第199話 クロウさんの青空教室


「西は夏から秋にかけて強風が吹き、砂に埋もれていた街道が姿を現します。


腕に自信のある者は秋に、そうでない人達は増勢期が終わった冬場に旅をすることが推奨されていますね」



あ、知ってる。覚えてる。秋に西のモンスターを倒すと金属を落とすことがあるんだよね。


だから西に行くのは秋がお勧めだって前にクロウさんから聞いた記憶がある。


なるほど、金属が手に入るからってだけでなく、砂に埋もれていた街道が姿を現して迷いにくくなるからって意味もあったのか。



「そうです。よく覚えていましたね」


「えへへ」


「その調子で暦のことも覚えていますか?十干をすべて空で言えますか?」


「はい!十干は簿記更新時期です!」



衝撃的な説明だったのでちゃんと覚えてます。


え兄さんと弟くんのこともちゃんと記憶されてますよ。


自信満々で答えた私へクロウさんが拍手をしてくれる。やったね!



「では、応用問題です。12日は陰陽どちらでしょうか?」



え、えーと。えとえとえとえとえとえとだから、と弟君で、と弟くんは陰キャで、だから・・・



「陰です!」



12個数えた指をVの字にしてクロウさんに見せながら答える。


クロウさんは少し苦笑しながら褒めてくれた。



「正解です。では次に12日は木火土金水のどれでしょう?」


「えっ」



確か、十干は木木火火土土金金水水の繰り返しだから、12は・・・。


先程と同じように両手を折り曲げながら数える。すべての指が折り曲げられて、折り返した二つ目のところで指は止まった。



「木です!」


「はい。正解です。では今度は50日の陰陽と五行を当ててみてください」



50日だと!?途中で指が混乱しそうだ。己の指が10本しかないのが悔やまれる。


バロンたちの手を借りればもっと増やせるだろうか。


しかし、彼らの指は人間の指のように折り曲げて数を数えることには向いていない。



「陰陽の種類は二つ、ちょうど奇数偶数と同じ数です。そして、五行は木木火火土土金金水水の繰り返しです。これは10進数と一致しています」



数の大きさに苦戦しながら必死に指を折ったり開いたりしている私にクロウさんから天啓のような助言が。


偶数奇数と十進法、言われてみれば確かにそうだ。


それなら、十干は指で数えなくても瞬時にわかる。奇数なら陽、偶数なら陰だ。


五行は一の位が1か2なら木で、3か4なら火、5・6は土、7・8は金、9・10(0)なら水になる。



「50日は・・・・陰の水です」


「正解です。そう、50日は水の弟です。さすが、ルイーゼさん。のみ込みが早いですね」


「えへへー」



十干十二支に基づいた暦、初めに聞いた時には難しくて覚えられないと思ったけれど思ったよりも簡単そうだ。


だって、もう十干は覚えらえたし。後はもう十二支を後ろにくっつけるだけだ。



「次回は十二支の暗記に入りましょう。それまで十干の復習を忘れないようにしてくださいね」


「はーい」



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