第217話 下は地獄、上は天国


『・・・このくらいで満足か?』



バロンが精肉作業から戻ってきた。ありがとう、バロン。


ステーキは手に入らなかったけど、お肉は入手できたからヨシ!


謎肉混合のミンチと不思議な卵だったけど、ヨシ!



「うん!ありがとう、バロン!後で肉巻き卵食べようね」



肉巻き卵の材料が不思議な卵と謎肉ミンチな気がするけど!まぁ、良いよね!


細かいことは気にしなーい!バロンも気にならないよね?ね?



『・・・・・まぁ、良い』



その後の私たちは順調に歩みを進め、一つの分かれ道にたどり着いた。


左右に分岐した道は、片方は上り坂で、もう片方は下り坂となっている。


二又に別れた道の先には霧が立ち込めているため、何があるのか分からない。


以前の私ならば、どちらに進めば良いのか判断できずに迷ったことだろう。


しかし、今日の私は抜かりない。おもちゃさんから南の大国までの道のりを聞きおよんでいるからね。



おもちゃさん曰く、下に下れば地獄、上に上れば天国へ行けるらしい。


うん、どっちも嫌だな。天国にも地獄にも行きたくない。


行きたくないけど、ここは天国へ進むのが正解らしい。


地獄の方を選ぶと、その先には高温多湿のサウナ地帯が待ち受けているらしい。


下方に見える霧らしきものは霧ではなく湯気なのだそうだ。もうもうと立ち込める湯気は火傷するくらい熱いと言うことなので下の道を進むのは不可能だろう。


と言うか進んだら死に戻りするまで、延々と火傷ダメージを負うらしい。まさに地獄。



反対の天国行きの道は雲を突き抜けるほど高くまで上っていくらしい。


上りの道中は雲により視界が制限され、目視でモンスターを見つけることは難しいと聞いた。


気がついたらモンスターに突進されてましたなんてことがざらにあるのだとか。


南の高台には馬とか牛とか突進力に自信のありそうなモンスターが多いのでこっちはこっちで大変危ない。


事実、モンスターの突撃により、天国まで吹き飛ばされた探索者が何人もいるらしい。こわい。



だか、しかし、私達にはバロンが付いている。


バロンさんの威圧ならば、近付いてくるモンスターを蹴散らすことも可能だろう。


それに、おもちゃさんから天国まで吹き飛ばされない対策も聞いてきている。


安全対策はバッチリだ。上の道をいざ、いかん!





と気合を入れたは良いものの、拍子抜けするほどモンスターが襲ってこない。


一面白に覆われた視界の中で、先導するバロンの黒色だけがぽつりと浮いている。


濃霧の中でも紛れない漆黒、さすがはバロンだ。


そして好戦的な馬達の嘘のような避けっぷりも、さすがはバロンだ。


視界不明瞭で奇襲するなら今だと思うけれども、全然、まったく寄ってこない。


二種類いる馬のモンスターは白馬と黒馬で、黒い方はバロンのように濃霧の中でも少しくらいは見えそうなのにその片鱗すら見えない。モンスターはいづ処?


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