はできない。
磯巾着から見て、私と木がぴったり重なるような位置取りをしないと。
現実逃避、じゃない、止まない耳鳴りに疲れたなぁ、お空青いなぁと木に寄りかかって休んでいたら、突然目の前をブレスが通り過ぎて行ったからね。
木は傷つけないけど、木を傷つけずに攻撃できる位置に敵がいたら迷わず炎を吐いてくるようだ。
まぁ、あの時攻撃してきた蛇頭はすぐさまバロンに沈められたけれども。
別の蛇が同じように攻撃してくる可能性がないとも言えないし、爆発しそうな磯巾着が本当に爆発しても危ないので、余波に巻き込まれないよう木にはりついておこう。
今日から私は蝉になる!
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