第205話 ATフィールド
ちなみに、バロンとアイギスも空腹度は上昇していたけれど、そこまで騒ぐほどは減っていないから今はまだ食べなくても良いそうだ。
バロンなんて、少しお腹を空かしてくるとか何とか言って、一狩りしにモンスターの元へ駆けていったくらいだ。
アイギスの方は少し様子がおかしく、私のフードの中に隠れて、ヘル子さんが背負っていた鳥籠を警戒している。
この鳥籠、一見するとシンプルな布製の袋のように見えるが、近くで見ると外側に布の貼られた変わった鳥籠だった。
ヘル子さんのレザーパンツに編み上げブーツと言うカントリー風な衣装と相まって初見ではずた袋と勘違いしていた。
普通の鳥籠と違って布が貼られているため中の様子が見えないし、布の袋と異なり中に針金が入っているため収容物の有無も分からないけれど、アイギスの様子からして中に何かいるのかな。
「ごめんなさい・・卵美味しかったですぅ・・・・・」
「良いのよ。気にしないで!・・・どうしても気になるというのなら・・・・・・ちょっと、頭を撫でさせて?」
「はい?」
状況にそぐわない不思議な言葉を聞いた気がして、ヘル子さんの顔を見る。
頬が薔薇色に色づいて荒々しい呼吸が艶やかな唇から何度も吐き出されている。
「ちょっと、ちょっとだけでいいの・・指先だけ・・指先だけでいいからっ」
「・・・ヘル子お姉さん?」
「ナイス上目遣い!イイ!たまらないわぁ・・・・・!私・・・・私っ・・・可愛い女の子も・・蛇と同じくらい大好きなのっ・・・・・!」
可愛いって褒められるのも大好きって言われるのも嬉しいけれど、蛇と同列なのは喜んで良いのだろうか。
でも、ヘル子さんは蛇を捕まえるために西の砂浜に来ていて、
高度かつ知的な罠を仕掛けるほど蛇に思い入れのある様子だから、きっと、とっても好きってことなのだろう。
そんな風に言ってもらえるなら、肉巻き卵の恩義と罪悪感があることだし、頭を撫でられるくらいは良いか。
探索者同士の接触は特別な設定をしない限りATフィールド越しになるし。
探索者が探索者に触った時、その間には膜のようなものが存在し直接触ることはできないようになっている。
この膜は面倒くさい手続きをとらないと消えないため、ヘル子さんの発言はおそらくATフィールド越しに撫でたいという意味だろう。
うん、それくらいなら問題ない。
「え~と?・・・・どうぞ?」
ヘル子さんの方へ頭を差し出す。
「本当に!?良いの!?キャ———!嬉しいわぁ!なぜか可愛い子ちゃんには皆逃げられちゃうのよねぇ・・・」
勢い良く立ち上がったヘル子さんが顔の横に挙げた手を握ったり開いたりしながら近寄ってくる。
鼻息は荒く、目が血走っているので不安になるが、ATフィールドもあるし、同性だし、大丈夫だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます